【トーチウッド】名作回「アダム」徹底解説!記憶を操る寄生体とジャックの悲しき決断【シーズン2第5話】
「アダム」の概要
英国BBCの人気SFドラマ『トーチウッド』の中でも、ファンの間で「最も切なく、完成度が高いエピソード」の一つとして挙げられるのが、シーズン2第5話「アダム(原題:Adam)」です。
ある日突然、チームの中に「アダム」という見知らぬ男が存在している――しかし、メンバー全員が彼を「3年前からいる仲間」だと信じ込んでいるという、不気味な導入から物語は始まります。
この記事では、人間のアイデンティティの根幹である「記憶」をテーマにしたこの傑作エピソードについて、あらすじ、キャラクターの変化、そして涙なしには見られない衝撃のクライマックスまでを詳しく解説します。
「アダム」の詳細
違和感のない「侵入者」
物語は、エイリアンとの戦闘シーンから始まります。そこにはジャック、グウェン、イアント、トシコ、オーウェンに加え、当たり前のように「アダム」という青年が共に戦っていました。彼はチームに愛され、信頼されている存在として描かれます。
しかし、これはアダムの能力によるものです。彼は触れた相手の記憶に入り込み、自分に関する偽の記憶を植え付けることで存在を維持する寄生型エイリアンでした。
アダムは単に記憶を足すだけでなく、メンバーの性格や背景までも書き換えていきます。
変貌するメンバーと隠された深層心理
アダムの記憶操作によって、メンバーは普段とは異なる側面を見せ始めます。これは彼らの深層心理にある「願望」や「恐怖」を反映したものでした。
- トシコ・サト: 普段は自信がなく内気な彼女ですが、アダムと恋人同士であるという記憶を植え付けられ、自信に満ち溢れた魅力的な女性へと変貌します。
- オーウェン・ハーパー: プレイボーイで自信家の彼は、逆にオタク気質で臆病な性格になり、アダムに守られる存在となります。
- グウェン・クーパー: 最愛の婚約者リスの記憶を消され、アダムへの愛を植え付けられます。リスが訪ねてきても「誰だか分からない」と拒絶するシーンは、記憶操作の恐怖を象徴しています。
- イアント・ジョーンズ: 最も残酷な記憶を植え付けられたのがイアントです。「過去に3人の女性を殺害した」という偽の記憶により、彼は罪悪感と恐怖に精神を蝕まれていきます。
ジャックの「失われた記憶」の復活
このエピソードの核心は、不死身のリーダー、ジャック・ハークネスの記憶にあります。51世紀出身のジャックは、幼少期の記憶の多くを失っていました。
アダムはジャックの記憶に深く入り込むため、彼が失っていた「故郷ボーシェン半島」での記憶、特に父親と一緒に遊んだ温かい記憶を蘇らせます。
ジャックにとって、それは何百年もの間求めていた、何よりも大切な宝物でした。
究極の選択と悲劇的な結末
イアントの異常な行動から、ジャックは自身の記憶に矛盾があることに気づきます。アダムの正体を突き止めたジャックですが、アダムを倒す方法はただ一つ。「記憶消去薬(レトコン)」を飲み、アダムに関する記憶を完全に消し去ることでした。
アダムを忘れるということは、アダムが引き出してくれた「父との最後の思い出」も再び失うことを意味します。
「親父のことは忘れたくない!」と懇願する自分自身の感情を押し殺し、チームを救うためにジャックはレトコンを服用します。
アダムが消滅した後、何も覚えていないジャックが、なぜか涙を流しながら「何か忘れている気がする」と呟くラストシーンは、シリーズ屈指の名場面として語り継がれています。
「アダム」の参考動画
まとめ
第5話「アダム」は、派手なアクションではなく、静かな心理描写で視聴者の心を揺さぶる傑作です。
「私たちは記憶によって作られている」というテーマを突きつけ、もし記憶が変われば人格も変わってしまうという恐怖と、それでも変えられない魂の強さを描きました。
特に、普段は強いリーダーであるジャックの「弱さ」と「孤独」が露わになる展開は必見です。このエピソードを経ることで、その後のシーズンの重厚なドラマがより深く理解できるでしょう。
記憶の儚さと大切さを噛み締めながら、ぜひご覧ください。
関連トピック
レトコン(Retcon): トーチウッドが使用する記憶消去薬。本来は目撃者の記憶処理用だが、今回はチーム自身が使用する。
ボーシェン半島: ジャックの故郷。51世紀にエイリアンの襲撃を受け、ジャックはそこで家族と離れ離れになった。
ジャックの父: ジャックが幼少期に別れた父親。本エピソードで初めてその姿や思い出が描かれる。
グレイ: ジャックの弟。このエピソードで触れられる過去の記憶が、シーズン2後半の重要な伏線となっている。
関連資料
DVD『トーチウッド シーズン2』: 本エピソードを含む全13話を収録。
サントラ『Torchwood: Original Television Soundtrack』: ベン・フォスターによる劇伴。悲しくも美しい旋律が涙を誘う。

