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【徹底解説】映画『アラン・スミシー・フィルム』は最大の皮肉?あらすじ・結末から豪華カメオとラジー賞の裏側まで総まとめ

コメディー
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【徹底解説】映画『アラン・スミシー・フィルム』は最大の皮肉?あらすじ・結末から豪華カメオとラジー賞の裏側まで総まとめ

概要:ハリウッドのタブーを笑い飛ばすつもりが、現実の悲劇に?前代未聞の怪作

映画『アラン・スミシー・フィルム』(原題:An Alan Smithee Film: Burn Hollywood Burn)は、1997年に公開されたアメリカのコメディ映画です。
ハリウッド映画業界において、監督が「自分の意図した作品に仕上がらなかった(プロデューサーの不当な介入など)」という理由でクレジットから名前を外したい場合に、米国監督組合(DGA)が公式に認めていた架空の偽名「アラン・スミシー(Alan Smithee)」を題材にしています。
脚本を手掛けたのは、『氷の微笑』や『ショーガール』などで知られ、当時ハリウッドで最も高額なギャラを稼ぎ出していた敏腕脚本家のジョー・エスターハスです。
メガホンを取ったのは、『ある愛の詩』などの名作で知られるベテラン監督、アーサー・ヒラーでした。
物語は、運悪く本名が「アラン・スミシー」である新米監督が、超大作アクション映画のメガホンを任されるものの、プロデューサーたちの横暴によって作品をメチャクチャにされ、自分の名前をクレジットから外そうとするという、ハリウッドの腐敗を痛烈に皮肉ったモキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)形式のコメディです。
劇中劇として製作されるアクション大作『Trio』の主演俳優として、シルヴェスター・スタローン、ウーピー・ゴールドバーグ、ジャッキー・チェンという超豪華なスターたちが「わがままな本人役」でカメオ出演していることでも大きな話題を呼びました。
しかし、本作の最大の見どころであり、映画史に残る伝説となったのは、映画のストーリーそのものではなく、「現実の制作現場で起きた悲劇」にあります。
なんと、監督のアーサー・ヒラーが、脚本・製作を兼任していたジョー・エスターハスの強引な再編集に激怒し、「こんな映画に自分の名前を載せたくない!」と米国監督組合に抗議した結果、本当に監督名が「アラン・スミシー」になってしまったのです。
映画のテーマ通りの騒動が現実で起きてしまったこの作品は、公開されるや否や批評家から総スカンを食らい、興行的にも大惨敗を喫しました。
結果として、1997年の第18回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)において、「最低作品賞」「最低脚本賞」「最低新人賞(ジョー・エスターハス)」など計5部門を総なめにするという不名誉な歴史を刻みました。
本記事では、フィクションと現実が皮肉な形でリンクしてしまった映画史における伝説の怪作『アラン・スミシー・フィルム』のあらすじや見どころ、豪華スターたちの悪ふざけ、そしてラジー賞に輝いた悲劇の裏側を徹底的に深掘りして解説していきます。

ハリウッドを燃やせ!豪華スターが集結した狂気の予告編

詳細(徹底解説):名前を奪われた監督の逆襲と、映画業界のドタバタ劇

あらすじと世界観:本名が「アラン・スミシー」という最大の不運

物語は、ハリウッドの映画業界を追ったドキュメンタリー番組という設定で進行していきます。
主人公のアラン・スミシーは、長年の夢であった長編映画の監督デビューをついに飾ることになったイギリス出身の真面目な映像クリエイターです。
彼が任されたのは、製作費2億ドルという途方もない予算が投じられた超大作アクション映画『Trio』でした。
この映画には、シルヴェスター・スタローン、ウーピー・ゴールドバーグ、ジャッキー・チェンという、普通なら絶対に同じ画面に収まらないような3人のスーパースターが主演として起用されていました。
しかし、いざ撮影が始まると、アランの理想とする映画作りはもろくも崩れ去ります。
傲慢なプロデューサーのジェームズ・エドモンズは、アランの意見を一切無視して映画を自分の都合のいいように改変し、大スターたちは「自分だけを目立たせろ」とそれぞれ勝手な要求を突きつけて現場を大混乱に陥れます。
完成した映画は、ストーリーの辻褄が全く合わず、過剰な爆発とアクションだけが連続する、目も当てられないような大失敗作になっていました。
絶望したアランは、「こんなひどい映画に自分の名前をクレジットされたくない」と激怒し、米国監督組合(DGA)に監督名を偽名の「アラン・スミシー」に変更するよう申し出ます。
ところが、彼自身の本名が偶然にも「アラン・スミシー」であったため、組合の規定により「すでに本名がアラン・スミシーである以上、偽名のアラン・スミシーを使用することはできない」という、まるでコントのような理由で申請を却下されてしまいます。
映画が公開されれば、自分の名前が映画史に残る最悪の駄作の監督として永遠に刻まれてしまう。
追い詰められたアランは、ついに狂気の行動に出ます。
彼は映画のマスターネガフィルムをスタジオの金庫から盗み出し、フィルムを人質にしてハリウッドのシステム全体に対する孤独な戦争を宣言するのです。
彼はフィルムと共に逃亡し、映画会社は莫大な損害を防ぐために彼を血眼になって追いかけ、メディアはこの前代未聞の騒動を連日大々的に報じます。
果たして、アランは無事にフィルムを燃やし、自分の名誉を守ることができるのでしょうか。
そして、このドタバタ劇の裏に隠されたハリウッドの真実とは何なのでしょうか。

特筆すべき見どころ:自虐ネタ満載の豪華スターたちと、毒のある業界風刺

本作の最大の魅力は、ハリウッドの内情を知り尽くしたジョー・エスターハス脚本ならではの、毒気に満ちた業界風刺とメタ・ジョークの数々です。
映画会社の重役たちが「観客はバカだから爆発さえあれば喜ぶ」と平然と語るシーンや、エージェントがスターのギャラを釣り上げるために無茶苦茶な交渉を行うシーンなど、映画ファンが薄々感じているハリウッドの暗部を、過剰なまでのブラックコメディとして描き出しています。
さらに見逃せないのが、劇中劇『Trio』に出演するシルヴェスター・スタローン、ウーピー・ゴールドバーグ、ジャッキー・チェンの3人が、完全に「嫌なヤツ」としての本人役を嬉々として演じている点です。
スタローンは自分の筋肉がいかに美しく映るかばかりを気にし、ウーピーはギャラの額と待遇への文句を言い続け、ジャッキーは言葉の壁を理由にワガママを貫きます。
当時のハリウッドのトップスターたちが、自分たちのパブリックイメージを逆手に取って自虐的なギャグを連発する姿は、この映画の中で最も笑える最高のハイライトとなっています。
また、ドキュメンタリー形式を採用しているため、インタビュー映像を細かく繋ぎ合わせるテンポの良さがあり、次々と登場する業界人の狂ったコメントが映画をノンストップで盛り上げていきます。

制作秘話・トリビア:フィクションが現実を侵食した、映画史に残る大事件

本作が「カルト映画」として歴史に名を残すことになった最大の理由は、映画のストーリーそのものが現実の制作現場で起きてしまったという、前代未聞の事件にあります。
ベテラン監督のアーサー・ヒラーは、本作の撮影を終えた後、自分の意図したコメディとして編集作業を進めていました。
しかし、脚本家でありプロデューサーでもあったジョー・エスターハスが、ヒラーの編集版を面白くないと一蹴し、スタジオの権力を使って勝手に再編集を行ってしまったのです。
エスターハスは、自分が書いた毒舌のセリフや過激なジョークを強調するため、ヒラーが意図していた人間ドラマの部分を容赦なく切り捨てました。
これに激怒したアーサー・ヒラー監督は、「私の映画が奪われた!こんな作品に自分の名前をクレジットすることは絶対にできない!」と主張し、米国監督組合に抗議しました。
そして皮肉なことに、ヒラー監督の抗議は正式に認められ、本作の監督クレジットは本当に「アラン・スミシー」になってしまったのです。
「アラン・スミシーという名前を外したい監督の映画」を撮った監督が、結果的に「アラン・スミシー」名義になってしまうという、マトリョーシカのような多重構造の皮肉は、当時の映画業界で大きな笑い(と呆れ)の種となりました。
この騒動があまりにも有名になりすぎたため、米国監督組合は「アラン・スミシー」という偽名が世間に広く認知されてしまったと判断し、2000年にこの偽名の使用を公式に廃止することになります。
つまり、本作は「アラン・スミシー」という名前をハリウッドから完全に葬り去ってしまった、歴史的な転換点となった作品でもあるのです。

キャストとキャラクター紹介:狂気の映画業界で踊る人々

アラン・スミシー:エリック・アイドル / 吹替:安原義人など

長年の夢だった映画監督デビューを果たしたものの、運悪く名前が「アラン・スミシー」だったばかりに最大の悲劇に見舞われる気の毒なイギリス人監督です。
芸術的な映画を作りたいという純粋な情熱を持っていますが、ハリウッドの巨大な資本主義とスターたちのエゴの前に成す術もなく潰されてしまいます。
最終的にフィルムを盗んで逃亡するという狂行に走りますが、その行動は映画ファンからは妙な共感を呼びます。
イギリスの伝説的コメディグループ「モンティ・パイソン」のメンバーであるエリック・アイドルが、哀愁漂う間抜けな主人公を見事に演じています。

ジェームズ・エドモンズ:ライアン・オニール / 吹替:小川真司など

映画『Trio』を製作する、傲慢で金儲け至上主義の大物プロデューサーです。
監督であるアランの意見を完全に無視し、映画をただのド派手なアクションショーに変えてしまいます。
フィルムを盗まれた後は、会社を守るためにあの手この手でアランを追い詰めます。
『ある愛の詩』や『ペーパー・ムーン』で一世を風靡したライアン・オニールが、嫌味で俗物的なプロデューサーをノリノリで演じています。

本人役:シルヴェスター・スタローン / 吹替:玄田哲章など

劇中劇『Trio』の主演の一人として、本人役で登場します。
アクション映画の帝王としての自負が強すぎるあまり、他の俳優よりも自分を目立たせることや、筋肉の映り方ばかりを気にするという、見事な自虐ギャグを披露しています。
スタローンのコメディセンスの高さが遺憾なく発揮されており、出番は少ないものの強烈なインパクトを残します。

本人役:ウーピー・ゴールドバーグ / 吹替:小宮和枝など

同じく『Trio』の主演の一人として本人役で登場します。
スタローンやジャッキーに対抗意識を燃やし、自分の出番を増やすようにエージェントを通じて無茶な要求を繰り返す、ステレオタイプな「わがまま女優」を見事に演じきっています。
彼女の放つ毒舌と存在感は、映画のブラックなトーンに完璧にマッチしています。

本人役:ジャッキー・チェン / 吹替:石丸博也など

『Trio』の3人目の主演として本人役でカメオ出演しています。
英語が不自由であることを逆手に取り、周囲の混乱をよそに飄々とした態度でマイペースを貫く姿が笑いを誘います。
ハリウッドにおけるアジア人スターの扱われ方を、彼自身が皮肉交じりに演じている点は非常に興味深いです。

ブラザーズ・ブラザーズ(クーリオ、チャックD) / 吹替:高木渉、大塚明夫など

アランが逃亡中に知り合い、彼を助けることになる映像制作会社を経営する黒人の若者たちです。
有名なラッパーであるクーリオと、パブリック・エネミーのチャックDが演じており、ハリウッドの白人中心主義を痛烈に批判するメッセージを放ちます。

キャストの代表作品と経歴:コメディ界とアクション界の巨星たち

主人公を演じたエリック・アイドルは、イギリスの国民的コメディ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』のメンバーとして世界的な名声を確立したコメディ界のレジェンドです。
彼のシニカルで知的なユーモアセンスは、本作の皮肉に満ちた世界観を根底から支えています。
大物プロデューサー役のライアン・オニールは、1970年の大ヒット恋愛映画『ある愛の詩』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた、70年代を代表する二枚目俳優です。
本作のメガホンを取ったアーサー・ヒラー監督とは、『ある愛の詩』以来の因縁深い再タッグとなりましたが、結果的に映画史に残る大惨事となってしまったことは何とも皮肉な巡り合わせです。
本人役で登場したシルヴェスター・スタローン(『ロッキー』『ランボー』)、ウーピー・ゴールドバーグ(『天使にラブ・ソングを…』『ゴースト/ニューヨークの幻』)、ジャッキー・チェン(『ポリス・ストーリー』『ラッシュアワー』)の3人は、説明不要の世界的スーパースターです。
彼らがこのような「ラジー賞確定」のような悪ふざけ映画に喜んで出演した事実は、当時のハリウッドが持っていた恐れを知らないエネルギーと、スターたちの懐の深さを証明しています。

まとめ(社会的評価と影響):ラジー賞映画の到達点にして、奇跡のドキュメンタリー

映画『アラン・スミシー・フィルム』は、映画の興行的な評価や批評家のレビューという観点から見れば、疑いようのない「大失敗作」です。
1997年のラジー賞において最低作品賞を含む5部門を独占したことは、本作がどれほど観客や批評家を呆れさせたかの証明でもあります。
ジョー・エスターハスの脚本は、ハリウッドの内部を知る者にとっては爆笑の連続かもしれませんが、一般の観客にとっては「内輪ウケの過ぎる下品なジョーク」として受け取られてしまいました。
しかし、この映画の真の価値は、スクリーンに映し出される映像そのものではなく、その「背景に存在する現実のドラマ」にあります。
ハリウッドのシステムを痛烈に批判しようとした映画が、結果的にそのシステム(プロデューサーの横暴)によって破壊され、監督が本当に「アラン・スミシー」を名乗らざるを得なくなったという事実は、いかなるフィクションよりも劇的で、喜劇的で、そして悲劇的です。
本作は、映画製作という行為がどれほど巨大なエゴと資本主義にまみれているかを、自らの犠牲をもって証明してしまった「究極のメタ映画」と言えるでしょう。
「アラン・スミシー」という長年続いた偽名の歴史にピリオドを打った歴史的価値も踏まえ、本作は単なる駄作という評価を超え、映画ビジネスの闇を知るための必修科目として、今なお一部の映画ファンから熱狂的な支持と愛のこもった嘲笑を集め続けています。

作品関連商品:ハリウッドの暗部を笑い飛ばすマストアイテム

  • 『アラン・スミシー・フィルム』DVD:すでに廃盤となっていることが多く、中古市場でもプレミア価格がつくことがあるカルトアイテムです。スタローンやジャッキーの悪ノリ演技を高画質で確認できる貴重なパッケージです。
  • ジョー・エスターハス著の関連書籍:本作の脚本家であり、この騒動の最大の戦犯とも言える彼が、ハリウッドの裏側やスターたちの暴露話を赤裸々に綴った自伝的エッセイなどは、本作の背景を深く知るための最高の副読本です。
  • 映画『ある愛の詩』Blu-ray / DVD:アーサー・ヒラー監督とライアン・オニールがタッグを組み、世界中を涙で包んだ映画史に残る大傑作です。この美しい恋愛映画を作った二人が、なぜ数十年後に『アラン・スミシー・フィルム』という怪作に行き着いてしまったのか、その落差を楽しむのも一興です。
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