【クイーンズ・ギャンビット】ベス・ハーモンの魅力とは?孤独な天才少女が盤上で掴んだ勝利とファッションを徹底解説

ヒューマンドラマ

【クイーンズ・ギャンビット】ベス・ハーモンの魅力とは?孤独な天才少女が盤上で掴んだ勝利とファッションを徹底解説

「クイーンズ・ギャンビット」におけるベス・ハーモンの概要

2020年にNetflixで配信され、全世界でチェスブームを巻き起こしたドラマ『クイーンズ・ギャンビット(The Queen’s Gambit)』。

この物語の主人公であり、アニャ・テイラー=ジョイが演じたベス・ハーモン(エリザベス・ハーモン)は、架空の人物でありながら、実在の天才棋士のように世界中を熱狂させました。
9歳で孤児となった彼女は、施設の用務員からチェスを学び、その圧倒的な才能を開花させます。しかし、彼女の人生は栄光だけでなく、鎮静剤やアルコールへの依存、そして深い孤独との戦いでもありました。

1960年代の男性優位なチェス界を舞台に、赤毛の少女がいかにして「クイーン」へと成長し、最強のソビエト勢に挑んだのか。その美しくも過酷な半生を解説します。

詳細:依存症との闘い、ファッション、そして成長

ベス・ハーモンというキャラクターは、単なるスポ根ドラマの主人公ではありません。彼女の魅力は、天才ゆえの危うさと、洗練されたファッション、そして周囲の人々との関わりによる人間的な成長にあります。

1. 孤児院の天井と「緑の薬」の呪縛

ベスのチェスの才能は、ケンタッキー州の孤児院での生活から始まりました。

地下室で用務員のシャイベル氏から手ほどきを受けた彼女は、夜な夜な天井を見上げ、そこに巨大なチェス盤を投影して対局をシミュレーションする能力を身につけます。
しかし、この能力は施設で投与されていた精神安定剤(緑のカプセル)への依存と表裏一体でした。「薬がないと勝てない」という思い込みは、大人になってからもアルコール依存と共に彼女を蝕み続けます。彼女にとってチェスは、カオスな人生の中で唯一「支配できる世界」であり、同時に彼女を孤立させる檻でもありました。

2. 60年代ファッション・アイコンとしてのベス

本作が女性層からも絶大な支持を得た理由の一つが、ベスのファッションです。

物語が進むにつれて、孤児院の地味な制服から、養母の影響を受けた華やかなスタイル、そして自分の稼ぎで買ったモードな衣装へと変化していきます。
ピエール・カルダンやクレージュを彷彿とさせる60年代の幾何学模様や、チェス盤を意識したチェック柄のコートなど、彼女の衣装は彼女の自信とステータスの表れです。特に最終話、モスクワで全身白のコートと帽子を纏った姿は、盤上の最強の駒「ホワイト・クイーン」そのものを象徴する圧巻のビジュアルでした。

3. 孤独な戦いから「チーム」への変化

ベスは当初、他者を拒絶し、一人で戦うことに固執していました。

しかし、彼女の人生には常に彼女を支える人々がいました。用務員のシャイベル氏、養母のアルマ、孤児院時代の親友ジョリーン、そしてかつて対戦したハリー・ベルティックやベニー・ワッツといった男性棋士たちです。
物語のクライマックス、最強の敵であるソビエトのボルコフに挑む際、彼女は初めて「自分は一人ではない」ことを悟ります。かつてのライバルたちが電話越しに知恵を貸してくれるシーンは、彼女が孤独という殻を破った瞬間であり、チェスが決して孤独なゲームではないことを証明しました。

4. アニャ・テイラー=ジョイの圧倒的な存在感

ベスを演じたアニャ・テイラー=ジョイの演技は、まさに怪演と呼ぶにふさわしいものでした。

彼女の特徴的な大きな瞳は、盤面を見つめる際の集中力や、恐怖、歓喜をセリフ以上に雄弁に語りました。
「実際にはチェスを知らなかった」という彼女ですが、指し手の優雅さや視線の動かし方を完璧にマスターし、ベス・ハーモンという架空の天才にリアリティという命を吹き込みました。

「クイーンズ・ギャンビット」参考動画

まとめ

ベス・ハーモンは、才能というギフトと依存症という呪いを同時に抱えた、極めて人間臭いヒロインです。

彼女が最終的に手に入れたのは、世界チャンピオンの称号だけではありません。それは、自分自身を愛すること、そして天井の幻影に頼らずとも生きていけるという自信でした。
ラストシーン、公園で老人たちとチェスを指す彼女の穏やかな表情は、長い戦いの果てに見つけた本当の安らぎを物語っています。『クイーンズ・ギャンビット』は、天才少女のサクセスストーリーであると同時に、一人の女性が再生する魂の物語なのです。

関連トピック

ワシリー・ボルコフ(ソビエト連邦の世界チャンピオン。ベスにとって最大の壁であり、尊敬する目標)
ベニー・ワッツ(カウボーイハットを被ったアメリカの天才棋士。ベスのライバルであり、後に協力者となる)
ミスター・シャイベル(孤児院の用務員。無愛想だがベスの才能を見抜き、チェスを教えた最初の師匠)
ジョリーン(孤児院時代の親友。孤独に押しつぶされそうになったベスを救う重要な存在)

関連資料

小説『クイーンズ・ギャンビット』(新潮文庫)(ウォルター・テヴィスによる原作。ドラマでは描かれなかった内面描写が豊富)
Netflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』(全7話のリミテッドシリーズ。映像美、音楽、演技の全てが完璧な作品)

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