【シリーズ屈指の神回】ヴォイジャー全滅の衝撃!第100話「過去を救いに」が描くハリー・キムの孤独な戦いとタイムパラドックス
「過去を救いに」の概要
『スタートレック:ヴォイジャー』の長い航海の中でも、ファン投票などで常に上位にランクインし、「最高傑作」との呼び声も高いエピソードがあります。
それが記念すべき通算第100話にあたる、シーズン5 第6話「過去を救いに」(原題:Timeless)です。
この物語は、氷の惑星に墜落し、厚い氷の下で全滅してしまったヴォイジャーの衝撃的な映像から幕を開けます。
生き残ったのは、わずか2名。それから15年後、深い後悔と罪悪感を抱えながら、歴史を書き換えるために命を懸ける男たちの姿を描いた、SFサスペンスとヒューマンドラマが融合した傑作です。
なぜヴォイジャーは墜落したのか? 万年少尉と揶揄されがちなハリー・キムが、なぜこのエピソードでは「シリーズ最高の演技」と絶賛されるのか?
『新スタートレック(TNG)』からの豪華ゲストも含め、このエピソードが持つ特別な魅力を余すところなく解説します。
「過去を救いに」の詳細
1. 衝撃のオープニングとあらすじ:氷の下の墓標
物語は、ヴォイジャー本編の時代から15年後の未来から始まります。
氷に閉ざされた極寒の惑星。そこには、厚い氷の下に閉じ込められ、クルー全員が死亡したまま凍りついた「U.S.S.ヴォイジャー」の姿がありました。
この悲劇から生き残ったのは、チャコティ副長とハリー・キム少尉の二人だけ。
彼らは、新型エンジン「量子スリップストリーム・ドライブ」の実験中に生じた計算ミスにより、艦を墜落させてしまった当事者でした。
彼らは自分たちのミスで仲間を死なせたという強烈な自責の念に駆られながら、15年間、歴史を変えるための準備を進めてきました。
連邦から指名手配され、逃亡生活を送りながらも、彼らは盗み出した「デルタ・フライヤー」を使い、墜落直前のヴォイジャーにメッセージを送って過去を改変しようと試みます。
2. 見どころ①:ハリー・キム、一世一代の名演
このエピソードの主人公は、間違いなくハリー・キムです。
普段は真面目で少し頼りない「永遠の少尉」というキャラクターですが、この「未来のハリー」は全く異なります。
15年という歳月が彼をどう変えたのか。彼は罪悪感により笑顔を失い、冷徹で、目的のためなら手段を選ばない執念の男になっていました。
演じるギャレット・ウォンの演技は鬼気迫るものがあり、特に過去の自分(セブン・オブ・ナインのインプラント経由)に向けて語りかけるシーンの悲壮感は、涙なしには見られません。
「僕の計算ミスだった」という長年の十字架を背負い、自分の存在が消滅することさえ厭わずに過去を救おうとする彼の姿は、シリーズを通して最も英雄的な瞬間の一つです。
3. 見どころ②:TNGからの豪華ゲストと監督
第100話という記念すべき回に華を添えるため、『新スタートレック(TNG)』の人気キャラクター、ジョーディ・ラ=フォージ(演:レヴァー・バートン)がゲスト出演しています。
未来の世界で、彼は「U.S.S.チャレンジャー」の艦長として登場し、歴史改変という重罪を犯そうとするチャコティとキムを追跡します。
かつてのエンジニアとしての知識と、艦長としての威厳を併せ持ったジョーディの姿は、TNGファンにとっても嬉しいサプライズです。
さらに注目すべきは、このエピソードの監督をレヴァー・バートン自身が務めている点です。
彼の手腕により、アクション、VFX、そして人間ドラマのバランスが完璧に取れた、映画並みのクオリティのエピソードに仕上がっています。
4. 映像美とSF設定:量子スリップストリームと墜落シーン
本作のキーとなるテクノロジー「量子スリップストリーム・ドライブ」は、以前のエピソード(「裏切られたメッセージ」)で得た技術を応用したもので、ワープを遥かに凌ぐ超高速航法です。
この技術への希望が、逆に絶望的な事故を生んでしまうという皮肉が物語に深みを与えています。
また、ヴォイジャーが氷の惑星に不時着し、雪に埋もれていく墜落シーンのVFX(特撮)は、テレビシリーズの枠を超えた迫力があります。
特に、氷の下で静かに眠るヴォイジャーのブリッジを、未来のキムたちが懐中電灯で照らしながら歩くシーンは、美しくも残酷な「死の世界」を表現しており、シリーズ屈指の名シーンとして語り継がれています。
5. 結末:歴史は変わったのか?
(ネタバレを含みます)
未来のキムとチャコティの決死の行動により、過去への通信は成功します。
しかし、彼らが送りたかった「正しい位相補正データ」は届きませんでした。土壇場で通信が途切れる中、キムが送ったのは「計算は間違っている、エンジンを止めろ」という警告でした。
これにより、過去のヴォイジャーはスリップストリームの暴走前に停止し、墜落を回避します。
未来のタイムラインは消滅し、15年苦しみ続けたキムとチャコティも消え去りました。
現在の時間軸に戻ったヴォイジャー。ハリー・キムは、自分の机の上に未来の自分から送られてきた音声ログを見つけます。
「君への借りだ」という言葉と共に残されたメッセージを聞き、彼は見知らぬ「未来の自分」の苦悩と犠牲を知ることになるのです。
「過去を救いに」の参考動画
まとめ
「過去を救いに」は、単なるタイムトラベルものではありません。
「一度犯した過ちは取り返せるのか」「生き残った者の責任とは何か」という重厚なテーマを、スリリングな展開の中に落とし込んでいます。
全滅したヴォイジャーのショッキングなビジュアルで視聴者を惹きつけ、ハリー・キムというキャラクターの深層心理を掘り下げ、最後には「未来からの贈り物」という形で希望を残す。
構成、演技、演出のすべてが高次元で噛み合った、まさに100話記念にふさわしい神回です。
SF設定の面白さはもちろんですが、見終わった後に残る「現在の自分は、未来の自分が命を懸けて守りたかった存在なのかもしれない」という余韻こそが、このエピソードが愛され続ける最大の理由でしょう。
関連トピック
地獄の年 (Year of Hell): シーズン4の前後編。こちらも「もしもヴォイジャーが崩壊していたら」というIFの歴史を描いた、悲壮感漂う傑作エピソード。
運命の分かれ道 (Endgame): ヴォイジャーの最終回。未来のジェインウェイ提督が、過去を変えるために奔走するというプロットにおいて、本作との類似性が指摘されることが多い。
量子スリップストリーム・ドライブ: ボーグの技術などを応用した超高速推進システム。本作以降も、最新シリーズ『スタートレック:ディスカバリー』などで言及される重要なテクノロジー。
ジョーディ・ラ=フォージ: TNGの機関部長。本作以外にも、ヴォイジャーには意外なTNGキャラクターとのクロスオーバーが存在する。
関連資料
スター・トレック ヴォイジャー DVDコンプリート・シーズン 5: 本エピソードを収録。メイキング映像などで撮影の裏側も見ることができる。
スタートレック:ピカード: セブン・オブ・ナインの「その後」が描かれるシリーズ。ヴォイジャーでの経験がどう活きているかを知る上で必見。

