YouTubeで「ヴィデオドローム」
ヴィデオドローム とは?(概要)
『ヴィデオドローム』(原題: Videodrome)は、1983年に公開されたカナダのSFホラー映画です。
監督・脚本は、デヴィッド・クローネンバーグが務め、彼の初期のキャリアを代表する、最も哲学的で先駆的な作品の一つとして知られています。
物語は、トロントで小さなケーブルテレビ局を経営するマックス・レンを中心に展開します。
彼は、視聴率を稼ぐために過激なコンテンツを常に探し求めていました。
ある日、マックスは、発信源不明の極秘放送「ヴィデオドローム」を発見します。
それは、拷問や殺戮が延々と続く、ストーリー性のない凄惨な映像でした。
その映像に魅了されたマックスは、その発信源を突き止めようとしますが、ヴィデオドロームを観続けるうちに、現実と幻覚の境界が曖昧になり、やがて彼の肉体そのものが異様な変化を遂げ始めます。
本作は、「テレビは現実よりもリアルである」というクローネンバーグの思想を体現しており、メディア、テクノロジー、そして人間の肉体と意識の融合を描いた、サイバーパンクとボディホラーの融合した傑作として、今日までカルト的な人気を誇っています。
YouTubeで観る「ヴィデオドローム」予告編動画
本作のオープニングタイトルや象徴的なシーンは、YouTubeで視聴可能です。
不安と幻覚に満ちた作品の世界観を凝縮した予告編は、その不穏なムードを伝えるのに最適です。
(※過激なホラー要素やサイケデリックな描写が含まれますので、視聴にはご注意ください。)
「ヴィデオドローム」の詳細
主人公マックス・レンは、アダルト番組を中心に放送するテレビ局を経営しています。
彼は「もっと刺激的なもの」を求めて、違法な海賊放送を受信し、そこで謎の映像「ヴィデオドローム」を見つけます。
彼の恋人であり、サディスティックな嗜好を持つラジオのパーソナリティ、ニッキー・ブランドもまた、その過激な映像に強い関心を抱き、自らヴィデオドロームの世界へ飛び込んでいきます。
マックスが発信源を調査するうちに、彼はブライアン・オブライエン教授というメディア理論家と出会います。
教授は、ヴィデオドロームが単なるショック映像ではなく、視聴者に物理的な腫瘍(ガン)を引き起こし、脳をハッキングして意識を操作する、恐るべき兵器であるとマックスに警告します。
やがてマックスは、自分が陰謀の中心にいることに気づき始めます。
ヴィデオドロームの映像が現実を侵食し、彼の腹部にはVHSテープを挿入するための異様なスリット(割れ目)が開き、手からは「生きた銃」が生えてくるなど、肉体がテクノロジーと融合していく凄惨な現象に襲われます。
この肉体の変容は、クローネンバーグが提唱する「ニュー・フレッシュ(新しい肉体)」というテーマを具現化したものであり、「テレビ(メディア)という外部の情報が、身体(内部)を再プログラミングする」という、恐るべき概念を表現しています。
本作の特殊効果は、後の『ザ・フライ』でアカデミー賞を受賞するクリス・ウェイラスなど、当時のトップクリエイターたちが集結して担当しました。
その独創的で有機的な特殊メイクは、CGのない時代に生み出されたとは思えないほど衝撃的です。
本作は公開から長い年月が経ちましたが、インターネットやSNSなどの情報過多社会における「フェイクニュース」「中毒性のある映像」「自己の変容」といった現代的なテーマを既に予見していたとして、その先見性が再評価され続けています。
「ヴィデオドローム」のキャストと代表作
- マックス・レン: ジェームズ・ウッズ (James Woods)
- 好奇心と欲望に駆られてヴィデオドロームの世界に深く入り込み、徐々に狂気に蝕まれていくテレビ局社長を、鬼気迫る演技で演じきりました。
- 代表作: 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、『プラトーン』、『コンタクト』
- ニッキー・ブランド: デボラ・ハリー (Debbie Harry)
- マックスの恋人であり、ヴィデオドロームの危険な魅力に惹かれるラジオのパーソナリティ。
本業はロックバンド「ブロンディ」のボーカリストです。 - 代表作: ロックバンド「ブロンディ」の活動が最も有名です。
映画では『ヘアスプレー』(1988年版)、『ヘビー』などにも出演しています。
- マックスの恋人であり、ヴィデオドロームの危険な魅力に惹かれるラジオのパーソナリティ。
- バリー・コンヴェックス: レスリー・カールソン (Leslie Carlson)
- ヴィデオドロームの黒幕の一人として、マックスを導くかのように振る舞う謎めいた人物。
- 代表作: 『ザ・フライ2』(アントン・セスナ役)、『デッドゾーン』
- ブライアン・オブライエン教授: シェイラ・アレン (Sheldon Allen)
- メディアと人間の関係について語る、テレビの理論家。
マックスにヴィデオドロームの危険性を警告する重要な役割を担います。 - 代表作: 主にカナダのテレビシリーズや映画で活動しています。
- メディアと人間の関係について語る、テレビの理論家。
「ヴィデオドローム」の評価と影響
『ヴィデオドローム』は、公開当時、その難解さとショッキングな描写のため、賛否両論を巻き起こし、商業的な成功は収められませんでした。
しかし、批評家や一部の熱狂的なファンからは、デヴィッド・クローネンバーグの最も重要な作品の一つとして熱狂的に支持されました。
特に高く評価されたのは、その主題の先見性です。
インターネットが一般化する前の時代に、一方的な情報が人間の精神や肉体を侵食・支配する様子を描いた本作は、現代のSNS中毒、フェイクニュース、映像による洗脳といった現象を驚くほど正確に予言していたとされています。
映画評論家のロジャー・イーバートは、本作を「深く不安にさせられる、独創的な悪夢」と評し、その芸術性を認めました。
また、クエンティン・タランティーノ監督をはじめ、多くのフィルムメーカーが本作から影響を受けたと公言しており、カルト映画としての地位は揺るぎないものとなっています。
本作のキャッチコピー「あなたの心は何処に。」は、メディアに対する現代人の意識を象徴するフレーズとして、今もなお引用されています。
「ヴィデオドローム」関連商品
このSFホラーの金字塔は、その歴史的価値から、現在も高品質なパッケージでリリースされています。
- Blu-ray: 『ヴィデオドローム』クライテリオン・コレクション
- 北米のクライテリオン・コレクション版など、高画質で多くの特典映像を収録したコレクターズ・エディションが流通しています。
クローネンバーグ監督による解説なども収録されており、作品の理解を深めるのに最適です。
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- DVD: 『ヴィデオドローム』
- 通常版のDVDも販売されており、手軽に作品を楽しむことができます。
- サウンドトラック: 『Videodrome (Original Motion Picture Soundtrack)』
- 音楽は、『スキャナーズ』や『ザ・フライ』など、クローネンバーグ監督の多くの作品を手掛けているハワード・ショアが担当しています。
彼の不穏で電子的なスコアは、映画のサイコな世界観を見事に表現しています。
- 音楽は、『スキャナーズ』や『ザ・フライ』など、クローネンバーグ監督の多くの作品を手掛けているハワード・ショアが担当しています。
- デジタル配信: 主要な動画配信プラットフォームで、レンタルまたは購入が可能な場合があります。

