【テンセント版 三体】葉文潔(イエ・ウェンジエ)の絶望と決断!人類を裏切った悲劇の女性科学者を徹底解説
テンセント版「三体」における葉文潔の概要
世界中で社会現象を巻き起こした劉慈欣によるSF小説を、中国テンセント(Tencent)が全30話という壮大なスケールで映像化したドラマ『三体(Three-Body)』。
この物語のすべての始まりであり、「元凶」とも言える最重要キャラクターが、葉文潔(イエ・ウェンジエ)です。
彼女は文化大革命の時代に絶望を味わった天体物理学者であり、異星文明「三体(トライソラリス)」からのメッセージを受信し、人類の運命を変えるボタンを押した張本人です。
テンセント版では、青年期を王子文(ワン・ズーウェン)、老年期を陳瑾(チェン・ジン)という二人の名優が演じ分け、Netflix版よりも原作に忠実かつ緻密に、彼女の心の闇と静かなる狂気が描かれています。
詳細:時代に翻弄され、星に救済を求めた生涯
葉文潔というキャラクターは、単なる悪役ではありません。彼女がなぜ「人類には自らを救う力がない」と断定するに至ったのか、そのプロセスこそが『三体』の主題の一つです。
1. 文化大革命の悲劇と人間への絶望(青年期)
物語は、若き葉文潔(演:王子文)が目の当たりにした地獄から始まります。
清華大学の著名な物理学者であった父・葉哲泰が、紅衛兵によって「反動的学術権威」として糾弾され、公衆の面前で撲殺される光景は、彼女の心に消えない傷を残しました。
さらに、下放された先で出会ったジャーナリスト・白沐霖(バイ・ムーリン)に裏切られ、とどめを刺されるように人間不信へと陥ります。
王子文(ワン・ズーウェン)の演技は、凍てつくような寒さと孤独の中で、彼女の瞳から徐々に「光」が消え、冷徹な決意が宿っていく様を見事に表現しており、視聴者に強烈な印象を与えます。
2. 紅岸基地(レッドコースト)での孤独な観測
政治犯としてのレッテルを貼られた彼女が生き延びる唯一の場所が、極秘の電波観測施設「紅岸基地」でした。
彼女はそこで、太陽を電波増幅器として利用する理論(太陽エネルギーミラー効果)を発見し、宇宙に向けてメッセージを送信します。
数年後、三体文明から「応答するな(不要回答)。応答すれば場所を特定され、君たちの世界は占領される」という警告が届きます。
しかし、人類に絶望していた彼女は、その警告を無視し、「来なさい。私はあなたたちがこの世界を手に入れるのを手伝います」と返信しました。この瞬間、彼女は人類の裏切り者となり、地球の運命は決定づけられたのです。
3. 地球三体協会(ETO)の精神的指導者(老年期)
現代パートにおける老年期の葉文潔(演:陳瑾)は、一見すると温厚で知的な引退教授として登場します。
主人公・王淼(ワン・ミャオ)に対しても優しく接し、娘の死を悲しむ母親の顔を見せます。
しかし、その正体は、三体文明を神と崇め、人類抹殺や支配を目論むテロ組織「地球三体協会(ETO)」の最高司令官(統帥)です。
陳瑾(チェン・ジン)の演技は圧巻で、表情一つ変えずに恐ろしい指令を下すその姿は、静寂の中に潜む底知れぬ狂気を感じさせます。Netflix版と比較しても、テンセント版の彼女はより哲学的で、威厳に満ちた「カリスマ」として描かれています。
4. 彼女が求めた救済とは
葉文潔は、単に人類を滅ぼしたかったわけではありません。彼女は、高度な科学技術を持つ文明ならば、道徳水準も高いはずだと信じていました。
腐敗しきった人類社会を、外部の力(三体文明)によって強制的に「矯正」してもらうことこそが、彼女なりの救済だったのです。
しかし、その期待が幻想であったことを悟った時、彼女は再び深い孤独の中に身を置くことになります。最終話、かつての紅岸基地跡地で見せる彼女の姿は、罪と罰、そして哀愁に満ちています。
「テンセント版 三体」参考動画
まとめ
テンセント版『三体』における葉文潔は、SF史上最も複雑で、最も悲しいヴィランの一人です。
全30話という長尺を使うことで、彼女が味わった理不尽な暴力と、そこから生まれた「世界を変えたい」という歪んだ願いが丁寧に描写されています。
彼女がボタンを押したことは許されない罪ですが、ドラマを見終えた後、彼女を単に責めることができる視聴者は少ないでしょう。
「物理学は存在しない」という絶望から始まった物語が、彼女の人生を通してどう収束していくのか。ぜひその目で、彼女の静かなる革命の結末を目撃してください。
関連トピック
紅岸基地(レッドコースト)(葉文潔が青春を過ごし、三体文明との交信を行った運命の場所)
王淼(ワン・ミャオ)(ナノマテリアル研究者。葉文潔に導かれるように三体文明の謎に迫る主人公)
伊文斯(マイク・エヴァンズ)(葉文潔と出会い、ETOを創設した過激な環境保護活動家)
楊冬(ヤン・ドン)(葉文潔の娘であり優秀な物理学者。母の秘密を知り、絶望して自ら命を絶つ)
関連資料
Blu-ray『三体』(テンセント版ドラマの日本語字幕付き完全版)
小説『三体』(早川書房)(劉慈欣による原作。ドラマでは描ききれない心理描写や科学的背景が網羅されている)

