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【徹底解説】『ダイアナ:ザ・ミュージカル』の評価はなぜ低い?あらすじからラジー賞独占の理由、キャストまで総まとめ

ミュージカル
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概要

2021年にNetflixで独占配信され、その後ブロードウェイで短期間のみ上演された伝説の異色作『ダイアナ:ザ・ミュージカル』(原題:Diana: The Musical)。
本作は、世界中から愛されたイギリスの元皇太子妃、ダイアナ・スペンサーの波乱万丈な半生を、なんと80年代のポップスやロックのテイストを取り入れたオリジナル楽曲に乗せて描いた伝記ミュージカルです。
監督はトニー賞受賞歴のある名匠クリストファー・アシュレイが務め、脚本と作詞をジョー・ディピエトロ、音楽を世界的ロックバンド「ボン・ジョヴィ」のキーボード奏者であるデヴィッド・ブライアンが担当するという、ブロードウェイの一流クリエイター陣が集結した肝入りのプロジェクトでした。
当初は2020年春にブロードウェイで華々しく開幕する予定でしたが、新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)によって劇場が閉鎖。
その打開策として、無観客の劇場で舞台をそのまま撮影し、実際の舞台開幕に先駆けてNetflixで世界同時配信するという、演劇界初の画期的な試みが行われました。
しかし、いざ配信がスタートすると、悲劇的な史実とあまりにも不釣り合いなポップで軽薄な楽曲、そしてSNS上でミーム(ネタ)にされるほど珍妙な歌詞の数々が観客を大いに困惑させることになります。
結果として、批評家からは「悪趣味」「歴史的惨事」と映画史・演劇史に残るレベルの大バッシングを浴び、辛口批評サイトRotten Tomatoesでも歴史的な低スコアを記録。
さらに、その年の最低映画を決める「第42回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)」においては、最低作品賞、最低監督賞、最低主演女優賞、最低助演女優賞、最低脚本賞の主要5部門を独占するという不名誉な快挙(?)を成し遂げました。
しかし、「あまりにも酷すぎて逆に目が離せない」というカルト的な人気を獲得し、一部のミュージカルファンやB級映画ファンの間では「愛すべきトンデモ作品」として熱狂的な支持を集めているのも事実です。
この記事では、エンタメ情報サイト「tvtomovie.com」の視点から、本作のあらすじや見どころ、豪華キャストの無駄遣いとも言える熱演ぶり、そしてなぜこれほどの「大爆死」を遂げたのかという裏話までを徹底的に深掘りして解説していきます。

オープニング

詳細(徹底解説)

あらすじと世界観

物語は1980年のロンドンから幕を開けます。
19歳の純朴な幼稚園の保育士アシスタントであったダイアナ・スペンサーは、ひょんなことからイギリス王室のチャールズ皇太子と出会い、世界中が注目する「おとぎ話」のようなロマンスのヒロインへと押し上げられます。
しかし、夢にまで見た豪華絢爛なロイヤルウェディングの直後から、ダイアナは王室の冷たいしきたりと、夫チャールズの心に常に居座り続ける元恋人カミラ・パーカー・ボウルズの存在に苦しめられることになります。
「この結婚には3人が関わっている」という有名な史実上の言葉通り、愛のない孤独な結婚生活の中で摂食障害や精神的な不安に苛まれるダイアナ。
しかし彼女は、ただ泣き寝入りするだけの悲劇のヒロインではありませんでした。
自らの最大の武器が「メディアからの圧倒的な注目度」と「ファッション」であることに気づいたダイアナは、華やかなドレスを身に纏い、慈善活動に身を投じることで、王室の伝統に反逆し、自立した女性としての地位を確立していきます。
本作の世界観の最大の特徴は、この極めてシリアスで悲劇的な実話を、なぜか底抜けに明るい80年代風のロック・ミュージカルに仕立て上げている点です。
ダイアナの苦悩や王室の愛憎劇が、アップテンポなシンセサイザーのビートとエキセントリックなダンスで表現されており、現実の重みとミュージカルの軽さの間に生じる「すさまじい温度差」が、本作を唯一無二のシュールなエンターテインメントへと変質させています。

シーズン/章ごとの展開

本作は舞台作品の映像化であるため、明確な第1幕と第2幕に分かれています。
第1幕は、純真無垢な少女ダイアナが王室という名の「鳥籠」に閉じ込められ、絶望するまでの過程を描きます。
見どころは、フラッシュを焚きながら群がるパパラッチたちを、トレンチコートを着たダンサーたちがアクロバティックに演じる奇妙な群舞や、エリザベス女王が「イギリス王室がいかに素晴らしいか」を朗々と歌い上げるシーンです。
そして第1幕のクライマックスでは、カミラの存在に気づいたダイアナが、ウェディングドレスの下で孤独を募らせる様子が描かれます。
続く第2幕では、ダイアナの「反撃」がテンポ良く展開されます。
ファッションを通じて世界的なアイコンへと成長し、エイズ患者への支援など社会貢献に力を入れるダイアナの姿が描かれる一方で、チャールズとの関係は完全に破綻。
ダイアナ自身も乗馬のインストラクターであるジェームズ・ヒューイットと不倫関係に陥ります。
泥沼の暴露本騒動や離婚劇を経て、物語は1997年のパリでの悲劇的な事故へと向かいますが、本作はその死の瞬間を過度にドラマチックには描かず、フラッシュの光と暗転だけで唐突に幕を閉じるという演出をとっています。
この終わり方の唐突さもまた、観客に強烈な「ポツンと取り残された感」を与える要因となりました。

特筆すべき見どころ

本作の最大の見どころは、良くも悪くも「どうかしている」としか思えない強烈な楽曲と歌詞の数々です。
特にSNSで大きな話題(と笑い)を呼んだのが、ダイアナが次男ハリー王子を出産した直後に歌う「Harry, my ginger-haired son(ハリー、私の赤毛の息子よ)」という身も蓋もない直球すぎる歌詞や、チャールズとダイアナの対立をボクシングの試合に見立てた「It’s a thriller in Manila but with Diana and Camilla(マニラでのスリラーのような戦い、ダイアナとカミラによる)」といった、歴史上の人物を扱っているとは思えないほどチープでシュールなフレーズです。
また、ダイアナがチャールズの不倫報道に対抗するために、あえて露出の多いセクシーな黒いドレスを着て公の場に登場した有名な史実、通称「リベンジ・ドレス(復讐のドレス)」のシーンは圧巻です。
劇中ではこれを「The F*** You Dress(くそくらえドレス)」という、王室への当てつけ全開の過激なタイトルのロックナンバーに乗せて歌い踊り、ダイアナの怒りと解放をコミカルに描き出しています。
一方で、純粋な舞台芸術として高く評価されている部分もあります。
それは、トニー賞を何度も受賞している大御所デザイナー、ウィリアム・アイヴィ・ロングが手掛けた豪華絢爛な衣装の数々と、舞台上で行われる見事な「早替え(クイックチェンジ)」の技術です。
ダイアナのアイコンとも言える数々の名ドレスが、一瞬の暗転やアンサンブルの動きの中で次々と着せ替えられていく魔法のような演出は、一見の価値がある素晴らしいクオリティを誇っています。

制作秘話・トリビア

本作の制作背景には、新型コロナウイルスという未曾有の事態が大きく影を落としています。
ブロードウェイでの開幕が延期となり、苦肉の策として「無観客の劇場で撮影し、Netflixで配信する」という手法がとられました。
しかし、これが結果として本作の「奇妙さ」をさらに増幅させることになります。
通常、こうしたアップテンポで大仰おおぎょうなコメディタッチのミュージカルは、観客の笑い声や拍手(レスポンス)があって初めて成立するテンポで作られています。
ところが本作は無観客で収録されたため、俳優たちが渾身のギャグや大げさな見得を切った直後に「恐ろしいほどの静寂」が訪れるという、非常にシュールで気まずい映像作品になってしまったのです。
その後、2021年11月に満を持してブロードウェイで有観客の公演が開幕しましたが、Netflixでの酷評が響いたのか、あるいはストレートに作品の質が問われたのか、わずか33回の本公演を行っただけで、12月には早々に打ち切り(クローズ)となってしまいました。
数千万円から数億円の巨額の制作費が投じられたブロードウェイ・ミュージカルとしては、歴史的な大赤字と短命に終わるという、作品の題材と同じくらい悲劇的な結末を迎えています。

キャストとキャラクター紹介

  • ダイアナ・スペンサー:ジーナ・デ・ヴァール
    • 本作の主人公であり、イギリス王室に嫁いだ「民衆のプリンセス」です。
    • 純粋な幼稚園教諭から、メディアを操る世界的なファッションアイコン、そして悲劇のヒロインへと変貌していく姿を、圧倒的な歌唱力と体力で演じ切っています。
    • ほぼ全編出ずっぱりで歌い続け、驚異的なスピードで衣装の早替えをこなす彼女のパフォーマンスは、作品の評価とは裏切り、極めてプロフェッショナルで素晴らしいものです。
  • チャールズ皇太子:ロー・ハルトランフ
    • ダイアナの夫であり、次期イギリス国王(現在はチャールズ3世)です。
    • 若く美しいダイアナを妻に迎えながらも、かつての恋人であるカミラへの未練を断ち切れず、常に冷淡で自己中心的な態度をとり続ける「わかりやすい悪役」として描かれています。
    • 妻の人気への嫉妬と、王室の義務に縛られる苦悩を不器用に歌う姿が印象的です。
  • カミラ・パーカー・ボウルズ:エリン・デイヴィー
    • チャールズ皇太子の元恋人であり、彼の心の拠り所となっている既婚女性です。
    • ダイアナにとっては常に結婚生活の影に潜む「第三者」であり、憎悪の対象となります。
    • 劇中では決して表舞台に出られない日陰の身としての葛藤も描かれますが、どこか毒っ気のあるしたたかな女性として存在感を放っています。
  • エリザベス女王 / バーバラ・カートランド:ジュディ・ケイ
    • イギリスの君主であるエリザベス女王と、ダイアナの義理の祖母でありロマンス小説家のバーバラ・カートランドの2役を演じています。
    • 王室の伝統を重んじ、ダイアナとチャールズのスキャンダルに頭を悩ませる厳格な女王としての顔と、ショッキングピンクのドレスを着てゴシップを語る派手なロマンス小説家としての顔を見事に使い分けています。

キャストの代表作品と経歴

  • ジーナ・デ・ヴァール(Jeanna de Waal)
    • イギリス出身のミュージカル女優で、ブロードウェイ版『キンキーブーツ』のローレン役や、『アメリカン・イディオット』などで実力を高く評価されてきた才能あふれる舞台人です。
    • 本作では不名誉なことにラジー賞の最低主演女優賞を受賞してしまいましたが、その歌唱力や舞台上でのカリスマ性に疑問の余地はなく、「彼女の才能をもってしてもこの脚本は救えなかった」と同情する演劇ファンが後を絶ちません。
  • ジュディ・ケイ(Judy Kaye)
    • 『オペラ座の怪人』のカルロッタ役や、『ナイスワーク・イフ・ユー・キャン・ゲット・イット』などで、過去に2度のトニー賞に輝いているブロードウェイの真のレジェンド女優です。
    • そんな生ける伝説が、本作でショッキングピンクの羽をまとって奇声を発し、ラジー賞の最低助演女優賞を獲得するというカオスな事態は、多くのミュージカルファンに衝撃と爆笑をもたらしました。
    • どんなトンチキな役柄でも大真面目に、かつ最高峰の技術で演じ切る彼女のプロ意識には、畏敬の念すら抱かせます。

まとめ(社会的評価と影響)

『ダイアナ:ザ・ミュージカル』は、真面目な伝記映画を期待して観た視聴者を絶望のどん底に突き落とし、B級映画のノリを愛する視聴者を歓喜の渦に巻き込んだ、極端な評価の分かれるカルト作品です。
Rotten Tomatoesの批評家スコアはわずか12%という壊滅的な数字であり、「ダイアナ妃に対する冒涜」「悪夢のような2時間」と散々な言われようでした。
ラジー賞での5部門制覇は、この作品がいかに「トンデモない出来」であったかを証明する公式な勲章となっています。
しかし、歴史的な失敗作として切り捨てるには、本作はあまりにも「エンターテインメントとしての見どころ」に溢れています。
一流の役者たちが本気で歌い、一流のダンサーが本気で踊り、一流の衣装デザイナーが完璧なドレスを用意しているにもかかわらず、脚本と演出の方向性が180度間違っているために、すべてが壮大なギャグに見えてしまうという奇跡的なバランスで成り立っているのです。
TikTokやTwitter(現X)などのSNSでは、劇中のシュールな歌詞やパパラッチの奇妙なダンスが切り抜かれて拡散され、「今年一番笑った」「友達とお酒を飲みながらツッコミを入れるのに最適な映画」として、新しい形の消費のされ方を確立しました。
王室の悲劇を不謹慎なまでにポップに消費してしまう本作の構造は、図らずも、生前のダイアナをパパラッチやタブロイド紙がこぞって消費し尽くした構図そのものを体現しているとも言えます。
ブロードウェイミュージカルの「光と影(あるいは狂気)」を知るための歴史的資料として、そして極上の「ヘイト・ウォッチング(ツッコミ目的での鑑賞)」の題材として、ぜひ一度はその目で確かめていただきたい問題作です。

作品関連商品

  • 『ダイアナ:ザ・ミュージカル』オリジナル・ブロードウェイ・キャスト・レコーディング(CD/配信)
    • ジーナ・デ・ヴァールをはじめとするオリジナルキャストの歌声が収録されたサウンドトラックです。
    • 映像のシュールさに気を取られがちですが、目を閉じて音楽だけを聴いてみると、デヴィッド・ブライアン(ボン・ジョヴィ)が手掛けた80年代ロック調のキャッチーなメロディラインは意外にも耳に残り、ついつい口ずさんでしまう妙な中毒性を持っています。
  • 映画『スペンサー ダイアナの決意』(Blu-ray/DVD)
    • 本作の対極にある、極めてシリアスで芸術性の高いダイアナ妃の伝記映画です。
    • クリステン・スチュワートがダイアナを演じ、アカデミー賞にノミネートされるほどの高い評価を獲得しました。ミュージカル版でバグってしまった歴史認識と情緒を正常に戻すための「口直し」として、セットでのご鑑賞を強く推奨します。
  • Netflix サブスクリプション
    • 本作は現在もNetflixの独占配信コンテンツとしてラインナップされており、いつでも世界中からこの狂気のミュージカルを目撃することが可能です。
    • 高画質で繰り広げられる衣装の早替えと、役者陣の渾身のパフォーマンスを堪能するためには必須のサービスとなっています。
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