クリント・イーストウッドも歌った?「ローハイド」の熱い“うんちく”10選!あのテーマソングの真実から衝撃の裏話まで徹底解説
「ローハイド」の概要
「ローハイド」(Rawhide)は、1950年代後半から60年代にかけて世界中で愛されたアメリカのテレビ西部劇です。
日本ではNET(現・テレビ朝日)系で放送され、カウボーイたちの過酷な長旅(キャトル・ドライブ)を描き、お茶の間の人気を博しました。
この作品は、後に映画界の巨匠となるクリント・イーストウッドの出世作としても知られています。
しかし、多くの人が口ずさむあの有名なテーマソングの歌詞や、番組が持つ深い意味、そしてキャストにまつわるドラマチックな裏話は、意外と知られていないかもしれません。
この記事では、「ローハイド」にまつわる fascinating(魅力的な)“うんちく”を深掘りし、なぜ今もなお語り継がれるのか、その魅力の核心に迫ります。
「ローハイド」うんちく詳細
「ローハイド」とはそもそも何?
「ローハイド(Rawhide)」という言葉自体は、直訳すると「生皮(なめしていない皮)」を意味します。
そこから転じて、カウボーイが牛を追う際に使う「生皮の鞭(むち)」を指すようになりました。
ドラマのオープニングでは、この鞭を打つ「ピシッ!」という乾いた音が効果的に使われ、荒野の厳しさとカウボーイの仕事を象徴していました。
このタイトルは、まさにカウボーイたちの日常と彼らが直面する困難そのものを表しているのです。
物語の核心「キャトル・ドライブ」とは?
「ローハイド」が描いたのは、単なる西部の銃撃戦ではありません。
物語の中心は「キャトル・ドライブ」、すなわち牛の大群(約3000頭)をテキサスからミズーリ州セダリアの鉄道駅まで、数千キロの道のりを歩かせて運ぶ長旅です。
隊長ギル・フェイバー(エリック・フレミング)率いるカウボーイたちは、荒野の厳しい自然、水不足、インディアンの襲撃、そして牛泥棒など、絶え間ない試練に直面します。
この過酷な労働を通して、登場人物たちの人間ドラマ、葛藤、そして成長が描かれました。
当時のアメリカ人にとって、これは開拓時代の苦難を象徴するリアルな物語だったのです。
クリント・イーストウッドの出世作
今やハリウッドのレジェンドであるクリント・イーストウッドが、若手俳優として一躍スターダムにのし上がったのがこの「ローハイド」です。
彼が演じたのは、血気盛んだが正義感の強い若きカウボーイ、ロディ・イェーツ。
当初は副隊長格(Ramrod)でしたが、番組が進むにつれて成長し、最終シーズンでは隊長(Trail Boss)に昇格しました。
イーストウッド自身は、このテレビドラマの撮影スケジュールに縛られることにフラストレーションを感じていたとも言われています。
しかし、この作品での経験が、後の彼のキャリア、特にマカロニ・ウエスタンでの寡黙なガンマン像へと繋がっていったことは間違いありません。
あの有名なテーマソングの真実
「ローハイド」といえば、あのエネルギッシュなテーマソングを抜きには語れません。
日本では「♪ローレン、ローレン、ローレン!」という空耳で広く知られていますが、実際の歌詞は「Rollin’, Rollin’, Rollin’(転がせ、転がせ、転がせ)」です。
これは、牛の群れを「転がすように」前進させ続けるカウボーイたちの掛け声(Keep them dogies rollin’)を表現しています。
この力強い曲を作曲したのはディミトリ・ティオムキン、歌っていたのは人気歌手のフランキー・レインです。
オープニング映像とともに、カウボーイの労働歌(ワークソング)として完璧な雰囲気を醸し出していました。
イーストウッドも歌っていた?
実は、クリント・イーストウッド自身も「ローハイド」関連で歌声を披露しています。
1963年に「Rawhide’s Clint Eastwood Sings Cowboy Favorites」というアルバムをリリースしているのです。
このアルバムには、「ローハイド」のテーマソングは収録されていませんが、カウボーイのスタンダード・ナンバーが多数収められています。
彼の渋い歌声は、俳優としてだけでなく、多才な一面を覗かせるものでした。
ドラマの撮影の合間に、共演者たちとギターを弾き語りすることもあったそうです。
日本での爆発的人気
「ローハイド」は日本でも1959年から放送され、西部劇ブームの火付け役の一つとなりました。
特にテーマソングは、前述の空耳「ローレン、ローレン、ローレン」とともに、子供から大人まで幅広く親しまれました。
コマーシャルソングなどにも使われ、メロディーを知らない人はいないほどの知名度を獲得しました。
ロディ(イーストウッド)の格好良さや、フェイバー隊長の頼もしさは、当時の日本の視聴者にとって憧れの的でした。
放送時間になると、家族全員がテレビの前に集まったと言われています。
映画『ブルース・ブラザーズ』での復活
「ローハイド」のテーマソングは、放送終了後も愛され続けました。
特に有名なのが、1980年の映画『ブルース・ブラザーズ』での伝説的なカバーシーンです。
ジョン・ベルーシとダン・エイクロイド演じるブルース・ブラザーズが、カントリー・ウエスタン専門のバーで演奏するシーン。
観客からブーイングを浴びる中、彼らが起死回生の一曲として「ローハイド」のテーマを演奏すると、観客が熱狂的に踊り出すのです。
このシーンによって、「ローハイド」の曲は新しい世代にも知られることとなり、不朽の名曲としての地位を確立しました。
突然の番組終了とロディの昇格
「ローハイド」は全8シーズン、217話という長寿番組となりました。
しかし、1965年の第8シーズン途中で、視聴率の低下を理由に突然の打ち切りが決定しました。
この最終シーズンでは、番組の顔であったギル・フェイバー隊長(エリック・フレミング)が降板し、ロディ・イェーツ(イーストウッド)が隊長に昇格するという大きな変更がありました。
イーストウッドはこの時、番組の方向性に不満を持っており、すでにイタリアでの映画撮影(マカロニ・ウエスタン)に興味を移していました。
打ち切りが決まった時、彼はむしろ喜んだとも伝えられています。
隊長ギル・フェイバーの悲劇
「ローハイド」のもう一人の主役、ギル・フェイバー隊長を演じたエリック・フレミングには、悲劇的な結末が待っていました。
彼は「ローハイド」降板の翌年、1966年に新たな映画の撮影のためペルーを訪れていました。
アマゾン川でのロケ中、乗っていたカヌーが転覆し、彼は激流にのまれてしまいました。
遺体は数日後に発見されましたが、ピラニアによってひどく損傷していたと言われています。
「ローハイド」で荒野のリーダーを演じきった名優の、あまりにも突然で痛ましい死でした。
「ローハイド」が残したもの
「ローハイド」は、単なる娯楽西部劇ではありませんでした。
それは、アメリカ開拓時代の象徴である「キャトル・ドライブ」という過酷な労働をリアルに描き、そこで生きる人々の人間ドラマに焦点を当てた作品でした。
後の多くの西部劇や、さらには宇宙を舞台にした『スター・トレック』(宇宙船を「荒野の幌馬車」に例えた)などにも影響を与えたと言われています。
そして何より、クリント・イーストウッドという稀代のスターを世界に送り出した作品として、テレビ史にその名を刻んでいます。
参考動画(ローハイド テーマソング)
まとめ:今も色褪せないカウボーイの魂
「ローハイド」は、単なる懐かしのテレビドラマとして片付けるにはあまりにも奥深い作品です。
荒々しい「生皮の鞭」の音から始まるあのオープニングは、これから始まる過酷な旅と、それに立ち向かうカウボーイたちの不屈の精神を象徴していました。
有名なテーマソングの歌詞が「ローレン」ではなく「Rollin’(進め)」であったことは、彼らの任務の本質を見事に捉えています。
クリント・イーストウッドの原点であると同時に、エリック・フレミングという名優の悲劇も内包しています。
このドラマが描いたのは、西部開拓時代のリアリズムと、困難な時代を生き抜く人々の泥臭いヒューマニズムでした。
「ローハイド」の“うんちく”を知ることは、アメリカのテレビ史だけでなく、映画史の重要な1ページを理解することにも繋がるのです。
もしあなたがクリント・イーストウッドのファンなら、あるいは古き良き時代のドラマに触れたいなら、今一度「ローハイド」の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
関連トピック
クリント・イーストウッド: 「ローハイド」でブレイク後、『荒野の用心棒』などのマカロニ・ウエスタンで国際的スターに。後に『ダーティハリー』シリーズで人気を不動のものとし、監督としても『許されざる者』や『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞を受賞した、生きる伝説です。
マカロニ・ウエスタン: 1960年代にイタリアで製作された西部劇の総称。低予算ながらも独自の暴力描写やスタイリッシュな映像で人気を博しました。「ローハイド」の撮影に飽きていたイーストウッドが、セルジオ・レオーネ監督と組んで主演した『荒野の用心棒』がその代表作です。
西部劇(ウエスタン): 19世紀後半のアメリカ西部開拓時代を舞台にしたジャンル。カウボーイ、ガンマン、保安官、インディアンなどが登場し、アメリカの神話とも言える物語を数多く生み出しました。「ローハイド」はテレビ西部劇の黄金期を代表する作品の一つです。
ブルース・ブラザーズ: 1980年に公開されたアメリカのコメディ音楽映画。ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが主演し、多くの著名なミュージシャンがカメオ出演しました。劇中で彼らが演奏する「ローハイド」のテーマは、映画史に残る名シーンの一つとされています。
関連資料
ローハイド DVD-BOX: 過去に日本で発売されたDVD-BOXセット。若き日のクリント・イーストウッドの姿や、ギル・フェイバー隊長とのやり取りを映像で確認できます。コンプリートBOXも存在し、ファンにとっては貴重なコレクションアイテムです。
Rawhide’s Clint Eastwood Sings Cowboy Favorites (CD/LP): クリント・イーストウッドが1963年にリリースしたカウボーイ・ソングのカバーアルバム。彼の意外な歌声と、当時の西部劇ブームの雰囲気を味わうことができます。
クリント・イーストウッド関連書籍: 彼のキャリアや人物像に迫った伝記本や研究本。その多くで「ローハイド」時代が彼の原点として触れられており、当時のエピソードや心境を知る手がかりとなります。(例:『クリント・イーストウッド(完全版)』リチャード・シッケル著)

