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【奇妙な密室】廃工場の中に突如現れた「豪華な部屋」…『秘密指令S』第6話「殺しの部屋」を徹底解説

サスペンス・ミステリー
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【奇妙な密室】廃工場の中に突如現れた「豪華な部屋」…『秘密指令S』第6話「殺しの部屋」を徹底解説

「殺しの部屋」の概要

1969年の英国ドラマ『秘密指令S(Department S)』において、最も「不可解」で「シュール」な導入部を持つエピソードの一つが、第6話(放送順によっては第1話や第3話の場合あり)「殺しの部屋(原題:The Man in the Elegant Room)」です。

ロンドンのうらぶれた廃倉庫。不動産業者が内見のために扉を開けると、そこには埃まみれの廃墟ではなく、なぜか完璧に家具が配置された豪華で美しい部屋が出現していました。

しかも、その密室と化した部屋の中には、若い女性の遺体と、恐怖で正気を失った一人の青年が閉じ込められていたのです。

外見は廃墟、中身は宮殿のような部屋。一体誰が、何のために、こんな手の込んだセットを作ったのか?

この記事では、ジェイソン・キングの推理が冴え渡るこのミステリーの全貌と、Department Sの華麗なる捜査について詳しく解説します。

「殺しの部屋」の詳細

ストーリー:廃墟の中の「別世界」

物語は、ロンドンのイズリントンにある廃倉庫で幕を開けます。

長期間放置されていたはずの倉庫の中に、突如として「壁、床、高級家具、調度品」に至るまで完璧に作り込まれた「部屋」が発見されます。

警察が踏み込むと、そこには絞殺された若い女性の死体と、何かに怯えて錯乱状態にある青年ダニーの姿がありました。

出口は施錠されており、二人はこの奇妙な部屋に監禁されていたようです。

「なぜ、わざわざ廃墟の中に部屋を作ったのか?」

通常の警察捜査では埒が明かないと判断され、インターポールのDepartment Sに出動要請が下ります。

捜査:ジェイソン・キングの「模倣説」

現場を訪れたジェイソン・キングは、この部屋が「生活するため」ではなく「何かの目的のために作られたセット」であると見抜きます。

彼は自身の小説の主人公マーク・ケインになぞらえて、一つの大胆な仮説を立てます。

「この部屋は、実在するある部屋のコピーだ。犯人たちは、その部屋での『何か』をリハーサルするために、これを作ったに違いない」

つまり、強盗や暗殺などの犯罪計画を実行する際、現場の構造を体に覚え込ませるためのシミュレーション用セットだったのです。

スチュワートたちはこの推理に基づき、部屋の内装に使われた特注の壁紙や家具のルートを洗い出し、モデルとなった「本物の部屋」を探し始めます。

真相:予行演習の悲劇

(※ここからネタバレを含みます)

アナベルの調査により、雑誌に掲載されていたある富豪の邸宅の部屋が、廃倉庫の部屋と瓜二つであることが判明します。

事件の背景には、その富豪の屋敷にある金庫を狙った強盗計画がありました。

実行犯グループの一員だったダニーと被害者の女性は、このセットで金庫破りの練習をさせられていました。

しかし、仲間割れか口封じのために、主犯格の女(セリーナ)によって外から鍵をかけられ、閉じ込められてしまったのです。

極限状態の中で女性は殺され、ダニーは狂気に陥ってしまった――というのが事の真相でした。

クライマックスでは、アナベルが単独で敵のアジトに潜入して危機に陥りますが、スチュワートたちの救援により犯行グループは一網打尽にされます。

エピソードの見どころ

この「殺しの部屋」は、Department Sの魅力である「冒頭の謎のインパクト」が非常に強い作品です。

廃墟の暗闇の中に浮かび上がる豪華なシャンデリアと、そこにある死体というビジュアルは、視聴者に強烈な印象を与えます。

また、理知的なアナベル、行動派のスチュワート、そして直感と想像力で真相に迫るジェイソンの3人の役割分担が明確に描かれており、シリーズの入門編としても最適なエピソードです。

「殺しの部屋」の参考動画

まとめ

『秘密指令S』の「殺しの部屋」は、現実離れした奇妙な舞台設定と、それを論理的(かつ想像力豊か)に解き明かすミステリーの面白さが詰まった傑作です。

「犯罪のために現場をコピーする」というアイデアは、後の多くの映画やドラマ(『オーシャンズ11』など)でも使われる手法ですが、本作はその先駆けとも言えるでしょう。

ただの謎解きに終わらず、人間の欲深さと狂気を描いたこのエピソードは、60年代英国ドラマの奥深さを今に伝えています。

もし、あなたが「一風変わったミステリー」を求めているなら、この「殺しの部屋」の扉を開けてみてはいかがでしょうか。

関連トピック

ジェイソン・キング – ピーター・ウィンガード演じる本作の人気キャラクター。スピンオフも制作された。

テリー・ネイション – 本エピソードの脚本家。『ドクター・フー』のダーレクの生みの親としても有名。

インターポール – 国際刑事警察機構。本作でのDepartment Sの上部組織。

関連資料

DVD『秘密指令S DVD-BOX』 – 本エピソードを含む全話を収録。

書籍『The Saint, The Avengers and… Department S』 – ITC系アクションドラマを比較研究した書籍。

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