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【完全解説】映画『続・荒野の用心棒』は続編じゃない!?棺桶を引きずる男ジャンゴの伝説とガトリングガンの衝撃

アクション・冒険
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【完全解説】映画『続・荒野の用心棒』は続編じゃない!?棺桶を引きずる男ジャンゴの伝説とガトリングガンの衝撃

概要:泥と鮮血にまみれたマカロニ・ウエスタンの最高傑作

1966年に公開されたイタリア製西部劇(マカロニ・ウエスタン)『続・荒野の用心棒(原題:Django)』
このタイトルを見て、クリント・イーストウッド主演の『荒野の用心棒』の続編だと思っている方も多いのではないでしょうか?
実は本作、『荒野の用心棒』とはストーリーも登場人物も一切関係がありません。
当時の日本の配給会社が「ヒット作にあやかって客を呼ぼう」と勝手に「続」と付けただけの、全く独立した作品なのです。

しかし、その内容はイーストウッド作品に勝るとも劣らない、いや、それ以上に「残酷で、虚無的で、強烈な」傑作として映画史に刻まれました。
監督は、「暴力の詩人」と呼ばれたセルジオ・コルブッチ
主演は、その彫刻のような美貌と冷徹な碧眼で一世を風靡したフランコ・ネロ
乾いた砂埃が舞う従来の西部劇とは異なり、底なしの泥沼と降りしきる雨、そして棺桶に隠された秘密兵器ガトリングガンが登場する本作は、クエンティン・タランティーノ監督をはじめとする世界中のクリエイターに多大な影響を与え続けています。

本記事では、なぜ「ジャンゴ」という名前が伝説となったのか、その魅力と狂気を4,000文字以上のボリュームで徹底解説します。

オープニング映像(テーマ曲)

ルイス・バカロフ作曲、ロッキー・ロバーツが歌うあまりにも有名な主題歌『Django』。
一度聴いたら耳から離れない、哀愁と力強さが同居した名曲です。

詳細解説:なぜこの映画は「残酷」で「美しい」のか

あらすじと世界観:棺桶を引きずる男と泥の町

メキシコ国境に近い、泥濘(ぬかるみ)に沈んだゴーストタウン。
そこへ、古ぼけた棺桶をズルズルと引きずりながら一人の男が現れます。彼の名はジャンゴ
かつて恋人を殺された過去を持つ彼は、虚無感を漂わせながらこの呪われた町へと足を踏み入れます。

この町では、赤い頭巾を被った人種差別主義者のジャクソン少佐率いる「元南軍兵士の集団」と、ウーゴ将軍率いる「メキシコ革命軍」が激しく対立していました。
ジャンゴは到着早々、ジャクソン一味に虐げられていた女マリアを救い出し、酒場の主人ナタニエルに匿われます。
彼はこの二つの勢力を巧みに利用し、互いに争わせながら、ある計画を実行に移そうとしていました。
棺桶の中身、それは死体ではなく、当時の常識を覆す圧倒的な破壊兵器だったのです。

「太陽のレオーネ」対「泥のコルブッチ」

マカロニ・ウエスタンの二大巨頭として比較されるのが、セルジオ・レオーネ(『荒野の用心棒』監督)と、本作のセルジオ・コルブッチです。
レオーネが「灼熱の太陽と乾いた砂」を映像美として好んだのに対し、コルブッチは「冷たい雨と汚れた泥」を好みました。

『続・荒野の用心棒』の舞台となる町は、常に曇天で、地面は歩くのも困難なほどの泥沼です。
登場人物たちの衣装も泥にまみれ、薄汚れています。
この徹底した「汚れ」の演出が、本作特有の退廃的で救いのない空気を生み出しています。
ヒーローが颯爽と馬に乗るのではなく、泥の中を這いつくばって戦う姿は、従来の西部劇への強烈なアンチテーゼでした。

特筆すべき見どころ:ガトリングガンと耳切断シーン

本作最大の見せ場は、やはり中盤の決闘シーンです。
圧倒的多数で押し寄せるジャクソン少佐の部隊に対し、ジャンゴは悠然と棺桶を開きます。
そこから取り出したのは、手回し式の重機関銃(ガトリングガン)。
轟音と共に敵をなぎ倒していくその様は、西部劇というよりは戦争映画の迫力であり、後のアクション映画における「重火器乱射」のルーツとなりました。

また、本作には映画史に残る残酷描写があります。
ウーゴ将軍が裏切り者の神父の耳をナイフで切り落とし、それを本人に食わせるというシーンです。
このショッキングな描写は、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』での耳切りシーンに直接的な影響を与えたと言われています。
当時の観客を震え上がらせたこの「痛み」の表現こそが、コルブッチ作品の真骨頂です。

制作秘話:邦題の「続」が生んだ誤解と「ジャンゴ」現象

冒頭でも触れましたが、本作は『荒野の用心棒(A Fistful of Dollars)』とは無関係です。
しかし、この「勝手に続編を名乗る」という日本の配給会社の宣伝手法は、結果的に大成功を収めました。
そして、この現象は世界中で起こりました。
本作の主人公「ジャンゴ」という名前があまりにカッコよかったため、その後イタリアでは「ジャンゴ」と名のつく映画が30本以上も作られたのです(そのほとんどが本作とは無関係なB級映画です)。

この「ジャンゴ」という名前は、ジプシー音楽の巨匠ジャンゴ・ラインハルトから取られたと言われています。
左手の指に障害を持ちながら神業的なギター演奏をしたラインハルトと、本作のクライマックスで両手を潰されながらも銃を握るジャンゴの姿が見事に重なります。

キャストとキャラクター紹介

ジャンゴ

演:フランコ・ネロ / 吹替:小林清志

北軍の制服を着て、棺桶を引きずる謎の男。
クリント・イーストウッドよりもさらに若く、端正な顔立ちをしていますが、その瞳には深い絶望が宿っています。
愛する妻を殺された復讐のために生きていますが、マリアとの出会いによってわずかに人間性を取り戻していきます。
クライマックス、墓場で十字架に銃を固定して戦うシーンは、映画史上最も神々しく、かつ悲壮なラストバトルの一つです。

マリア

演:ロレダナ・ヌシアク

ジャクソン一味とウーゴ一味の両方から虐げられていた女性。
ジャンゴに救われ、彼に惹かれていきます。
泥だらけになりながらも失われない気品と美しさは、この陰惨な物語における唯一の希望の光です。

ジャクソン少佐

演:エドゥアルド・ファヤルド / 吹替:滝口順平

赤い覆面を被り、メキシコ人を人間狩りのように虐殺する狂信的なレイシスト。
クレー射撃の標的に人間を使うなど、その残虐性は際立っています。
『荒野の用心棒』のラモンとはまた違った、生理的な嫌悪感を抱かせる悪役です。

ウーゴ将軍

演:ホセ・ボダロ

メキシコ革命軍のリーダー。
一見豪快で頼りになりそうですが、目的のためなら手段を選ばない冷酷さを持ち合わせています。
ジャンゴとはかつて刑務所で一緒だったという因縁がありますが、黄金を巡って対立することになります。

キャストの代表作品と経歴

  • フランコ・ネロ(ジャンゴ役)
    本作で一躍世界的スターとなった彼は、その後も『ガンマン大連合』や『予言者』など数多くのマカロニ・ウエスタンに出演。
    『ダイ・ハード2』では悪役のエスペランザ将軍を演じるなど、ハリウッド大作でも活躍しました。
    そして2012年、タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』にカメオ出演。
    新しいジャンル(ジェイミー・フォックス)に対し、「名前の綴りは?」と尋ね、「D・J・A・N・G・O…Dは発音しない」と返されると、「知ってるさ(I know)」と答える粋な演出がなされました。
  • セルジオ・コルブッチ(監督)
    『殺しが静かにやって来る』では、喉を切られて声が出せない主人公を描くなど、常に過激で悲劇的な設定を好みました。
    レオーネが「表の帝王」なら、コルブッチは「裏の帝王」として、マカロニ・ウエスタンを支え続けました。

まとめ:絶望の果てに見える男の美学

『続・荒野の用心棒』は、決して爽快なヒーロー映画ではありません。
主人公は傷つき、両手を潰され、泥の中を這いずり回ります。
しかし、すべてを失った極限状態で、それでも愛した女のため、そして己のプライドのために引き金を引くその姿には、言葉にできない「男の美学」が凝縮されています。

「マカロニ・ウエスタンなんて、ただのB級アクションでしょ?」と思っている方にこそ見てほしい一作。
そこには、現代映画が忘れてしまった生々しい執念と、スクリーンを引き裂くようなエネルギーが満ち溢れています。

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    本作『続・荒野の用心棒』を見た後に鑑賞すると、主題歌の使い方や小ネタの数々に、監督の異常なまでの愛を感じることができます。
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    ルイス・バカロフ作曲の『Django』は、カラオケでも歌いたくなるほどの名曲。
    ドライブ中に流せば、気分は荒野を旅するガンマンそのものです。
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