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【徹底解説】日本未公開の問題作『Absolute Proof』の評価は?あらすじから炎上の理由、巨額訴訟の真相まで総まとめ

ドキュメンタリー
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概要

2021年にアメリカで公開(というか配信)され、瞬く間に世界中の主要プラットフォームから削除されるという前代未聞の事態を引き起こした政治ドキュメンタリー映画『Absolute Proof』(絶対的な証拠)。
日本では未公開の本作ですが、アメリカ政治の暗部と「ポスト・トゥルース(脱真実)」の時代を象徴する歴史的な怪作として、一部の映画ファンや政治ウォッチャーの間でカルト的な知名度を誇っています。
本作を制作し、監督・脚本・主演まで務めたのは、なんと映画人ではなく、アメリカの有名寝具メーカー「MyPillow(マイピロー)」のCEOであるマイク・リンデル氏。
彼はドナルド・トランプ元大統領の熱狂的な支持者であり、2020年のアメリカ大統領選挙において「大規模な不正が行われ、選挙結果が盗まれた」という陰謀論を強烈に主張するために、私財を投げ打ってこの2時間にも及ぶ映像作品を作り上げました。
しかし、「絶対的な証拠」と銘打たれたタイトルとは裏腹に、劇中で提示されるデータや識者の証言は客観的な根拠に乏しく、陰謀論の寄せ集めであるとして各方面から激しい非難を浴びました。
公開直後にYouTubeやVimeoといった動画共有サイトからコミュニティ・ガイドライン違反(選挙結果に関する虚偽情報の拡散)で即座にバン(削除)されるという異例の事態に発展。
さらに、劇中で「選挙不正に加担した」と名指しされた投票機メーカーのドミニオン社やスマートマティック社からは、13億ドル(約1400億円)を超える天文学的な金額の名誉毀損訴訟を起こされるという、リアルな大炎上を招きました。
極めつけは、その年の最低映画を決定する「第41回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)」において、ロバート・ダウニー・Jr主演の超大作『ドクター・ドリトル』などの強力なライバルたちを押し退け、ドキュメンタリー映画でありながら堂々の「最低作品賞」と「最低主演男優賞(マイク・リンデル)」の主要2部門を獲得するという歴史的快挙(?)を成し遂げたことです。
この記事では、エンタメ情報サイト「tvtomovie.com」の視点から、日本ではなかなか知る機会のない『Absolute Proof』のあらすじや特異な世界観、マイク・リンデルという人物のキャラクター性、そしてなぜこれほどまでに社会的な大バッシングを受けたのかという裏話までを徹底的に深掘りして解説していきます。
狂気と情熱が交錯する、現代アメリカの闇と笑いに迫りましょう。

オープニング

詳細(徹底解説)

あらすじと世界観

物語のテーマはただ一つ、「2020年のアメリカ大統領選挙において、本当はドナルド・トランプが圧勝していたが、巨大な陰謀によってジョー・バイデンに票が盗まれた」という強烈な主張です。
マイク・リンデルは、深夜の通販番組で自社の枕を売り込むのと同じ、いやそれ以上の異常な熱量でカメラの前に立ち、アメリカの民主主義がいかにして破壊されたかを語り始めます。
彼が展開する世界観の核となるのは、単なる国内の不正投票ではなく、「外国勢力による大規模なサイバー攻撃」という壮大なSFサスペンスのような設定です。
中国やイランのハッカーたちが、アメリカ国内の投票機(ドミニオン社などのシステム)に遠隔操作でアクセスし、アルゴリズムを操作してトランプの票をバイデンに書き換えた、というのが本作の主張する「真実」です。
劇中では、深夜に突突如としてバイデンの票が不自然に跳ね上がったとされるグラフ(いわゆる「vote dump」)や、サイバー攻撃の痕跡とされる謎のIPアドレスの羅列などが次々と画面に映し出されます。
しかし、それらのデータが具体的に何を意味しているのか、どのようにして検証されたのかという肝心な部分については、専門用語を早口でまくしたてるだけで、論理的な説明は一切放棄されています。
客観的な検証や反対意見は完全に排除されており、「信じる者だけが救われる」という極めて宗教的で閉鎖的な世界観が、2時間という長尺にわたって展開されていくのが本作の最大の特徴です。
映画というフォーマットを借りた、純度100%の陰謀論プロパガンダ映像だと言えるでしょう。

シーズン/章ごとの展開

本作はドキュメンタリー映画の体裁をとっていますが、その構成はまるで長時間のインフォマーシャル(テレビショッピング番組)のような独特のテンポで進行します。
第1幕は、マイク・リンデル本人の独白からスタートし、「アメリカが今、いかに未曾有の危機に直面しているか」を熱弁する感情的なセットアップが行われます。
彼が「この映画を見れば、100人中100人が真実に気づくはずだ」と豪語するシーンは、本作の過剰な自信を象徴しています。
第2幕では、リンデルが自称「サイバーセキュリティの専門家」や「軍事情報の元関係者」など、様々な肩書きを持つゲストたちと対談を行うインタビューパートが延々と続きます。
彼らは持参した分厚いバインダーや、パソコンの画面に映るカラフルなスプレッドシートを指差し、「これが中国から送られたパケットデータだ」などと主張しますが、素人目に見てもそれが「絶対的な証拠」であるとは到底思えないチープな代物です。
そして第3幕のクライマックスでは、すべての「証拠」が出揃った(と彼らは主張する)状況で、アメリカ国民に対して「立ち上がり、最高裁判所や軍に介入を求めよう」という強い扇動的なメッセージが発信されます。
論理の飛躍と感情論だけで最後まで突っ走り、視聴者を不安と怒りで煽り立てて幕を閉じるという、極めて危険で計算された構成となっています。

特筆すべき見どころ

本作の最大にして唯一の見どころは、主演であるマイク・リンデルの「一切の迷いがないピュアすぎる狂気」です。
彼は本当に、心の底から自分が「アメリカを救う歴史的英雄」であると信じて疑っておらず、その尋常ではない熱量と切迫した表情は、一流のハリウッド俳優にも出せない異様なオーラを放っています。
また、劇中で「動かぬ証拠」として提示されるハッキングの記録とされる映像が、映画『マトリックス』を模倣したような緑色の文字が滝のように流れるだけのチープなCGだったり、エクセルで作ったような簡素な表だったりする点は、ブラックコメディとしての異常な面白さを提供してくれます。
「これのどこが絶対的な証拠なんだ?」と、画面に向かってツッコミを入れ続けずにはいられない、ある種の「参加型エンターテインメント」としてのポテンシャルを秘めています。
ドキュメンタリーとしての説得力は皆無ですが、「陰謀論に完全に飲み込まれた人間の脳内世界を可視化した映像作品」として観れば、これほど恐ろしく、かつ滑稽な映画は他にはありません。

制作秘話・トリビア

本作の公開と同時に起きた現実世界での大炎上こそが、この映画の真の「本編」と言えるかもしれません。
リンデルは本作を動画共有プラットフォームで一斉に無料配信しましたが、YouTubeやVimeoは「選挙結果に関する虚偽情報の拡散」というコミュニティ・ガイドライン違反を理由に、配信から数時間でこれらの動画を即座に削除(バン)しました。
しかし、保守系のケーブルテレビ局であるOANN(One America News Network)は、この映画の放送を強行。
その際、OANNは放送開始前に「これから流れる内容はマイク・リンデル氏個人の見解であり、当社は一切の内容を保証せず、責任を負いません」という、前代未聞の長大な免責事項をわざわざ画面に表示させるという予防線を張りました。
放送局自身が「この内容はヤバい」と自覚していたことが丸わかりの防衛策でしたが、結局のところ、劇中で名指しされた投票機メーカーのドミニオン・ヴォーティング・システムズ社からは逃れられませんでした。
ドミニオン社は、リンデルとMyPillow社、そしてOANNらに対して、合計13億ドル(約1400億円)という天文学的な金額の損害賠償を求める名誉毀損訴訟を起こしたのです。
普通の企業経営者であれば青ざめる事態ですが、リンデルはこの訴訟を起こされたことすら「これで裁判の過程(ディスカバリー)を通じて、本物の証拠を合法的に開示できる!」と大喜びし、その後も『Scientific Proof』や『Absolute Interference』といった続編を次々と自費制作して発表し続けるという、常人には理解不能なホラー映画的展開を現実に見せつけました。

キャストとキャラクター紹介

  • マイク・リンデル:マイク・リンデル(本人)
    • 本作の監督、製作総指揮、脚本、そして常に喋り続ける主人公です。
    • 「マイピロー・ガイ」の愛称で親しまれたテレビ通販の人気者から一転、アメリカ最大の陰謀論のスポークスマンへと変貌を遂げた人物です。
    • トランプ大統領への絶対的な忠誠心を持ち、自社の莫大な利益を投げ打ってでも「真実」を啓蒙しようとする、ある意味で非常に純粋で暴走したドン・キホーテのようなキャラクターとして画面内を暴れ回ります。
  • メアリー・ファニング:メアリー・ファニング(本人)
    • 劇中に登場する主要な「専門家」の一人で、国家安全保障のジャーナリストを自称する人物です。
    • 選挙の投票データを改ざんできる「ハンマー」や「スコアカード」と呼ばれる架空のスーパーコンピュータープログラムが存在すると主張し、陰謀論のSF的な設定を補強する重要な役割を担っています。
    • 彼女の証言は、ITの専門家たちからは「技術的に全く意味を成さないデタラメの羅列」として一蹴されています。
  • 匿名のサイバー専門家たち
    • 顔にモザイクをかけたり、音声を変えたりして登場する謎のハッカーやデータアナリストたちです。
    • リンデルの主張を裏付けるための「中国からのIPアドレスのリスト」などを提供しますが、その出所や彼ら自身の身元については一切明かされず、怪しさを極限まで高めるスパイスとなっています。

キャストの代表作品と経歴

  • マイク・リンデル
    • 彼はもともと映画人でも政治家でもなく、アメリカの寝具メーカー「MyPillow」の創業者にしてCEOです。
    • 若い頃は深刻なクラック・コカインの依存症に苦しみ、すべてを失う寸前まで追い詰められましたが、そこから見事に立ち直り、独自の特許を持つ枕を開発して大成功を収めたという、まさにアメリカンドリームを体現したような感動的な経歴の持ち主です。
    • 自ら出演する深夜の通販番組での親しみやすいキャラクターが大ウケし、国民的な知名度を獲得しましたが、その情熱と莫大な資金力がすべて「選挙不正の陰謀論」へと向かってしまったことが、彼の人生の最大の悲劇(あるいは喜劇)となっています。
    • 映画俳優としてのキャリアはありませんが、本作での「常軌を逸した熱演」が評価(?)され、見事に第41回ラジー賞の最低主演男優賞を獲得し、ロバート・ダウニー・Jrらハリウッドのスターたちと肩を並べるという奇跡を起こしました。

まとめ(社会的評価と影響)

ドキュメンタリー映画『Absolute Proof』は、映画としての芸術性や娯楽性、そしてジャーナリズムとしての客観性や信憑性において、文字通り「絶対的に価値がゼロ」であると社会から断定された作品です。
ラジー賞での最低作品賞の受賞は、ただ映画としての出来が悪いからではなく、民主主義の根幹を揺るがす危険な虚偽情報を、あたかも真実であるかのように垂れ流したことに対する、ハリウッドと映画界からの強烈な「拒絶」のメッセージでもありました。
13億ドルという巨額の訴訟や、プラットフォームからの徹底的な追放劇は、言論の自由とプラットフォームの責任、そしてフェイクニュースがもたらす現実世界の被害という、現代社会が抱える最も深刻な問題を浮き彫りにしました。
しかし、この映画がいかに酷評され、論破されようとも、マイク・リンデルの熱狂的なフォロワーや一部の保守層の間では、いまだに「検閲された不都合な真実」として神格化されているという恐ろしい現実があります。
本作は、SNSのアルゴリズムが生み出した「エコーチェンバー(自分と同じ意見しか聞こえない空間)」に長期間閉じ込められた人間が、どれほど強固で歪んだ現実認識を作り上げてしまうのかを観察するための、極めて貴重な「狂気の標本」です。
「ポスト・トゥルース(脱真実)」の時代において、プロパガンダがいかにして作られ、どのように熱狂を生み出していくのかを知るための究極の反面教師として、映画史というよりも社会学の歴史に永遠にその名を刻むべき怪作だと言えるでしょう。

作品関連商品

  • MyPillow(マイピロー) クラシック枕
    • マイク・リンデルがその人生を懸けて開発し、彼に莫大な富と映画制作の資金をもたらした、同社の看板商品である特許取得済みの枕です。
    • 独自のウレタンフォームを使用しており、寝心地の良さには定評があります。映画のあまりのデタラメさに頭痛がしてきたときは、この枕でゆっくりと眠り、アメリカ社会の闇を忘れるのが一番の解決策かもしれません。
  • マイク・リンデル著『What Are the Odds? From Crack Addict to CEO』(自伝書籍)
    • リンデル自身が執筆した、コカイン依存症のどん底から大企業のCEOへと這い上がった壮絶な半生を綴った自伝です。
    • 陰謀論に染まる前の、彼の本来の人間としての魅力や、異常なまでのバイタリティの源泉を知ることができる一冊であり、なぜ彼がここまで極端な行動に走る人物になったのかを分析するための重要な心理的資料となります。
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