PR

【徹底解説】映画『ブロンド』の評価はなぜ真っ二つ?あらすじから炎上の理由、アナ・デ・アルマスの熱演まで総まとめ

ヒューマンドラマ
この記事は約12分で読めます。

【徹底解説】映画『ブロンド』の評価はなぜ真っ二つ?あらすじから炎上の理由、アナ・デ・アルマスの熱演まで総まとめ

概要

2022年にNetflixで独占配信され、全世界の映画ファンと批評家を巻き込んで凄まじい賛否両論の嵐を巻き起こした映画『ブロンド』(原題:Blonde)。
本作は、20世紀最大のセックス・シンボルであり、永遠のハリウッド・アイコンとして今なお愛され続ける女優、マリリン・モンローの生涯を題材にした作品です。
しかし、本作は単なる史実を忠実になぞったオーソドックスな伝記映画ではありません。
アメリカの巨匠作家ジョイス・キャロル・オーツが2000年に発表し、ピュリッツァー賞の最終候補にもなった同名のベストセラー小説を原作としており、事実とフィクションを大胆に交織させた「想像上の伝記」として描かれています。
監督と脚本を務めたのは、『ジェシー・ジェームズの暗殺』や『ジャッキー・コーガン』などで知られる鬼才アンドリュー・ドミニク。
彼はこのプロジェクトの実現に10年以上もの歳月を費やし、マリリン・モンローという輝かしい偶像の裏側に隠された、ノーマ・ジーンという一人の女性の果てしない孤独とトラウマを、極めて生々しく、時に残酷なまでの視線で映像化しました。
その結果、Netflixオリジナルの映画としては史上初となる「NC-17指定(17歳以下鑑賞禁止)」という非常に厳しいレイティングを受けることになります。
過激な性描写やトラウマをえぐるような暴力的なシーンの連続に、配信直後からSNSやメディアでは「マリリンに対する死体蹴りだ」「女性搾取を批判しながら映画自体が搾取をしている」といった猛烈な批判が殺到し、大炎上状態となりました。
その年の最低映画を決める「第43回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)」では、見事に最低作品賞と最低脚本賞を受賞するという不名誉な結果に終わります。
しかしその一方で、主人公マリリン・モンローを見事に演じ切ったアナ・デ・アルマスの神憑り的なパフォーマンスは誰もが認めざるを得ないほど圧倒的であり、彼女は本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされるという歴史的な快挙を成し遂げました。
最低映画賞の作品賞を受賞した映画の主演俳優が、最高の栄誉であるオスカーにノミネートされるという、映画史においても極めて稀な「評価の分断」を引き起こした本作。
この記事では、エンタメ情報サイト「tvtomovie.com」の視点から、映画『ブロンド』のあらすじや痛烈なメッセージ性、特異な映像表現、そして賛否が真っ二つに分かれた炎上の真相までを徹底的に深掘りして解説していきます。

オープニング

詳細(徹底解説)

あらすじと世界観

物語の始まりは、1930年代のロサンゼルス。
本名ノーマ・ジーン・ベイカーは、精神を病んだ未婚の母グラディスから日常的に虐待を受け、父親の顔を知らないまま孤独で過酷な幼少期を過ごしていました。
母が精神病院に収容されたことで孤児院へと送られたノーマは、「いつか父親が迎えに来てくれる」という儚い幻想だけを心の支えにして成長していきます。
やがて美しく成長した彼女は、ハリウッドの映画スタジオの目に留まり、スタジオの重役からの性的搾取(キャスティング・カウチ)と引き換えにスクリーンデビューを果たします。
彼女は自らの過去と決別するため、そして大衆が求める無垢でセクシーな偶像を演じるために、「マリリン・モンロー」という完璧なペルソナ(仮面)を作り上げました。
マリリンとしての名声が世界的に高まれば高まるほど、その内側にいる「ノーマ・ジーン」の孤独感は深まり、彼女の精神を激しく蝕んでいきます。
本作の世界観は、華やかなハリウッド黄金期の裏側に渦巻く、徹底的な男性中心主義とミソジニー(女性嫌悪)の地獄絵図として描かれています。
彼女に群がる男性たちは、元スポーツ選手の夫も、インテリの劇作家の夫も、果てはアメリカ合衆国大統領でさえも、彼女の本当の姿(ノーマ・ジーン)を愛することはなく、ただ「マリリン・モンローという所有物」として彼女を消費していきます。
現実と妄想、過去のトラウマと現在のフラッシュバックがシームレスに交錯する悪夢のような映像世界は、観る者の精神を激しく揺さぶり、彼女の感じていた窒息しそうな閉塞感を疑似体験させる作りとなっています。

シーズン/章ごとの展開

本作は時系列に沿って進行しますが、マリリン・モンローの人生のターニングポイントとなる「男性たちとの関係」を軸にした章立てのような構成をとっています。
序盤は、母グラディスからの狂気じみた虐待と、写真の中にしか存在しない「架空の父親」への執着が描かれるトラウマの形成期です。
中盤に入ると、ハリウッドでのブレイクと共に、チャールズ・チャップリン・Jr(キャス)とエドワード・G・ロビンソン・Jr(エディ)という二人の二世俳優との、ポリアモリー(複数恋愛)的な奇妙で退廃的な関係が描かれます。
その後、元メジャーリーガーである「元アスリート(ジョー・ディマジオ)」との結婚生活が始まりますが、彼の病的な嫉妬と家庭内暴力によって、ノーマの心はさらに深く傷つけられていきます。
物語の後半では、ニューヨークの知識人である「劇作家(アーサー・ミラー)」と再婚し、知的な刺激と平穏な生活を手に入れたかのように見えますが、度重なる流産や中絶のトラウマが彼女を完全に狂気の世界へと引きずり込みます。
そして終盤、ケネディ大統領と思われる「大統領」とのホテルでのあまりにもショッキングで屈辱的な逢瀬を経て、薬物依存の果てに孤独な死を迎えるまでの壮絶な転落劇が、息を呑むような映像美とともに残酷に描き出されます。

特筆すべき見どころ

本作の最大の見どころは、何と言っても映像表現の圧倒的な特異性と美しさにあります。
アンドリュー・ドミニク監督は、世界中に残されているマリリン・モンローの有名な報道写真や映画のワンシーン(『七年目の浮気』の地下鉄の通気口のシーンや、『紳士は金髪がお好き』のピンクのドレスのシーンなど)を、執念とも言えるほどの精密さで映像として完全に再現しています。
さらに本作では、画面のアスペクト比(縦横の比率)が頻繁に変化し、カラー映像とモノクロ映像がめまぐるしく入れ替わるという手法がとられています。
これは単なる芸術的な気まぐれではなく、大衆が見ていた「作られたマリリンの姿」と、彼女自身の「内面的な真実や恐怖」を視覚的に区別し、彼女の精神的な不安定さを表現するための極めて高度な演出です。
そして、忘れてはならないのが、主演のアナ・デ・アルマスの全身全霊の演技です。
キューバ出身で英語が母語ではない彼女は、撮影の約1年前から毎日数時間の厳しいボイストレーニングを重ね、マリリン特有のささやくような甘い声と話し方のアクセントを完全にマスターしました。
彼女がカメラに向かってふっと微笑む瞬間、まるでマリリン・モンローの幽霊が憑依したかのような錯覚に陥るほどの凄まじい再現度は、映画の賛否を越えてすべての観客を圧倒しました。

制作秘話・トリビア

本作がこれほどの炎上を招いた最大の要因の一つに、劇中に登場する「胎児のCGI」と「人工妊娠中絶」をめぐる過激な描写があります。
映画の中では、ノーマ・ジーンの胎内にいる胎児がCGIで描かれ、さらにはその胎児が彼女に向かって「今回は私を殺さないで」と語りかけてくるという、極めてショッキングでグロテスクなシーンが存在します。
この描写に対して、アメリカのプロチョイス(人工妊娠中絶の権利擁護)団体を中心とした多くの批評家から、「中絶反対派のプロパガンダ映画だ」「マリリンを不当に貶めている」という激しい非難の声が上がりました。
また、実際の史実においてマリリン・モンローが意図的な中絶を行ったという明確な証拠はないにもかかわらず、映画内で彼女が強制的に中絶手術を受けさせられる生々しいシーンが繰り返し描かれたことも、倫理的な観点から大きな議論を呼びました。
しかし、原作者であるジョイス・キャロル・オーツは本作を絶賛しており、「これは伝記ではなく、一人の女性がいかにしてハリウッドの機械的なシステムによってすり潰されたかを描いた芸術作品である」と擁護する声明を出しています。
ドミニク監督自身も、「観客は自分たちが愛した偶像が傷つけられるのを見たくないから怒っているのだ。私はマリリンの光の部分ではなく、誰も見ようとしなかった深い闇を描きたかった」と語り、決して謝罪や弁明をすることはありませんでした。
この作品を取り巻く現実のバッシングそのものが、皮肉にも「マリリン・モンローに理想の姿だけを求め、都合の悪い真実を拒絶する大衆の姿」を浮き彫りにしているとも言えるのです。

キャストとキャラクター紹介

  • マリリン・モンロー / ノーマ・ジーン:アナ・デ・アルマス / 水樹奈々
    • 世界で最も有名な映画スターでありながら、その内面は親の愛に飢え、常に恐怖におびえる少女「ノーマ・ジーン」のままであり続けた悲劇のヒロインです。
    • カメラのフラッシュを浴びる瞬間にだけ「マリリン」という鎧をまとい、笑顔の裏側でハリウッドの貪欲な男性たちから精神的・肉体的な搾取を受け続けます。
    • 自分を捨てた「父親」という存在への強烈なファザコン(ダディ・イシュー)を抱えており、関わる男性すべてに父親の影を求めて破滅していきます。
  • 劇作家(アーサー・ミラー):エイドリアン・ブロディ / 井上和彦
    • マリリンの3番目の夫となる、ニューヨークを拠点とする知的な劇作家です。
    • 最初は彼女の知性や内面に惹かれ、彼女に「マグダ」という愛称をつけて愛しますが、次第に彼もまた彼女の存在を自らの戯曲のインスピレーションの道具(ミューズ)として消費するようになります。
    • 穏やかで理性的に見えますが、彼女の狂気を受け止めきれずに逃げ出してしまう、ある種の無力な知識人として描かれています。
  • 元アスリート(ジョー・ディマジオ):ボビー・カナヴェイル / 谷昌樹
    • マリリンの2番目の夫となる、国民的英雄である元プロ野球選手です。
    • 伝統的なイタリア系アメリカ人の価値観を持ち、妻が「セックス・シンボル」として大衆の欲望の視線を浴びることに耐えられず、病的な嫉妬に狂っていきます。
    • 有名な『七年目の浮気』のスカートがめくれる撮影シーンを現場で見て激怒し、彼女に激しい暴力を振るうという恐ろしい一面を持っています。
  • グラディス・パール・ベイカー:ジュリアン・ニコルソン / 渡辺明乃
    • ノーマ・ジーンの母親であり、精神疾患を抱えています。
    • 幼いノーマに対して「お前のせいでキャリアが台無しになった」「お前の父親はハリウッドの大物だ」と呪いのような言葉を吐き続け、時には入浴中の彼女を溺死させようとするなど、凄惨な虐待を行います。
    • 彼女がノーマの心に植え付けた深い傷こそが、本作のすべての悲劇の出発点となっています。

キャストの代表作品と経歴

  • アナ・デ・アルマス
    • 『ブレードランナー 2049』のAIホログラム・ジョイ役で世界的な注目を集め、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』や『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』などでトップスターの階段を駆け上がった、現在最も勢いのある実力派女優です。
    • 本作では、言葉の壁やカルチャーの違いという圧倒的なハンデを乗り越え、マリリン・モンローの魂を完全憑依させるという神業を披露しました。
    • ラジー賞作品でありながらアカデミー賞主演女優賞にノミネートされるという事実が、彼女の演技がいかに映画の枠組みを超越して素晴らしかったかを証明しています。
  • エイドリアン・ブロディ
    • ロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』で、アカデミー賞主演男優賞を史上最年少で受賞した名優です。
    • ウェス・アンダーソン監督作品の常連としても知られ、知的で神経質、そしてどこか物憂げな雰囲気を持ったキャラクターを演じさせれば右に出る者はいません。
    • 本作での「劇作家(アーサー・ミラー)」役でも、その圧倒的な表現力で、妻を愛しながらも無意識に搾取してしまう知識人のエゴを見事に体現しています。
  • ボビー・カナヴェイル
    • HBOのドラマシリーズ『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』での狂気に満ちたギャング役でエミー賞を受賞するなど、粗野で暴力的ながらもどこか人間臭いキャラクターを得意とする実力派俳優です。
    • 本作では、国民のヒーローという表の顔と、妻に対する支配欲やDVという裏の顔を持つ男の恐ろしさを、生々しい肉体感とともに演じ切っています。

まとめ(社会的評価と影響)

映画『ブロンド』は、エンターテインメントとしてのカタルシスや感動を一切拒絶し、観客を果てしないトラウマと絶望のどん底へと突き落とす、極めて重く苦しい作品です。
「ハリウッドの機械的な搾取システムを批判する」という明確なテーマを持ちながら、その表現方法があまりにも過激で暴力的であったため、「映画自体がマリリン・モンローを再び搾取し、陵辱しているのではないか」という倫理的な批判を免れることはできませんでした。
ラジー賞での最低作品賞の受賞や、Rotten Tomatoesでの批評家スコア42%、観客スコア32%という厳しい数字は、この映画が提示した強烈な「毒」を多くの人が拒絶した結果だと言えます。
しかし、芸術作品としての映像美、音響効果、そして何よりもアナ・デ・アルマスの歴史に残る名演は、単なる駄作として切り捨てるにはあまりにも高いクオリティを誇っています。
私たちは、スクリーンの中で美しく微笑むマリリン・モンローを消費する際、彼女が抱えていたかもしれない途方もない苦痛から無意識に目を背けています。
アンドリュー・ドミニク監督は、そんな私たちの「安全な観客としての立場」を暴力的に引き剥がし、彼女の血と涙にまみれた地獄を直視するように強要してくるのです。
本作を「悪趣味な搾取ポルノ」と断じるか、それとも「偶像崇拝の罪を告発する傑作」と評価するかは、観る者の価値観によって完全に真っ二つに分かれるでしょう。
軽い気持ちで観ることは決しておすすめしませんが、映画というメディアが持つ恐ろしいほどの力と、アナ・デ・アルマスという一人の俳優の限界を超えた挑戦を目撃したい方にとっては、一生心に残り続ける強烈な映画体験となるはずです。

作品関連商品

  • ジョイス・キャロル・オーツ著『ブロンド』(新潮文庫など)
    • 映画の原作となった、2000年発表の分厚い伝記的フィクション小説です。
    • 映画版では描ききれなかったノーマ・ジーンの複雑な内面描写や、周囲の人物たちの視点が緻密な文体で綴られており、ピュリッツァー賞候補にもなった高い文学性を誇ります。映画で受けた衝撃をより深く理解し、補完するための必読の書と言えます。
  • 映画『お熱いのがお好き』Blu-ray / DVD
    • マリリン・モンローのコメディエンヌとしての天才的な才能が最も輝いている、ビリー・ワイルダー監督の歴史的な傑作コメディ映画です。
    • 『ブロンド』の重すぎる世界観に精神をすり減らした後は、本物のマリリン・モンローが放つ無邪気な魅力と圧倒的なオーラに触れ、彼女が世界中から愛された本当の理由を再確認して、心のバランスを取り戻すことを強くお勧めします。
  • 映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』Blu-ray / DVD
    • アナ・デ・アルマスが純朴で心優しい看護師マルタを演じ、ハリウッドでのブレイクの決定打となった極上のミステリー映画です。
    • 『ブロンド』で見せた狂気や脆さとは全く異なる、等身大でキュートな彼女の魅力を存分に楽しむことができるため、彼女の演技の幅の広さを知る上で欠かせない一作です。
タイトルとURLをコピーしました