カルト的人気を誇る英国ミステリー!『秘密指令S』の魅力と「不可能犯罪」に挑む必見エピソード
「秘密指令S」の概要
『秘密指令S』(原題:Department S)は、1969年から1970年にかけてイギリスITCが制作したスパイ・ミステリードラマです。国際刑事警察機構(インターポール)の中に設けられた特殊部門「Department S」のメンバーたちが、通常の警察組織では解決不可能な「不可解で不条理な事件」に挑む姿を描いています。
本作の最大の魅力は、事件の導入部(アバンタイトル)で見せつけられる「ありえない謎」のインパクトと、ピーター・ウィンガード演じる推理作家ジェイソン・キングの強烈なキャラクターにあります。日本では広川太一郎氏による軽妙かつアドリブ満載の吹き替えで放送され、今なお熱狂的なファンを持つ伝説的作品です。この記事では、本作の基本設定と、特に評価の高い「謎解き」エピソードを厳選してご紹介します。
「秘密指令S」の詳細
インターポールの最後の砦「S」のメンバー
物語の中心となるのは、3人のスペシャリストです。
- ジェイソン・キング(Jason King): 推理小説家であり、洒落者で女好きのプレイボーイ。常識にとらわれない発想で事件の核心を突きます。
- スチュワート・サリバン(Stewart Sullivan): 元FBI捜査官で、チームの指揮を執る行動派。格闘と射撃のプロフェッショナルです。
- アナベル・ハースト(Annabelle Hurst): コンピューター分析を得意とする才色兼備の分析官。論理的な思考でジェイソンの突飛な推理をサポート(あるいは反論)します。
番組の代名詞「不条理なオープニング」
このドラマの最大の特徴は、冒頭で提示される「論理的に説明がつかない謎」です。「誰も乗っていない飛行機が着陸する」「死後何年も経過した死体が電話をかける」といったオカルトめいた現象を、あくまで科学的・論理的なアプローチで解き明かしていくプロセスが視聴者を惹きつけました。
必見!人気エピソード3選
数あるエピソードの中から、特にファンの間で評価が高い、ミステリーとしての完成度が光る3話をご紹介します。
1. 「死の6日間」(第1話 / 原題:Six Days)
ヒースロー空港に旅客機が着陸しますが、管制塔との交信がかみ合いません。乗員乗客たちは「ローマからロンドンへ3時間のフライトだった」と主張しますが、実際には離陸から「6日間」が経過しており、全員が行方不明扱いになっていました。
機体に異常はなく、燃料も3時間分しか減っていません。しかし、乗客の男性たちの髭は伸びておらず、機内食も腐っていない……。空白の6日間、彼らは一体どこにいたのか? 集団催眠か、タイムスリップか? 『秘密指令S』の魅力を決定づけた傑作パイロット版です。
2. 「消えた村」(原題:The Pied Piper of Hambledown)
ある女性がイギリスの片田舎にある小さな村「ハンブルダウン」を訪れます。一晩宿に泊まり、翌朝目を覚ますと、村から「すべての住民」が消え失せていました。
朝食のトーストは焼かれたままで、郵便局の電話も繋がったまま。争った形跡もなく、村人全員が神隠しに遭ったかのような状況です。ジェイソンたちが調査を進めると、村全体を覆う巨大な陰謀と、ある「音」の正体が明らかになります。閉鎖空間でのミステリーとして非常に人気の高いエピソードです。
3. 「殺しの部屋」(原題:The Man in the Elegant Room)
廃墟となった工場の倉庫内で、若い女性の絞殺死体が発見されます。奇妙なのは、その殺害現場です。薄汚い倉庫の中に、突如として壁で仕切られた「豪華絢爛なビクトリア朝風の部屋」が出現していたのです。
家具調度品はすべて本物のアンティークで、部屋の中には精神を病んだ青年が一人座っていました。なぜ工場の真ん中に部屋が作られたのか? このシュルレアリスム絵画のような不条理な光景の裏には、悲しくも恐ろしい犯罪計画が隠されていました。
ジェイソン・キングという「発明」
この作品を語る上で欠かせないのが、ジェイソン・キングの存在です。彼の派手なファッション(大きな襟のシャツ、スカーフ)と、広川太一郎氏の「~なわけね」「イカす」といった独特の日本語訳(通称:広川節)は、当時の視聴者に強烈なインパクトを与えました。彼の人気があまりに高かったため、後に彼を主役にしたスピンオフ作品『ジェイソン・キング』が制作されるほどでした。
「秘密指令S」の参考動画
まとめ
『秘密指令S』は、単なるスパイアクションにとどまらず、「論理的な謎解き」の面白さを追求した極上のミステリードラマです。一見すると超常現象にしか思えない事件を、ジェイソンの直感とスチュワートの行動力、アナベルの分析力で「現実的な犯罪」へと還元していくカタルシスは、現代のドラマにも通じる面白さがあります。
もし、あっと驚くような謎と、60年代英国の洒脱な雰囲気(スウィンギング・ロンドン)を味わいたいなら、この「不可能犯罪ファイル」のページを開いてみてはいかがでしょうか。広川太一郎氏の名演技とともに、色褪せない冒険があなたを待っています。
関連トピック
ジェイソン・キング (Jason King)
本作のスピンオフドラマ。インターポールを離れ、世界中を旅しながら小説のネタ探しをするジェイソンがトラブルに巻き込まれる冒険活劇。
ITCエンターテインメント
『サンダーバード』や『プリズナーNo.6』『セイント 天国野郎』などを制作したイギリスの伝説的な制作会社。本作もその黄金期を代表する一本。
広川太一郎
日本の声優、ナレーター。ジェイソン・キングの吹き替えを担当し、台本にないアドリブや独特の語り口でキャラクターの魅力を倍増させた功労者。
アバンタイトル(コールド・オープン)
ドラマの冒頭、タイトルが出る前に事件の発端や衝撃的なシーンを見せる手法。本作はこの演出が極めて秀逸で、視聴者を一瞬で引き込む教科書的な例とされる。
関連資料
DVD『秘密指令S コンプリートDVD-BOX』
全28話を収録したボックスセット。日本語吹き替え版も収録されているものが多く、マニア必須のアイテム。
CD『ITC Top Secret: The Music of ITC』
ITC作品の主題歌やBGMを集めたサウンドトラック集。『秘密指令S』のクールでジャジーなテーマ曲も収録されている。

