【事件記者コルチャック うんちく】『X-ファイル』の原点!なぜカルト的人気を誇り、20話で打ち切られたのか?
『事件記者コルチャック』の概要
『事件記者コルチャック』(原題: Kolchak: The Night Stalker)は、1974年から1975年にかけてアメリカで放送された、カルト的な人気を誇るテレビドラマシリーズです。
シカゴの新聞社「INS」に勤めるうだつの上がらない中年記者カール・コルチャック(演:ダーレン・マクギャヴィン)が、吸血鬼、狼男、ゾンビ、宇宙人といった超常的な事件に遭遇し、真実を追い求める姿を描きました。
その斬新な設定は、後の多くの作品に絶大な影響を与えましたが、シリーズ自体は短命に終わりました。
本作が「伝説」と呼ばれる理由と、その知られざる「うんちく」を徹底解説します。
『事件記者コルチャック』の詳細うんちく
すべては「テレビ映画」から始まった
『事件記者コルチャック』のテレビシリーズ(全20話)は、実はその前に制作された2本のテレビ映画の大ヒットがきっかけでした。
- 『魔界記者コルチャック/ラス・ベガスの吸血鬼』(原題: The Night Stalker, 1972年)
- 『魔界記者コルチャック/ナイト・ストラングラー』(原題: The Night Strangler, 1973年)
特に1作目の『ラス・ベガスの吸血鬼』は、テレビ映画として当時のアメリカ史上最高の視聴率を記録するメガヒットとなりました。
この成功を受け、1974年から待望のテレビシリーズ化が決定しました。
脚本には『激突!』の原作や『ミステリー・ゾーン』で知られるリチャード・マシスン、『サイコ』のロバート・ブロックといった巨匠たちが参加し、万全の体制でスタートしました。
最大のうんちく:『X-ファイル』の「父」である
本作がカルト的な人気を誇る最大の理由は、1990年代に世界的大ヒットとなった『X-ファイル』に決定的な影響を与えたことです。
『X-ファイル』の生みの親であるクリス・カーターは、「『事件記者コルチャック』がなければ『X-ファイル』は生まれなかった」と公言しています。
「超常現象を追う孤独な主人公」「当局(警察や上司)は真実を隠蔽し、誰も信じてくれない」「証拠が消えてしまう」という、『X-ファイル』の根幹をなすテーマは、すべて『コルチャック』によって確立されたものでした。
『X-ファイル』にはコルチャックへのオマージュが散りばめられており、コルチャックを演じたダーレン・マクギャヴィン本人が『X-ファイル』にゲスト出演(アーサー・デイルズ捜査官役)を果たした回は、新旧ファンの間で伝説となっています。
コルチャックの「三種の神器」
主人公カール・コルチャックのキャラクターは非常に個性的です。
彼のトレードマークは、ボロボロのシアサッカーのスーツ、「鳥の巣」と揶揄される麦わら帽子(カンカン帽)、そして白いスニーカーです。
彼は常に小型のポケットカメラとテープレコーダー(口述筆記用)を常備し、足で稼ぐ昔ながらの事件記者スタイルを貫きました。
この人間臭く、冴えないけれどタフな中年ヒーロー像は、ダーレン・マクギャヴィンの魅力と相まって、視聴者に強烈な印象を残しました。
(日本語吹替版の故・大塚周夫の声も、その魅力に大きく貢献しました)。
わずか20話での「打ち切り」の真相
テレビ映画の大ヒットを受けて鳴り物入りで始まったシリーズでしたが、視聴率は振るわず、わずか全20話(1シーズン)で打ち切りとなってしまいました。
その理由については諸説あります。
「毎週異なるモンスターを登場させる」というフォーマットが、次第にワンパターンで陳腐に映ってしまったことや、原作者のジェフリー・ライスがシリーズ化を許可していないとして訴訟を起こしたことなどが挙げられています。
しかし、この制作本数の少なさが、かえって作品の希少価値を高め、放送終了後にカルト的な人気を呼ぶ一因となりました。
お約束の「ほら話」エンディング
『事件記者コルチャック』は、毎回の結末が「お約束」のパターンになっています。
コルチャックは命がけで怪物を倒し、事件の真相を突き止めます。
しかし、警察や当局は社会的なパニックを恐れ、その超常的な事実をすべて隠蔽(いんぺい)してしまいます。
コルチャックが撮った決定的な証拠写真も紛失させられ、怪物の死体も消え失せます。
結局、コルチャックが書いた原稿は「ほら話」としてボツにされ、上司のトニー・ヴィンセント(演:サイモン・オークランド)に「馬鹿者!」「出て行け!」と怒鳴られて終わるのが定番でした。
参考動画
まとめ
『事件記者コルチャック』は、その放送当時は正当な評価を得られなかった悲運の作品でした。
しかし、超常現象とジャーナリズムを組み合わせたその革新的なコンセプトは、時代を先取りしすぎていたと言えます。
「誰も信じてくれない真実を、それでも追い続ける」というコルチャックの孤独な戦いは、20年の時を経て『X-ファイル』という形で見事に開花しました。
今見ても色褪せない、すべてのオカルト・サスペンスドラマの原点がここにあると言っても過言ではありません。
関連トピック
『X-ファイル』: 本作の精神的後継作。コルチャック役のダーレン・マクギャヴィンがゲスト出演したエピソードは必見です。
ダーレン・マクギャヴィン: 主人公カール・コルチャックを演じた名優。彼の人間味あふれる演技が本作の核となりました。
リチャード・マシスン: テレビ映画版の脚本や、シリーズの一部の脚本を手掛けたSF・ホラー界の巨匠。
テレビ映画版(魔界記者コルチャック): すべての始まりとなった2作品。シリーズの原点として非常に評価が高い傑作です。
ロバート・ゼメキス: 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の監督として有名ですが、キャリアの初期に本作のストーリー原案を執筆していたエピソードがあります。
関連資料
事件記者コルチャック DVD-BOX: 全20話およびテレビ映画版2作を収録したコンプリートボックス。カルト的人気のすべてを網羅できます。
Kolchak: The Night Stalker (Original Television Soundtrack) [CD/配信]: ギル・メレやロバート・コバートが手掛けた、不気味でジャジーなテーマ曲や劇中音楽を収録したサウンドトラック。
『X-ファイル』 [Blu-ray/DVD]: 本作の影響を確認しながら視聴することで、両作品の魅力をより深く理解できます。