【BBCドラマ】イン・ザ・ダークのヘレン・ウィークス!身重の体で事件に挑む強き女刑事を徹底解説
BBCドラマ「イン・ザ・ダーク」におけるヘレン・ウィークスの概要
2017年に英BBC Oneで放送された、全4話の濃密なクライム・サスペンス『イン・ザ・ダーク(In the Dark)』。
この物語の主人公であり、大きなお腹を抱えながら凶悪犯罪と自身の過去に立ち向かうタフな女性刑事が、ヘレン・ウィークス警部補(演:マイアンナ・バーリング)です。
彼女は妊娠中という、肉体的にも精神的にも不安定な状況にありながら、決して安全な場所に留まろうとはしません。
故郷で起きた少女誘拐事件と、マンチェスターの裏社会で蠢くギャング抗争。二つの異なる事件を通して、刑事としての執念と、母になることへの葛藤、そしてパートナーへの疑惑に揺れ動く、極めて人間臭いヒロイン像を解説します。
詳細:臨月の刑事が直面する過去の闇と現在の疑惑
ヘレン・ウィークスは、典型的な「無敵のヒロイン」ではありません。彼女の魅力は、妊娠という身体的制約と、過去のトラウマ、そして現在の疑惑に挟まれながらも、泥臭く真実を追い求める姿にあります。
1. 妊娠中の刑事というリアリティ
本作の最大の特徴は、主人公が臨月の妊婦であるという点です。
ヘレンは大きくなったお腹を抱え、息を切らし、腰の痛みに顔を歪めながら捜査現場を歩き回ります。
ホルモンバランスの変化による感情の起伏や、トイレの近さ、そして胎動を感じながら死体と向き合うというシュールで過酷な状況が、ドラマに独特の緊張感を与えています。
「妊婦は守られるべき存在」という周囲の目に対し、彼女は苛立ちを見せつつも、自らの刑事としての本能を抑えることができません。この「母性」と「職務」のせめぎ合いが、彼女のキャラクターに深みを与えています。
2. 故郷ポールズフォードでの過去との対峙(第1部)
物語の前半、ヘレンは故郷で起きた少女誘拐事件の容疑者が、かつての親友の夫であることを知り、故郷へ戻ります。
そこで彼女を待ち受けていたのは、閉鎖的な田舎町の空気と、彼女自身が封印していた過去の秘密でした。
彼女は親友を信じ、警察組織や偏見に満ちた住民と対立します。過去の性的虐待の記憶や、青春時代の苦い思い出がフラッシュバックする中で、彼女は傷つきながらも事件の醜い真実を暴いていきます。
3. パートナーへの疑惑と都会の闇(第2部)
物語の後半、舞台は都会へと移ります。ヘレンは、自身のパートナーであり同僚の刑事ポール・ホップウッドとの間に子供を授かっていますが、彼の行動に不審な点を見つけます。
ポールは本当に信頼できる男なのか、それとも裏社会と繋がっているのか。
出産が迫る中、最も身近な人物への疑念が膨らんでいくサイコ・サスペンス的な展開は圧巻です。愛する男を疑いながら、同時に彼の子を産もうとする彼女の極限状態の心理描写は、見る者の心をざわつかせます。
4. マイアンナ・バーリングの熱演
ヘレンを演じたのは、ドラマ『ウィッチャー』のティサイア役や、『リッパー・ストリート』などで知られる実力派女優マイアンナ・バーリングです。
彼女は、メイクっ気のない疲れ切った顔、鋭い眼光、そして妊婦特有の歩き方や仕草をリアルに演じきりました。
決して「愛想の良いヒロイン」ではありませんが、その不器用で頑固な生き様は、英国ミステリー特有の重厚な世界観と完璧にマッチしています。
「イン・ザ・ダーク」参考動画
まとめ
ヘレン・ウィークスは、聖母のような妊婦像を打ち砕く、タフで複雑なキャラクターです。
彼女は間違いも犯し、人を傷つけ、自分も傷つきますが、決して「真実」から目を背けることはありません。
新しい命がお腹に宿る中で、死と犯罪に向き合い続ける彼女の姿は、「生きること」の執念を強烈に感じさせます。
派手なアクションはありませんが、静かで重い衝撃を残す英国ミステリーの傑作として、ミステリーファンなら必見の作品です。
関連トピック
ポール・ホップウッド(ヘレンのパートナーであり刑事。優しげだが、裏に何かを隠しているようなミステリアスな存在)
マーク・ビリングハム(原作者。英国を代表するクライム・ノベル作家であり、本作は彼の小説2作をベースにしている)
マイアンナ・バーリング(ヘレンを演じた女優。スウェーデン生まれ英国育ちのクールビューティー)
アダム・ペリン(第1部で登場するヘレンの幼馴染の刑事。彼女と共に事件を追う)
関連資料
DVD『イン・ザ・ダーク』(輸入盤などで視聴可能。BBCならではの映像美と重厚な脚本が堪能できる)
原作小説『Time of Death』『In the Dark』(マーク・ビリングハム著。ドラマのベースとなったトム・ソーン刑事シリーズの番外編的作品)

