【絶望のドールハウス】『巨人の惑星』第2話「幽霊の住む町」解説!安住の地が「恐怖の檻」に変わる瞬間
第2話「幽霊の住む町」の概要
1960年代の傑作SFドラマ『巨人の惑星』。その第2話「幽霊の住む町(原題:Ghost Town)」は、シリーズ屈指の「心理的ホラー回」としてファンの間で語り継がれています。
不時着直後の混乱の中、主人公たちが発見したのは、自分たちのサイズにぴったり合った平和な町でした。
「ついに地球に戻れたのか?」「ここなら巨人に怯えずに暮らせる」。一行は歓喜し、束の間の安らぎを得ます。
しかし、その町には住民がおらず、あるのは「作られたような静けさ」だけでした。
本記事では、このエピソードがなぜ「神回」と呼ばれるのか、その残酷なプロットと、視聴者の心に爪痕を残す「巨大な少女」の恐怖、そして特撮の魔術について徹底解説します。
第2話「幽霊の住む町」の詳細解説
あらすじ:希望から絶望へのジェットコースター
1. 奇跡の発見とぬか喜び
巨大な森を彷徨い、疲労困憊のスティーブ機長ら7人。彼らの視界に飛び込んできたのは、見慣れた「等身大の町」でした。道路の幅も、家のドアの大きさも、すべてが人間サイズ(約180cm基準)。
「ここは巨人の世界ではない隔離された場所だ」と確信した一行は、歓声を上げます。特に、トラブルメーカーのフィッツヒューは「俺はこの町の市長になる!」と浮かれ、久しぶりのベッドや食事にありつこうと家の中へ駆け込みます。
2. 忍び寄る違和感
しかし、町は死んだように静かでした。電話線は繋がっておらず、家の中の果物は作り物。そして何より、人の気配が全くありません。
「幽霊の住む町(ゴーストタウン)か?」
不安がよぎる中、彼らが安らごうとした家の屋根が、突如として轟音と共に持ち上げられます。天井から覗き込んできたのは、太陽を遮るほど巨大な「老人」の顔でした。
3. 明かされる残酷な真実
この町は、地球に戻ったわけでも、巨人のいない楽園でもありませんでした。
巨人の老人が、可愛がっている孫娘のために裏庭に作った、精巧な「ミニチュアの町(ドールハウス)」だったのです。
スティーブたち人間にとっての「現実の町」は、巨人にとっては「おもちゃの模型」。このスケール感の反転がもたらす絶望感こそ、本作の真骨頂です。
第2話の見どころと考察
① 「人間がおもちゃにされる」根源的な恐怖
本エピソードの最大の脅威は、怪獣でも警察でもなく、「巨人の少女」です。彼女にとってスティーブたちは「動く素敵なお人形」。悪意はなくとも、無邪気に捕まえ、握りしめ、強引に「おままごと」に参加させようとします。
「痛い!離してくれ!」という叫びも、彼女には「お人形が喋った!」という喜びにしか聞こえません。圧倒的な力を持つ子供の無邪気さが、弱者にとっていかに暴力的で恐ろしいかを見事に描いています。
② 「フォースフィールド」という名の檻
老人は町全体を目に見えない「フォースフィールド(力場)」で囲っており、一度入ると出られない仕掛けを施していました。
安全だと思って入り込んだ場所が、実は脱出不可能な「飼育箱」だったという展開。
「自由なき安全」か「危険な自由」か。この究極の選択は、シリーズ全体を通して描かれる重要なテーマの一つであり、第2話にしてその方向性を決定づけました。
③ 逆転の発想!特撮セットの妙
第1話では「巨大なセット(巨大な椅子や電話)」を作って巨人の世界を表現しましたが、第2話では逆に「普通の人間サイズのセット」が多用されます。
しかし、文脈によってそれが「ミニチュアの家」に見えるよう演出されています。
- 窓の外に合成された巨大な目
- 屋根が外されて巨大な手が伸びてくるシーン
- 家の外にある巨大な雑草
これらの映像マジックにより、視聴者は「普通の家なのに、何かがおかしい」という閉塞感を共有することになります。アーウィン・アレンの予算配分と演出の巧みさが光るポイントです。
④ フィッツヒューの人間臭さ
この回でも、愛すべき小悪党フィッツヒューのキャラクターが爆発しています。
最初は「俺の町だ!」と威張り散らし、巨人の少女が現れた途端に一番情けない悲鳴を上げて逃げ惑う。彼の存在が、シリアスすぎる展開に程よいユーモアを与えています。
第2話「幽霊の住む町」の参考動画

第2話「幽霊の住む町」のまとめ
第2話「幽霊の住む町」は、物理的な危機だけでなく、精神的な尊厳を脅かされる恐怖を描いた名作です。
「自分たちに合うサイズの世界」こそが、実は最も危険な罠だったという皮肉。ラストシーンで、再び危険な森(巨人の世界)へと逃げ出す彼らの姿は、「安住の地などどこにもない」という厳しい現実を視聴者に突きつけます。
しかし、それでも自由を求めて走り出すスティーブたちの姿に、人間の強さと希望を感じずにはいられません。
SFドラマの金字塔として、今なお色褪せないサスペンスをぜひ体験してください。
関連トピック
ドールハウス効果:小さな人間がドールハウスや模型の世界に迷い込むシチュエーション。映画『縮みゆく人間』や『借りぐらしのアリエッティ』などでも見られる古典的かつ効果的な表現。
不気味の谷現象:人間に似ているが非なるものに抱く嫌悪感。本作では「作り物の町」の静けさがこの効果を生んでいる。
アーウィン・アレン:本作のプロデューサー。『ポセイドン・アドベンチャー』などで知られるが、テレビシリーズでも「閉鎖空間でのパニック」を描く手腕はずば抜けている。
関連資料
DVD BOX『巨人の惑星』:初期シーズンの緊張感あふれるエピソードを高画質で収録。
書籍『The Irwin Allen Scrapbook』:当時の撮影風景や、ミニチュアセットの設計図などが掲載されたファンブック。
輸入盤サントラ『Land of the Giants』:ジョン・ウィリアムズらによる、不安と興奮を煽る劇伴音楽集。

