YouTubeで「またの名をグレイス」

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またの名をグレイス の概要

「またの名をグレイス」(原題: Alias Grace)は、カナダの著名な作家マーガレット・アトウッドによる同名の歴史小説を原作とした、全6話構成のテレビミニシリーズです。

この作品は、NetflixとカナダのCBC(カナダ放送協会)によって共同製作され、2017年に配信および放送されました。

物語の舞台は19世紀のカナダ。

若く貧しいアイルランド移民の女性、グレイス・マークスが、彼女の雇い主であるトーマス・キニアと、その家政婦(であり愛人)のナンシー・モンゴメリーを殺害した容疑で逮捕されるところから始まります。

共犯とされる馬手のジェームズ・マクダーモットは絞首刑になりますが、グレイスは終身刑を宣告され、長年服役しています。

物語は、グレイスが収監されてから十数年後、彼女の恩赦を支援する人々によって雇われた若き精神科医、サイモン・ジョーダン医師が、彼女の精神鑑定を行うために面会を重ねる、という形で進行していきます。

ジョーダン医師は、グレイスが本当に残忍な殺人者なのか、それとも事件当時の記憶を失っているという彼女の主張通り、心神喪失状態だったのか、あるいは不当に罪を着せられた犠G者なのかを探ろうとします。

グレイスが自らの壮絶な半生(アイルランドからの苦難に満ちた移民、家庭内での虐待、劣悪な環境での奉公生活)を静かに語るにつれ、視聴者とジョーダン医師は、何が真実で何が嘘なのか、その境界が曖昧になっていく感覚に陥ります。

この作品は、単なる殺人ミステリーではなく、19世紀の厳格な階級社会や性差別の中で、女性がいかに無力で過酷な状況に置かれていたかを描く社会派ドラマでもあり、深い心理描写が特徴となっています。

またの名をグレイス のオープニング

「またの名をグレイス」は、近年の多くのNetflix作品やミニシリーズと同様に、毎回決まった長尺のオープニングシーケンス(OP映像)を持たない構成になっています。

その代わり、エピソードの冒頭は静かに始まり、視聴者を即座に19世紀の重厚で陰鬱な雰囲気へと引き込みます。

作品の世界観を最もよく表しているのは、配信前に公開された公式の予告編(トレーラー)です。
予告編では、主人公グレイス・マークスの「私はかつて、殺人犯として有名になりました」という印象的な独白から始まります。

美しいカナダの風景とは裏腹に、ろうそくの光が揺れる薄暗い部屋、囚人服姿のグレイス、彼女を疑いと好奇の目で見る周囲の人々、そして彼女の記憶にフラッシュバックする暴力的なイメージが断片的に挿入されます。

グレイスの冷静な語り口と、彼女に「真実」を求めるジョーダン医師の姿が対照的に描かれ、この物語が単純な告白ではなく、複雑な心理戦であることを予感させます。

音楽もまた、不安を掻き立てるようなミニマルなものが使用されており、作品全体のサスペンスフルなトーンを決定づけています。

またの名をグレイス の詳細

「またの名をグレイス」は、『ハンドメイズ・テイル(侍女の物語)』と並び、現代文学の巨匠マーガレット・アトウッドの代表作の一つである同名小説(1996年刊行)を映像化した作品です。

原作小説は、ブッカー賞の最終候補になるなど、世界的に非常に高い評価を受けています。
このドラマ化プロジェクトは、脚本をカナダの著名な女優であり脚本家でもあるサラ・ポーリーが担当し、監督は『アメリカン・サイコ』などで知られるメアリー・ハロンが務めるという、強力な女性クリエイター陣によって実現しました。

サラ・ポーリーは、原作の複雑な時間軸とグレイスの曖昧な内面を、見事に6時間(全6話)の映像作品として再構築しました。
物語の核となるのは、1843年にカナダで実際に起きた「トーマス・キニアとナンシー・モンゴメリー殺人事件」です。

グレイス・マークスとジェームズ・マクダーモットは実在の人物であり、当時、この事件はその残虐性と、若く美しい女性であるグレイスが関与したという点で、世間の大きな注目を集めました。

アトウッドとポーリーは、この史実の記録(当時の新聞記事、裁判記録、グレイス自身の矛盾する証言など)の「隙間」や「矛盾」に着目し、そこにフィクションとしての想像力を加えて、グレイス・マークスの内面世界を深く掘り下げました。

特に作品全体を貫くテーマとして「キルト(パッチワーク)」が象徴的に用いられます。

グレイスは面会中に常に裁縫(キルト作り)をしており、異なる布切れを縫い合わせて一つの模様を作るように、彼女の断片的で矛盾する記憶の断片を、ジョーダン医師(そして視聴者)がどう縫い合わせて「グレイス・マークス」という人物像を理解しようとするのか、というメタファーになっています。

また、19世紀における精神医学の未熟さや、催眠術、心霊主義といった当時の流行も物語に絡み、グレイスの「記憶喪失」が何を意味するのか、多層的な解釈を可能にしています。

またの名をグレイス のキャスト

本作の重厚な心理ドラマは、実力派のキャスト陣、特に主人公グレイス・マークスを演じたサラ・ガドンの圧倒的な演技によって支えられています。

  • グレイス・マークス (Grace Marks): サラ・ガドン (Sarah Gadon)
  • サイモン・ジョーダン医師 (Dr. Simon Jordan): エドワード・ホルクロフト (Edward Holcroft)
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  • ナンシー・モンゴメリー (Nancy Montgomery): アンナ・パキン (Anna Paquin)
  • ジェームズ・マクダーモット (James McDermott): カー・ローガン (Kerr Logan)
  • ジェレマイア・ポンテリ (Jeremiah Pontelli) / ジェローム・デュポン医師: ザカリー・リーヴァイ (Zachary Levi)
  • メアリー・ホイットニー (Mary Whitney): レベッカ・リディアード (Rebecca Liddiard)
  • トーマス・キニア (Thomas Kinnear): ポール・グロス (Paul Gross)
  • デヴィッド・クローネンバーグ (David Cronenberg) – (リベレンド・ヴェリンガー役でカメオ出演)

主人公のグレイスを演じたサラ・ガドンは、無邪気な少女の顔、虐げられた犠G者の顔、そして時折見せる冷徹で計算高い(かもしれない)表情を巧みに使い分け、グレイスが「天使」なのか「悪魔」なのか、最後まで視聴者を翻弄し続けます。

また、彼女の親友であったメアリー・ホイットニー役のレベッカ・リディアードも、グレイスのその後の人格形成に大きな影響を与える重要な役どころを鮮烈に演じています。

意外なキャスティングとしては、『シャザム!』などで知られるザカリー・リーヴァイが、グレイスの前に現れる謎めいた行商人ジェレマイアを演じている点や、映画監督のデヴィッド・クローネンバーグがグレイスの恩赦を審議する委員の一人として出演している点も注目されます。

キャストの代表作品名

「またの名をグレイス」で複雑な人物像を見事に演じきった主要キャストの、他の代表作品をご紹介します。

サラ・ガドン (Sarah Gadon)

  • 『危険なメソッド』 (A Dangerous Method / 2011年) – デヴィッド・クローネンバーグ監督作品。
  • 『複製された男』 (Enemy / 2013年) – ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。
  • 『ドラキュラZERO』 (Dracula Untold / 2014年) – ミレーナ役。
  • 『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』 (A Royal Night Out / 2015年) – 主演・エリザベス王女役。

エドワード・ホルクロフト (Edward Holcroft)

  • 『キングスマン』 (Kingsman: The Secret Service / 2014年) – チャーリー・ヘスケス役。
  • 『キングスマン: ゴールデン・サークル』 (Kingsman: The Golden Circle / 2017年) – チャーリー・ヘスケス役。
  • 『チャタレイ夫人の恋人』 (Lady Chatterley’s Lover / 2022年) – Netflix作品。

アンナ・パキン (Anna Paquin)

  • 『ピアノ・レッスン』 (The Piano / 1993年) – 史上2番目の若さ(当時11歳)でアカデミー助演女優賞を受賞。
  • 『X-MEN』シリーズ (2000年~) – ローグ役。
  • 『トゥルーブラッド』 (True Blood / 2008-2014年 / TVシリーズ) – 主演・スーキー・スタックハウス役。

またの名をグレイス のまとめ(社会的評価・評判)

「またの名をグレイス」は、配信開始と同時に、批評家から絶賛をもって迎えられました。

海外のレビュー集積サイト「Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)」では、批評家スコアが99%という驚異的な高評価を獲得し、「Fresh(新鮮)」認定を受けています。

多くの批評家が、マーガレット・アトウッドの複雑な原作を、脚本家のサラ・ポーリーと監督のメアリー・ハロンが、原作の精神に忠実でありながらも見事な映像作品へと昇華させたと称賛しました。

特に、サラ・ガドンの演技は「キャリア史上最高」と絶賛され、彼女が演じるグレイスの曖昧さ、脆弱さ、そして底知れぬ強さが、作品の品質を決定づけたと評価されています。

視聴者や批評家からは、単なる歴史ミステリーの枠を超え、現代にも通じるフェミニズム的なテーマ(女性の社会的地位、性的搾取、語る権利)を鋭く描いた作品であると分析されました。

グレイスが語る「真実」は、彼女が生き延びるために周囲の男性(あるいは社会)が「聞きたい」と期待する物語を語っているだけではないのか、という問いかけは、視聴者に重くのしかかります。

物語の終盤、特に最終話で示唆される衝撃的な「答え」(グレイスが多重人格であった可能性や、親友メアリー・ホイットニーの霊に憑依されていた可能性)については、視聴者の間で活発な議論と考察が巻き起こりました。

明確な答えを提示せず、解釈を視聴者に委ねるエンディングは、実話ベースの物語でありながら、文学的な余韻を強く残すことに成功しています。

『ハンドメイズ・テイル』と共に、マーガレット・アトウッド作品の映像化ブームを牽引し、リミテッドシリーズ(ミニシリーズ)の傑作の一つとして、今なお高く評価され続けている作品です。

またの名をグレイス の作品関連商品

「またの名をグレイス」は、その高い評価にもかかわらず、Netflix配信がメインのミニシリーズであるため、関連商品の展開は限定的です。

視聴や作品世界への理解を深めるためには、以下のものが中心となります。

原作小説

このドラマの根幹であり、最も重要な関連商品です。

ドラマでは描ききれなかったグレイスのさらに詳細な内面の独白や、19世紀カナダの社会背景が緻密に描かれています。

ドラマを観て衝撃を受けた人にとっては、必読の書と言えます。

  • 『またの名をグレイス(上・下)』 (マーガレット・アトウッド 著 / 佐藤アヤ子 訳 / 岩波書店、または早川書房などから文庫版も)

DVD/Blu-ray

本作はNetflixオリジナル共同製作作品であり、Netflixのプラットフォーム外での物理メディア(DVDやBlu-ray)の販売は、特に日本国内では行われていないか、非常に限定的です。

作品を視聴する主な方法は、Netflixのサブスクリプションサービスを利用することになります。

サウンドトラック

ジェフ・ダナ (Mychael Danna and Jeff Danna) によって作られた、ミニマルで不穏な雰囲気を持つオリジナル・サウンドトラックは、デジタル配信(Apple Music, Spotifyなど)で聴くことが可能です。

作品のあの独特な緊張感を音楽で追体験できます。

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