ドラマ「フラッシュフォワード」のうんちく徹底解説!「ポストLOST」と期待されたSF大作が打ち切りになった本当の理由
「フラッシュフォワード」の概要
ドラマ「フラッシュフォワード」(原題: FlashForward)は、2009年から2010年にかけてアメリカのABCで放送されたSFミステリードラマです。
原作は、カナダのSF作家ロバート・J・ソウヤーによる1999年の同名小説(邦題『フラッシュフォワード』)です。
物語の概要は、ある日突然、全世界の人間が同時に2分17秒間意識を失い、その間に全員が「半年後の未来」のビジョン(フラッシュフォワード)を見るという未曾有の大事件「グローバル・ブラックアウト(G.G.O)」が発生するところから始まります。
FBI捜査官マーク・ベンフォード(演:ジョセフ・ファインズ)は、この大混乱の中で「なぜ事件は起きたのか」「自分が見た未来のビジョンは何を意味するのか」という二重の謎を追うことになります。
壮大なスケールと、「未来は変えられるのか」という哲学的な問いかけで、放送開始当初は爆発的な人気と期待を集めました。
「フラッシュフォワード」の詳細
壮大なスケールの発端「G.G.O」と「モザイク」
ドラマの核となる「うんちく」は、すべての発端となる「G.G.O(グローバル・ブラックアウト)」です。
この2分17秒間の意識喪失により、世界中で飛行機は墜落し、車は暴走、インフラは完全に麻痺し、数千万人の死者が出たとされます。
人々は、意識を失っていた間に見た「半年後の2010年4月29日」のビジョンに振り回されることになります。
主人公のFBI捜査官マーク・ベンフォードは、G.G.Oの捜査中、自分が未来のビジョンの中で見ていた「捜査掲示板」の存在に気づきます。
世界中の人々が見たビジョン(=未来の断片)をインターネットで集め、パズルのように組み合わせて事件の全体像を解明しようとする捜査プロジェクト、それが「モザイク(Mosaic)」です。
「未来は決定しているのか、それとも変えられるのか」というテーマが、この捜査の根幹を成すことになります。
「ポストLOST」として期待された故の重圧
「フラッシュフォワード」が放送された2009年は、奇しくも同じABCで社会現象となっていたドラマ「LOST」が最終シーズン(シーズン6)を翌年に控えていた時期でした。
ABCは、「LOST」に匹敵する、あるいはその後継者となるような、壮大な謎解きミステリードラマを切望していました。
本作のパイロット版(第1話)は、映画並みのスケール(特にG.G.O発生時のパニックシーンの描写)と練り込まれた謎で批評家から絶賛され、視聴率も非常に高く、「ポストLOST」の最有力候補として最高のスタートを切りました。
しかし、この過大な期待こそが、本作の運命を左右する「うんちく」となりました。
なぜ打ち切りに?シーズン1で完結した最大の「うんちく」
本作の最大の「うんちく」は、これほどのスケールで始まったにもかかわらず、シーズン1(全22話)のみで制作が「打ち切り(キャンセル)」となってしまったことです。
その理由は複合的でした。
最大の理由は、視聴率の低下です。
第1話で獲得した爆発的な視聴者を、シーズン中盤まで維持することができませんでした。
「LOST」と同様に謎が謎を呼ぶ展開でしたが、中盤で物語の進行が遅く感じられる「中だるみ」があったと指摘されています。
また、放送スケジュールも不運でした。
秋にスタートした後、冬のバンクーバーオリンピックの放送などで数週間にわたる「中休み(ヒエイタス)」が何度も入りました。
これにより視聴者の関心が途切れてしまい、放送が再開されても戻ってこない視聴者が多かったのです。
結果として、ABCはシーズン2の制作を決定せず、物語は多くの謎を残したまま(正確には、シーズン1最終話でさらに大きな謎を提示して)終了するという、ファンにとっては非常にショッキングな結末を迎えました。
日本人キャスト(竹内結子さん)の重要な出演
日本の視聴者にとって見逃せない「うんちく」が、日本人キャストの出演です。
特に、女優の竹内結子さんが、非常に重要な役どころ(シモン・カンポスの協力者である日本人女性・ケイコ)として出演しています。
彼女の出演は単なるゲストではなく、G.G.Oの謎に関わる中核的なキャラクターの一人として、複数話にわたって登場しました。
また、主人公マーク・ベンフォードの未来のビジョンに登場する謎の日本人少年として、斎藤隆成さん(当時)も出演しており、日本と深く関わるストーリーラインが組まれていました。
「フラッシュフォワード」の参考動画
「フラッシュフォワード」のまとめ
ドラマ「フラッシュフォワード」は、全世界の人間が未来を見るという、SFとして最高の「掴み」を持った作品でした。
「ポストLOST」という過大な期待を背負い、壮大なスケールで幕を開けましたが、視聴率の維持と放送スケジュールの不運に見舞われ、シーズン1でその幕を閉じることになりました。
しかし、最終話で提示された「新たなフラッシュフォワード」と絶望的なクリフハンガー(続きを匂わせる終わり方)は、打ち切りドラマの中でも特に「伝説的」とさえ言われています。
「もし続いていたら、あの謎はどう解明されたのか」と、今なおファンの間で議論が続く、可能性に満ちた未完の大作。
それが「フラッシュフォワード」の最大の魅力であり、「うんちく」なのです。
関連トピック
ロバート・J・ソウヤー: 原作小説『フラッシュフォワード』の著者であるカナダのSF作家。ドラマ版とは設定や結末が大きく異なります。
LOST: 本作が「ポストLOST」として比較された、ABCの伝説的な謎解きドラマ。
ジョセフ・ファインズ: 主人公マーク・ベンフォードを演じたイギリスの俳優。『恋におちたシェイクスピア』などで知られます。
竹内結子: G.G.Oの謎に関わる日本人女性ケイコ役で出演。本作は彼女の海外ドラマデビュー作でもありました。
関連資料
『フラッシュフォワード』 (DVD/Blu-ray): シーズン1(全22話)が収録されたコンプリートBOX。打ち切りが決まったあの最終回をその目で確認できます。
『フラッシュフォワード』 (ロバート・J・ソウヤー著・原作小説): ハヤカワ文庫SFから出版されている原作。ドラマ版とは異なり、未来のビジョンは「21年後」であり、G.G.Oの原因も物理学的に(CERNの実験)説明されています。ドラマとの違いを楽しむのも一興です。