もし『ミスター・エド』が誰とでもしゃべる馬だったら? 秘密ゼロで番組は1話で終了の危機!

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もし『ミスター・エド』が誰とでもしゃべる馬だったら? 秘密ゼロで番組は1話で終了の危機!

『ミスター・エド』最大の「秘密」

1960年代に一世を風靡した人気コメディドラマ『ミスター・エド』。

この作品の最大の魅力は、主人公の馬「ミスター・エド」が流暢に英語を話すこと、そしてその事実を飼い主の建築家ウィルバー・ポストだけが知っている、という点にありました。

エドは、自分の意志でウィルバーにしか話しかけず、この「秘密」が原因でウィルバーは妻のキャロルや隣人から、馬とブツブツ話す「変な人」だと思われるドタバタ劇が繰り広げられました。

しかし、もしもエドが、ウィルバーだけでなく、キャロルや隣人、郵便配達員など、誰とでもおしゃべりする馬だったら。

おそらく、このドラマの根幹である「秘密のコメディ」は成立せず、物語はまったく別の方向に進んでいたでしょう。

詳細:もしも「秘密」がなかったら?

『ミスター・エド』のコメディ構造:「秘密」がすべて

まず、オリジナルの『ミスター・エド』がいかに「秘密」の上に成り立っていたかを確認する必要があります。

ウィルバーは、妻のキャロルに「馬がしゃべるなんて、あなた疲れているのよ」と信じてもらえない状況で、エドのわがまま(「納屋にテレビを置け」「ピーナッツバターが食べたい」など)に応えなければなりません。

エドはわざとウィルバーが困るようなタイミングで黙ったり、逆にキャロルがいる前でウィルバーにだけ話しかけたりします。

この「ウィルバーだけが知る秘密」と「ウィルバーの苦悩」こそが、番組の面白さの源泉でした。

もしもエドが「おしゃべり」だったら?

この大前提が崩れ、「エドが誰とでも話す」設定になった場合、物語は以下のように激変します。

1. 1話で秘密がバレて、家庭内コメディが終了

ウィルバーとキャロルが新居(あの馬小屋付きの家)に引っ越してきた日。

エドはウィルバーに話しかけるだけでなく、キャロルにも「やあ、キャロル。ここの干し草は最悪だね」と話しかけてしまいます。

キャロルは驚くかもしれませんが、夫も同じように驚いているのを見て、「この馬、本当にしゃべるのね!」と納得します。

これにより、「夫の奇行を疑う妻」というコメディの基本設定が、第1話のAパートで消失してしまいます。

2. 世界的な大ニュースとパニック

ウィルバーとキャロルが「しゃべる馬」の存在を隠し通すことは不可能です。

エドは自分の意志でしゃべるので、隣人が訪ねてきたら「よお、アディソンさん」と挨拶してしまうでしょう。

その瞬間、「ポスト家の馬はしゃべる」というニュースがスモールタウンを駆け巡り、数日のうちにマスコミや科学者、政府機関(おそらくCIAやFBI)がポスト家に殺到します。

『ミスター・エド』は、のどかなホームコメディから、SFパニックドラマ、あるいは『E.T.』のような「しゃべる馬を政府から守る」物語にジャンル変更を余儀なくされます。

3. エドは世界一のセレブリティ(馬)に

もしエドが政府の解剖や研究を免れたとしても、彼の生活は一変します。

彼は「世界で唯一しゃべる馬」として、トークショーのホストを務めたり、国連で演説したり、大手企業のCMに出演したりする、世界的なスーパースター(スーパーホース?)になるでしょう。

ウィルバーは建築家を辞め、エドの「マネージャー」兼「通訳」(馬語は不要ですが)として、エドのわがままに振り回される日々を送ることになります。

物語は、ハリウッドの裏側を描くようなセレブリティ・コメディになっていたかもしれません。

参考動画(オリジナルのオープニング)

まとめ:秘密こそがコメディの源泉

「もしもミスター・エドが誰とでもしゃべったら」という仮定は、このドラマの核心を突いています。

それは、「秘密」がコメディにおいていかに強力なエンジンであるかを示しています。

エドがウィルバーにしか話しかけないという「不便な設定」こそが、ウィルバーの苦悩を生み、視聴者の笑いを誘いました。

もしエドが誰とでも話す「便利な馬」だったら、ポスト夫妻の平和な日常は一瞬で終わり、ウィルバーとエドの「二人だけの特別な絆」も失われていたでしょう。

『ミスター・エド』が名作シットコム(シチュエーション・コメディ)であるゆえんは、まさにその「秘密」にあったのです。

関連トピック

ウィルバー・ポスト: エドの飼い主であり、唯一の話し相手(に選ばれた人)。エドが誰とでも話せたら、彼の役割は「馬のマネージャー」になっていたでしょう。

キャロル・ポスト: ウィルバーの妻。夫が馬と話していると本気で心配する被害者。エドが話せば、彼女の悩みは一瞬で解決します。

『奥さまは魔女』: 『ミスター・エド』と同時期に人気を博した、「妻が魔女である」という秘密を夫が隠そうと奮闘するシットコム。秘密がコメディを生むという共通点があります。

『アルフ』: しゃべる地球外生命体(アルフ)を、世間(特に隣人)から隠すために家族が奮闘するコメディ。もしエドが誰とでも話したら、ポスト家は『アルフ』のタナー家のような苦労を強いられたかもしれません。

関連資料

『ミスター・エド』コンプリート DVD-BOX: オリジナルの設定がいかに秀逸であったか、ウィルバーがいかに滑稽な状況に追い込まれていたかを確認するための必携資料です。

『奥さまは魔女』関連書籍: 「秘密」を題材にしたシットコムの構造を比較研究するために役立つ資料です。

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