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【衝撃の神回】『謎の円盤UFO』第20話「謎の発狂石」徹底考察!番組のセットが映る?禁断のメタフィクション

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【衝撃の神回】『謎の円盤UFO』第20話「謎の発狂石」徹底考察!番組のセットが映る?禁断のメタフィクション

『謎の円盤UFO』第20話「謎の発狂石」の概要

1970年のイギリスSFドラマ『謎の円盤UFO』において、第20話「謎の発狂石(原題:Mindbender)」は、シリーズ全26話の中でも最も異質であり、同時に「最高傑作」との呼び声が高い伝説のエピソードです。

通常のエピソードが宇宙人との攻防を描くハードなSFアクションであるのに対し、この回は人間の精神世界と現実の崩壊をテーマにしたサイコ・サスペンスの色合いが濃くなっています。

物語は、月面で発見された謎の結晶体が引き起こす幻覚作用によって、SHADOのメンバーが次々と狂気に陥るというものですが、最大の見どころはクライマックスにあります。

主人公のエド・ストレイカー司令官が見る幻覚の内容が、「自分は『謎の円盤UFO』というテレビドラマを撮影している俳優だ」というメタフィクション(虚構が虚構であることを暴露する手法)になっているのです。

「第四の壁」を破り、撮影スタジオのセットやスタッフまでもが画面に登場するこの演出は、放送当時の視聴者を大混乱に陥れ、現在ではカルト的な人気を誇る「神回」として語り継がれています。

本記事では、この衝撃作のあらすじ、演出の妙、そして物語に込められた哲学的なテーマについて徹底解説します。

第20話「謎の発狂石」の詳細解説

惨劇の幕開け:月面のダイヤモンド

事件の発端は、月面での地質調査中に起こります。

SHADOの月面探検車に乗った二人の隊員、コンロイとビーバーは、謎のダイヤモンド状の鉱石を発見します。

しかし、その石を手に取った瞬間、ビーバー隊員が突如として錯乱し、相棒のコンロイを殺害してしまうのです。

さらに、駆けつけたインターセプターのパイロットたちもパニックに陥り、自爆するという不可解な事故が連鎖します。

ストレイカー司令官は、この一連の異常事態の原因が「石」にあると疑い、厳重な警戒のもと、その鉱石を地球のSHADO本部へと移送させます。

この序盤の展開は、未知の物体に対する恐怖を描いた典型的なSFホラーの文法で進みますが、これは後に訪れる「現実崩壊」への序章に過ぎませんでした。

ヘンダーソン長官の乱心

地球に持ち込まれた鉱石は、さらなる猛威を振るいます。

SHADOの上層部であるヘンダーソン長官がこの石に接近した際、突如として幻覚に襲われます。

彼は、部下であり信頼するストレイカー司令官が「人間に化けた宇宙人」に見え始め、恐怖に駆られてストレイカーを殺そうと暴れ回るのです。

普段は冷静沈着なヘンダーソンが、SHADO司令室の象徴であるガラスデスクを粉々に破壊し、狂乱するシーンは圧巻です。

検査の結果、この石は人間の脳波に干渉し、潜在的な恐怖や攻撃本能を極限まで増幅させることが判明します。

しかし、時すでに遅く、ストレイカー自身もまた、ヘンダーソンとの揉み合いの中で石の影響を受けてしまっていたのです。

禁断のクライマックス:崩れ去る「SHADO」の世界

本エピソードの核心は、ストレイカーが見る幻覚の描写にあります。

執務室で強烈な頭痛に襲われたストレイカー。彼がふと顔を上げると、周囲の景色が一変しています。

鳴り響いていた警報音は、「カット!」という鋭い監督の声に変わっていました。

彼が振り返ると、そこにはSHADOの司令室の「壁」はなく、撮影用カメラ、照明機材、そして忙しく動き回る撮影スタッフたちの姿がありました。

ストレイカー(=俳優エド・ビショップ)は、困惑しながらセットの外へと歩き出します。

そこでは、先ほどまで対立していたヘンダーソン長官役の俳優が休憩し、仲良く談笑しています。

彼はスタッフから「エド」と呼ばれ、台本を手渡され、「今日の撮影は終わりだ」と告げられるのです。

これは幻覚なのか、それともこれまでの「地球防衛組織SHADO」としての戦いこそが、一人の俳優が見ていた夢だったのか?

劇中の現実と、番組制作という現実が交錯するこの数分間は、テレビドラマの枠を超えたアバンギャルドな映像体験として、見る者に強烈なめまいを覚えさせます。

現実への帰還と残された謎

最終的に、ポール・フォスター大佐の機転によってストレイカーは正気を取り戻し、問題の鉱石は破棄されます。

しかし、ラストシーンでストレイカーが見せる表情には、普段の自信に満ちた司令官の姿はありませんでした。

彼は、自分が戻ってきたこの「現実」が本当に現実なのか、一瞬疑うような虚ろな目をしています。

このエピソードは、「我々が見ている世界は本物なのか?」という哲学的問いを投げかけるとともに、常に極限のストレス下にあるSHADO隊員たちの精神的脆さを浮き彫りにしました。

また、制作サイドの視点で見れば、低予算で最大限の効果を生むための「楽屋落ち」的な手法でありながら、それを逆手にとってシリアスなドラマに昇華させたジェリー・アンダーソンの手腕が光る一作と言えるでしょう。

『謎の円盤UFO』参考動画

『謎の円盤UFO』第20話のまとめ

第20話「謎の発狂石」は、『謎の円盤UFO』という作品が単なる特撮アクションではないことを証明する、シリーズ屈指の野心作です。

ストレイカー司令官が「セットの裏側」に迷い込むシーンは、映画『マトリックス』や『トゥルーマン・ショー』に先駆けたメタフィクションの傑作として、映像史的にも高い価値を持っています。

また、普段は完璧超人として描かれるストレイカーの深層心理に、「戦いから降りたい」「ただの俳優に戻りたい」という逃避願望があったのではないかと推測させる点でも、キャラクターの深掘りとして非常に重要です。

子供の頃に見て「意味が分からなくて怖かった」という方も、大人になった今こそ見直すべきエピソードです。

そこには、虚構と現実の狭間で苦悩する男たちの、重厚な人間ドラマが隠されています。

関連トピック

メタフィクション:フィクションの中で「これがフィクションであること」を意図的に露呈させる技法。本話はその古典的な成功例。

第四の壁:演劇やドラマにおいて、舞台と観客席(あるいはカメラの向こう側)を隔てる見えない壁のこと。ストレイカーはこれを文字通り突き破った。

エド・ビショップ:ストレイカーを演じた俳優。劇中で「俳優エド・ビショップ」として振る舞うシーンは、彼の演技力が光る名演。

スチュアート・デイモン:ゲスト出演した俳優。後に『General Hospital』などで活躍する彼が、狂気に陥るハワード役を熱演している。

関連資料

DVD/Blu-ray『謎の円盤UFO』コンプリート・ボックス:撮影セットが見える衝撃のシーンを高画質で確認するための必須アイテム。

書籍『ジェリー・アンダーソン 自伝』:なぜこのような実験的なエピソードが作られたのか、その制作背景や意図が語られている。

サントラCD:バリー・グレイによるサイケデリックで不安を煽るBGMも、このエピソードの狂気を演出する重要な要素となっている。

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