「新スタートレック (TNG)」のウンチク集!ピカード艦長の誕生秘話と製作の裏側を徹底解説
「新スタートレック」の概要
『新スタートレック』(原題: Star Trek: The Next Generation, TNG)は、伝説的なSFドラマ『宇宙大作戦』の続編として、1987年から1994年にかけて全7シーズンが放送された作品です。
初代エンタープライズ号の時代から約100年後を舞台に、ジャン=リュック・ピカード艦長が指揮する新しい宇宙船「エンタープライズD型(U.S.S. Enterprise NCC-1701-D)」の冒険を描いています。
TNGは、前作の「冒険活劇」の要素に加えて、「外交」や「哲学」、「ヒューマニズム」といった深いテーマ性を持ち込み、スタートレック・フランチャイズの人気を決定的なものにしました。
7シーズンにわたる製作の裏には、多くの興味深い「うんちく」が隠されています。
「新スタートレック」の詳細と製作秘話
『新スタートレック』、通称TNGは、スタートレックシリーズの「第2世代」を定義づけました。
その成功の裏にある、知られざる製作秘話やトリビアを紹介します。
ピカード艦長は「フランス人のハゲ」ではなかった?
TNGの象徴であるジャン=リュック・ピカード艦長ですが、演じるパトリック・スチュワートは、当初製作総指揮のジーン・ロッデンベリーの構想とはかけ離れていました。
ロッデンベリーは、名前の通り「マッチョなフランス人俳優」をイメージしていました。
シェイクスピア俳優であったスチュワートは、オーディションの際、カツラを着用して臨んだという「うんちく」があります。
彼は、まさか自分が選ばれるとは思っておらず、ロサンゼルスでのオーディション後、すぐにロンドンに帰る荷造りをしていたほどでした。
また、スチュワート自身も、このSFドラマがすぐに打ち切りになると予想しており、「半年分の家賃さえ稼げれば良い」と思っていたと後に語っています。
Qの登場は即興から生まれた
ピカード艦長の宿敵とも言える高次元生命体「Q」は、パイロット版(第1話)のみのゲストキャラクターの予定でした。
しかし、Qを演じたジョン・デ・ランシーとパトリック・スチュワートの間に生まれた化学反応は素晴らしく、脚本家たちは彼をシリーズの重要なキャラクターとして再登場させることを決定しました。
第1話の裁判シーンにおけるQの印象的なセリフの多くは、デ・ランシーの即興(アドリブ)であったことも有名な「うんちく」です。
ウーピー・ゴールドバーグの「直談判」
テン・フォワード(10階のラウンジ)のバーテンダー、ガイナンを演じたのは、アカデミー賞女優のウーピー・ゴールドバーグです。
彼女の出演は、異例の経緯で決まりました。
ゴールドバーグは『宇宙大作戦』の大ファンであり、特にウフーラ(黒人女性士官)の姿に感銘を受けて育ちました。
TNGが製作されると知った彼女は、「どんな役でもいいから、たとえ床掃除の役でもいいから出演させてほしい」と製作陣に自ら直談判しました。
これに感動したロッデンベリーは、彼女のために「ガイナン」というピカード艦長を導く賢者のような役柄を特別に作り上げたのです。
「ライカーの髭」というジンクス
シーズン1のTNGは、前作の『宇宙大作戦』と比較され、しばしば「生真面目すぎる」と批判されるなど、評価が安定しませんでした。
しかし、シーズン2に入り、ウィリアム・ライカー副長(ジョナサン・フレイクス)が髭を生やし始めた頃から、物語の質が劇的に向上しました。
このことから、海外のファンの間では「Growing the Beard(髭を伸ばす)」という言葉が、「シリーズが面白くなり始めた転換点」を示すスラング(俗語)として使われるようになりました。
ウォーフの「想定外」の大出世
クリンゴン人保安主任のウォーフ(マイケル・ドーン)は、当初はレギュラーキャストではありませんでした。
彼は「ブリッジにいる異星人」という背景的な役割でしたが、その独特のキャラクターとマイケル・ドーンの演技が人気を博し、すぐにメインキャストへと昇格しました。
さらにウォーフは、TNGの終了後、スピンオフ作品の『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン(DS9)』にもレギュラー出演しました。
彼は、スタートレック全シリーズを通して最も多くのエピソードに登場したキャラクターという記録を持っています。
データの猫「スポット」の秘密
アンドロイドのデータ少佐が飼っていた猫の「スポット」。
実はこの猫、シリーズ途中で品種が変わっていることにお気づきでしょうか。
初登場時はソマリ(長毛種)でしたが、後のシーズンではオレンジ色のタビー(短毛種)に変わっています。
これは撮影の都合(おそらく最初の子の扱いやアレルギー問題)と言われていますが、劇中では特に説明はありません。
ちなみに、データを演じたブレント・スパイナーは、金色のコンタクトレンズと顔のメイクアップに苦労したと語っています。
参考動画
まとめ
『新スタートレック』は、当初の不安や批判を乗り越え、7シーズンにわたる高い人気を獲得しました。
その成功は、魅力的なキャラクターたち(特にピカードとデータ)、挑戦的な脚本、そして「ボーグ」のような象徴的な敵の存在によって支えられました。
TNGは、「プライム・ディレクティブ(内政不干渉の原則)」の解釈や、「アンドロイドの権利」といった哲学的な問いを視聴者に投げかけ、SFドラマの可能性を広げました。
特に、シリーズ最終回「オール・グッド・シングス…(永遠への旅路)」は、テレビ史に残る完璧な最終回の一つとして今も高く評価されています。
TNGが築いた土台があったからこそ、その後のDS9やヴォイジャーといったシリーズ展開が可能になったのです。
関連トピック
スタートレック:ディープ・スペース・ナイン (DS9)
本作の放送中にスピンオフとして開始されたシリーズです。
宇宙ステーションを舞台にした、よりシリアスで連続性の高い物語が特徴で、TNGからウォーフが移籍しました。
スタートレック:ヴォイジャー (VOY)
TNGの終了直後に開始されたシリーズです。
TNGと同じ銀河連邦の宇宙船が舞台ですが、銀河の反対側(デルタ宇宙域)に飛ばされてしまい、地球への帰還を目指す物語です。
ボーグ (The Borg)
TNGで登場した、最強の敵対勢力の一つです。
個人の意識を失い、機械と融合した集合体であり、「我々はボーグだ。お前たちを同化する。抵抗は無意味だ」というセリフはあまりにも有名です。
Q (キャラクター)
TNGの第1話と最終話の両方に登場する、超常的な力を持つ生命体です。
ピカードと人類の可能性を試す「トリックスター」として、シリーズを通して重要な役割を果たしました。
関連資料
新スタートレック コンプリート・シーズン (Blu-ray / DVD)
デジタルリマスター化されたBlu-ray版は、映像の鮮明さが格段に向上しており、特撮シーンの再評価にもつながりました。
スタートレック:ピカード (Amazon Prime Video)
TNGの正式な続編として製作されたドラマシリーズです。
TNGのキャラクターたちの「その後」が描かれ、多くのファンを喜ばせました。
スタートレック TNG/ピカード艦長ハンドブック (書籍)
ピカード艦長の哲学やリーダーシップに焦点を当てた解説書や、製作の裏側を記した書籍が多数出版されています。

