【涙腺崩壊】『宇宙大作戦』最高傑作「危険な過去への旅」徹底解説!あらすじから「究極の選択」の意味まで
「危険な過去への旅」の概要
SFテレビドラマの金字塔『宇宙大作戦(スタートレック)』において、批評家、ファン、そして制作陣の誰もが「シリーズ最高傑作」と認めるエピソードが存在します。それが、第28話「危険な過去への旅(原題:The City on the Edge of Forever)」です。
著名なSF作家ハーラン・エリスンが脚本の原案を手掛け、1968年のヒューゴー賞(最優秀映像作品賞)を受賞したこの作品は、単なるSFアドベンチャーの枠を超え、愛と犠牲、そして運命の残酷さを描いた悲劇のラブストーリーとして知られています。なぜこのエピソードが半世紀以上経った今も「神回」として語り継がれるのか、そのあらすじと見どころ、そして物語に込められた深いテーマを徹底的に掘り下げて解説します。
「危険な過去への旅」の詳細
物語の始まり:狂気と時間の扉
物語は、エンタープライズ号の船医ドクター・マッコイの事故から始まります。彼は治療中の不慮の事故により、自分自身に強力な薬物「コーディラジン」を過剰投与してしまいます。薬の副作用で錯乱状態に陥ったマッコイは、船から転送装置を使って近くの惑星へ逃亡します。
カーク船長とスポックらが後を追って惑星に降り立つと、そこには古代の廃墟と、中心に脈動する巨大な石の輪が存在していました。それは「永遠の守護者(Guardian of Forever)」と名乗る、時間と空間を自在に行き来できる生きたタイムゲートでした。
マッコイは錯乱したまま、そのゲートの中へ飛び込み、過去の地球へと姿を消してしまいます。その直後、エンタープライズ号との連絡が途絶え、空に浮かぶはずの船が消滅してしまいます。守護者は告げます。「彼が過去を変えたため、君たちの知る未来はなくなった」と。
1930年代の大恐慌と運命の女性
歴史を修復し、エンタープライズ号と未来を取り戻すため、カークとスポックもマッコイを追ってゲートへ飛び込みます。二人がたどり着いたのは、1930年代、大恐慌時代のニューヨークでした。
貧困と絶望が街を覆う中、二人は「21番街伝道所」を運営する一人の女性、エディス・キーラー(演:ジョーン・コリンズ)と出会います。彼女はホームレスたちに食事と希望を与え、「いつか人類は宇宙へ飛び出し、原子力を平和利用し、戦争のない世界を作る」と熱弁を振るう、未来を見据えた理想家でした。
カークはその美しさと知性、そして未来の自分たちと同じ夢を持つ彼女に強く惹かれ、やがて二人は深く愛し合うようになります。冷徹なスポックでさえ、彼女の洞察力には敬意を表するほどでした。
残酷すぎる「究極の選択」
しかし、スポックが当時の機材で作り上げたコンピューターが、衝撃的な事実を導き出します。それは、エディス・キーラーの運命に関する二つの未来でした。
一つは、彼女が有名な平和運動家となり、アメリカの第二次世界大戦参戦を遅らせる未来。その結果、ナチス・ドイツが原爆を先に開発して世界を制服し、人類の文明は闇に包まれます(これがマッコイが変えてしまった歴史です)。
もう一つは、彼女が近日中に交通事故で命を落とす本来の歴史。彼女が亡くなることでアメリカは適切な時期に参戦し、ナチスは敗北、現在の平和な未来へと繋がります。
スポックはカークに非情な事実を告げます。「彼女は死ななければならない。歴史を戻すためには、彼女を助けてはいけないのだ」。愛する人を自分の手で見殺しにしなければ、全人類、そしてエンタープライズの仲間たちの未来が消滅する。カークは究極のジレンマに苦悩します。
伝説のラストシーン
運命の日、ついにマッコイがこの時代に現れ、エディスが彼を保護します。再会を喜ぶカーク、スポック、マッコイの三人。しかし、エディスが道路を横断しようとしたその瞬間、トラックが迫ります。
とっさに助けようと飛び出すマッコイ。それを必死で「止める」カーク。
ブレーキ音と悲鳴の後、静寂が訪れます。
「私が彼女を救えたのに!君は知っていたのか!」と叫ぶマッコイに対し、スポックは静かに答えます。「船長は知っていたのです」。
エディスの亡骸を抱きかかえることなく、震える背中で立ち尽くすカーク。守護者の元へ戻った彼らが発した言葉は、「宇宙への冒険」への希望に満ちたものではなく、ただ一言、「ここを出よう(Let’s get the hell out of here)」という、悲痛な命令でした。
制作背景と評価
このエピソードは、SF界の鬼才ハーラン・エリスンの脚本を元にしていますが、制作段階ではジーン・ロッデンベリーらとの激しい意見の対立がありました。エリスンのオリジナル脚本ではさらにダークな要素がありましたが、最終的に放送されたバージョンは、カークの悲恋と苦渋の決断に焦点が当てられ、結果としてテレビ史に残る名作となりました。ゲスト主役のジョーン・コリンズの演技も素晴らしく、彼女の演じたエディス・キーラーは、スタートレック史上最も重要なゲストキャラクターの一人として数えられています。
「危険な過去への旅」の参考動画
まとめ
「危険な過去への旅」は、SFという舞台装置を使いながら、「多数を救うために愛する一人を犠牲にできるか」という普遍的かつ重厚な哲学的問いを投げかけています。派手な宇宙船の戦闘シーンは一切ありませんが、カーク船長の人間としての弱さと強さ、そしてリーダーとしての孤独がこれほどまでに描かれたエピソードは他にありません。
見終わった後、タイトルの「City on the Edge of Forever(永遠の淵に立つ都)」の意味を噛み締めると共に、しばらく動けなくなるほどの余韻に浸ることでしょう。スタートレックを見たことがない人にも、まず最初にお勧めしたい、物語の力に満ちた傑作です。
関連トピック
ハーラン・エリスン
本作の原案・脚本を担当したアメリカSF界の巨匠。
永遠の守護者(Guardian of Forever)
時空を超えるゲートであり、自我を持つ謎の存在。
エディス・キーラー
カークが愛した女性であり、歴史の分岐点となった重要人物。
ヒューゴー賞
SF作品に贈られる最も権威ある賞の一つ。
関連資料
Blu-ray『宇宙大作戦 コンプリート・シーズン1』
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書籍『ハーラン・エリスンの危険な過去への旅(オリジナル脚本)』
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