YouTubeで映画「サイコ」(1960)を徹底解説!あらすじ・キャスト・映画史への影響まとめ
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概要
映画『サイコ』(1960年)は、アルフレッド・ヒッチコック監督による、映画史に残るサイコサスペンスの金字塔です。
物語は、会社の金4万ドルを横領した女性マリオン・クレインが、恋人の元へ向かう逃避行の途中で始まるのです。
彼女は大雨に見舞われ、国道から外れた寂れた「ベイツ・モーテル」に立ち寄ることを決めます。
そこで彼女は、物静かでありながらもどこか不気味な雰囲気を持つ管理人、ノーマン・ベイツと出会います。
ノーマンは、モーテルの隣にある古い屋敷で、病気がちの母親と二人で暮らしていると語ります。
マリオンはノーマンとの会話の後、自室のシャワーを浴びますが、そこで映画史上で最も有名とされる衝撃的な事件に巻き込まれます。
物語の焦点は、ここからマリオンの失踪へと移り変わります。
彼女の行方を追う姉のライラ、恋人のサム、そして雇われていた私立探偵のアーボガストが、ベイツ・モーテルとノーマン・ベイツの秘密に迫っていくのです。
観客の予想を根底から覆すストーリーテリングと、巧みなサスペンス描写、そして衝撃的な結末は、後世のスリラー映画、ホラー映画に計り知れない影響を与えました。
オープニング(公式予告編)
詳細:作品の背景
本作は、「サスペンスの神様」と称されるアルフレッド・ヒッチコック監督のキャリアにおいて、最も有名かつ興行的に成功した作品の一つです。
アメリカでの公開は1960年6月、日本では同年9月17日に公開されました。
原作は、アメリカの作家ロバート・ブロックが、実在の連続殺人鬼エド・ゲインの事件にインスパイアされて執筆した同名の小説『サイコ』です。
ヒッチコック監督は、この原作の衝撃的な結末が公開前に漏れることを極度に恐れました。
そのため、彼は原作の権利を匿名で買い占め、映画の制作発表も最小限に留めたと言われています。
さらに、映画公開時には「途中入場一切禁止」という異例の宣伝戦略を取りました。
これは、物語の核心である「主人公の途中退場」と「結末の驚き」を、すべての観客に新鮮な状態で体験してもらうための徹底した措置でした。
音楽は、ヒッチコCK監督作品の多くを手掛けたバーナード・ハーマンが担当しました。
特に、有名なシャワーシーンで使用される、弦楽器だけを使った鋭く切り裂くような不協和音は、映像の恐怖を何倍にも増幅させ、音楽が恐怖を演出する上でいかに重要であるかを証明しました。
撮影は意図的にモノクローム(白黒)で行われました。
これは、シャワーシーンの血(実際にはチョコレートシロップが使われた)が、カラーではあまりにも生々しくなりすぎることを避けるためと、低予算で制作する(テレビドラマ撮影のクルーを起用した)という側面がありました。
しかし、このモノクロが結果的に作品全体の不気味な雰囲気と芸術性を高めることに成功しています。
キャスト:主な登場人物と俳優
- ノーマン・ベイツ:アンソニー・パーキンス
- マリオン・クレイン:ジャネット・リー
- ライラ・クレイン:ヴェラ・マイルズ
- サム・ルーミス:ジョン・ギャヴィン
- ミルトン・アーボガスト:マーティン・バルサム
キャストの代表作品名
- アンソニー・パーキンス:
- 『サイコ2』(1983年)
- 『サイコ3/怨霊の囁き』(1986年)
- 『オリエント急行殺人事件』(1974年)
- ジャネット・リー:
- 『ザ・フォッグ』(1980年)
- 『動く標的』(1966年)
- 『バイ・バイ・バーディー』(1963年)
- ヴェラ・マイルズ:
- 『サイコ2』(1983年)
- 『リバティ・バランスを射った男』(1962年)
- 『捜索者』(1956年)
- マーティン・バルサム:
- 『ティファニーで朝食を』(1961年)
- 『大統領の陰謀』(1976年)
- 『オリエント急行殺人事件』(1974年)
まとめ:社会的評価と映画史への影響
映画『サイコ』は、単なるホラー映画やサスペンス映画の枠を超え、映画史における一つの「事件」でした。
最も革新的だったのは、それまでの映画文法を無視した点にあります。
当時トップ女優であったジャネット・リー演じる主人公が、物語の開始からわずか中盤で殺害されるという展開は、観客に計り知れない衝撃を与えました。
観客は誰に感情移入して観れば良いのか分からなくなるという、前例のない体験を強いられたのです。
そして、映画史に永遠に刻まれることとなった「シャワーシーン」。
わずか45秒ほどのシークエンスですが、70以上ものカットを繋ぎ合わせるという斬新なモンタージュ技法(編集技術)が用いられました。
このシーンは、直接的な刺傷シーンを映さずに、カット割りと音楽、編集のリズムだけで観客に最大限の恐怖を植え付けました。
この技法は、後の映画監督たちに多大な影響を与え、数え切れないほどの模倣やパロディを生み出しました。
また、アンソニー・パーキンスが演じたノーマン・ベイツというキャラクター像も画期的でした。
一見すると物静かで内気な好青年に見える彼が、実は恐ろしい二重人格の持ち主であったという設定は、「怪物ではない、隣人のような人間が最も恐ろしい」というサイコスリラーのジャンルを確立させました。
『サイコ』は、映画が観客の心理をいかに巧みに操れるかを示した最高傑作であり、公開から半世紀以上が経過した現在でも、色褪せることのない恐怖と芸術性で世界中の映画ファンを魅了し続けています。
作品関連商品
『サイコ』は、その絶大な人気と影響力から、数多くの関連商品が展開されています。
まず基本となるのが、映画本編を収録したDVDやBlu-rayディスクです。
近年では、4K Ultra HD版もリリースされており、ヒッチコック監督が意図したモノクロームの陰影を、より高精細な映像で楽しむことができます。
また、作品の原点であるロバート・ブロック著の原作小説『サイコ』も、複数の出版社から翻訳版が刊行されており、映画と小説の細かな違いを比較するのも一興です。
さらに、映画の制作背景や「シャワーシーン」の撮影秘話などを詳細に解説したメイキング本や研究書も数多く出版されています。
映像作品としては、本作の直接的な続編である『サイコ2』『サイコ3』、さらにはノーマン・ベイツの少年時代と彼と母親の歪んだ関係を描いた前日譚(プリクエル)にあたる人気海外ドラマシリーズ『ベイツ・モーテル』(全5シーズン)も、DVD-BOXやBlu-ray BOXとしてリリースされています。

