【徹底解説】『チキチキマシン猛レース』個性爆発のマシンと愛すべき悪役!あらすじから「ケンケン」の笑い声、伝説の日本語吹替まで総まとめ
概要
『チキチキマシン猛レース』(原題:Wacky Races)は、1968年にアメリカのハンナ・バーベラ・プロダクションによって制作されたテレビアニメシリーズです。
タイトルの通り、11台の個性あふれるユニークなレーシングカー(チキチキマシン)が、北米大陸のコースを舞台に、ルール無用のハチャメチャなレースを繰り広げます。
本作の最大の特徴は、主人公(と言っていいでしょう)が悪役の**「ブラック魔王(Dick Dastardly)」**とその相棒犬**「ケンケン(Muttley)」**であることです。
彼らは世界一速いスーパーカー「ゼロゼロマシン」に乗っていながら、まともに走ろうとせず、ライバルたちを妨害することに執念を燃やします。
しかし、仕掛けた罠に自らかかって自滅し、結局最下位になる……という「お約束」の展開が、視聴者の爆笑を誘いました。
また、日本では1970年から放送され、その際に施された日本語吹き替え版の演出が伝説となっています。
原語版にはない軽妙なナレーションや、キャラクターのユニークな日本名(ガンセキオープン、プシーキャットなど)は、日本の視聴者に合わせて徹底的にローカライズされており、本作を「日本のアニメだと思っていた」というファンも少なくありません。
個性的な11台のマシンのスペックから、ケンケンの笑い声の秘密まで、その魅力を余すところなく紹介します。
オープニング
YouTubeの「ワーナー ブラザース 公式チャンネル」などで、懐かしのオープニング映像やレースシーンを確認できます。
野沢那智さん(または広川太一郎さんなどバージョンによる)の早口ナレーションが脳内再生される方も多いでしょう。
詳細(徹底解説)
あらすじとルール:勝つことよりも「邪魔」が優先?
物語の目的はシンプル。「世界一イカれたレーサー(World’s Wackiest Racer)」の称号を得るために、11台のマシンが優勝を目指して走ります。
コースは荒野、雪山、砂漠と様々ですが、共通しているのは「何でもあり」ということ。
各マシンには特殊なギミックが搭載されており、空を飛んだり、岩に変身したり、美女の魅力で他車を止めたりと、自由奔放なレース運びが見どころです。
しかし、このアニメの真髄は「レースの勝敗」ではありません。
トップを独走できる実力があるにもかかわらず、わざわざ停止して後続車に罠(岩を落とす、ニセの標識を立てる、道を爆破する等)を仕掛けるブラック魔王の「無駄な努力」にあります。
そして、その努力が全て裏目に出て、煤まみれになった魔王を、横でケンケンが「シシシシ……」と嘲笑う。
この黄金パターンこそが、本作がコメディとして完成されている理由です。
ちなみに、全エピソードを通じてブラック魔王が優勝したことは一度もありません(一度ゴールしたと思われた回も、不正がバレて失格になりました)。
伝説の日本語吹き替え版:もはや「創作」の域
本作の日本での人気を決定づけたのは、卓越した翻訳と声優陣のアドリブです。
- 名前の変更:原語の「Dick Dastardly(卑劣なディック)」を「ブラック魔王」、「Muttley(雑種犬)」を「ケンケン」、「Penelope Pitstop」を「ミルクちゃん」とするなど、親しみやすい名前に変更されました。
- 実況ナレーション:野沢那智(または広川太一郎)による、マシンガンのような早口実況は、原語版にはない日本独自の演出です。画面の余白を埋め尽くすようなテンポの良い語り口は、後のバラエティ番組やアニメにも多大な影響を与えました。
個性あふれる11台のエントリーマシン
主要なマシンとレーサーを日本名で紹介します。
- 00:ゼロゼロマシン(ブラック魔王&ケンケン)
ロケットエンジンやドリル、回転ノコギリなど無数の武器を搭載したスーパーカー。普通に走れば最強なのに、悪巧みのせいで勝てない。 - 1:ガンセキオープン(タメゴロー&トンチキ)
岩石でできた原始時代の車。棍棒で叩いて加速する。衝突しても壊れない頑丈さが武器。 - 2:ヒュードロクーペ(モンスター&ドラチビ)
幽霊屋敷のような車。車内にドラゴンや幽霊、怪物を飼っており、オカルトパワーで走る。 - 3:マジック3(ドクター・H)
天才発明家が乗る、ボートや飛行機などあらゆる形態に変身可能な万能マシン。 - 4:クロイツェルスポーツ(コウモリボス)
飛行機と車が合体したような赤いマシン。空を飛んでショートカットすることが多い。 - 5:プシーキャット(ミルクちゃん)
紅一点のアイドルレーサー。ピンク色の可愛い車で、ドライヤーやパフなどメイク道具を使ってライバルを妨害(または魅了)する。「ペネロッピー」とも呼ばれる。 - 6:タンクGT(軍曹閣下&新兵)
戦車とジープを足したような軍用車両。大砲を撃って加速したり攻撃したりする。 - 7:ギャングセブン(トラヒゲ一家)
1920年代の禁酒法時代のセダン。7人の小人ギャングが乗っており、足を出して人力で走る「小足走法」が得意技。 - 9:ハンサムV9(キザトト君)
キザな好青年が乗るドラッグレーサー。ミルクちゃんに良いところを見せようとするが、車が脆く、すぐバラバラに壊れる。 - 10:ポッポSL
制作秘話・トリビア
- ケンケンの笑い声:ケンケンの独特な「シシシシ」という笑い声は、原語版の声優ドン・メシックの演技が元になっていますが、日本版の大塚周夫氏の演技によって、より意地悪で愛嬌のある笑い声として定着しました。
- スピンオフ:本作の人気を受けて、ブラック魔王とケンケンが空軍として活躍する『スカイキッドブラック魔王(Dastardly and Muttley in Their Flying Machines)』や、ミルクちゃんが主役の『ペネロッピー絶体絶命(The Perils of Penelope Pitstop)』などのスピンオフ作品が制作されました。
キャストとキャラクター紹介(日本語吹替)
ブラック魔王 (Dick Dastardly)
声:大塚周夫(初代) 他
紫の帽子とコート、長い髭が特徴の悪党。「やれ、ケンケン!」「おのれ〜!」といった台詞回しが有名。
ケンケン (Muttley)
声:神山卓三(初代)/大塚周夫(代役) 他
魔王の相棒犬。勲章をもらうことに執着する。魔王の失敗を笑う皮肉屋だが、魔王がいないと寂しがる一面も。
ミルクちゃん (Penelope Pitstop)
声:小原乃梨子 他
サザン・ベル(南部美人)訛りのあるお嬢様。どんな危機的状況でもメイクを気にし、男性レーサーたちに助けられる「姫」ポジション。
ナレーション
声:野沢那智 / 広川太一郎 他
レースの展開を煽り立てる、本作の影の主役。
まとめ(社会的評価と影響)
『チキチキマシン猛レース』は、単純明快なスラップスティック・コメディとして、世界中で愛されています。
特に日本では、バラエティ番組のタイトル(『チキチキ〜』)に引用されたり、CMにキャラクターが起用されたりと、ポップカルチャーの一部として深く根付いています。
また、ゲーム業界への影響も大きく、『マリオカート』などの「アイテムを使って妨害するレースゲーム」の原点とも言えるコンセプトを持っています。
大人になった今見返すと、勝つことよりも「自分らしく走る(そして邪魔する)」ことに全力を注ぐブラック魔王たちの姿に、不思議な愛おしさを感じることでしょう。
作品関連商品
- ゲーム:過去にPS1やPS2などでゲーム化されています。また、ケンケンを主役にしたアクションゲームなども存在します。
- グッズ:Tシャツ、フィギュア、プラモデルなどが定期的に発売されています。特にケンケンのぬいぐるみや、ゼロゼロマシンの超合金などはコレクターズアイテムとして人気です。
- 映像ソフト:『チキチキマシン猛レース』DVDボックスなどがワーナー・ブラザースより発売中。

