燃えよカンフーのうんちく徹底解説!ブルース・リーが演じるはずだった?「バッタくん」と呼ばれた男の秘密

燃えよカンフーのうんちく徹底解説!ブルース・リーが演じるはずだった?「バッタくん」と呼ばれた男の秘密

「燃えよカンフー」の概要

「燃えよカンフー」(原題: Kung Fu)は、1972年から1975年にかけてアメリカで放送され、日本を含む世界中で人気を博したテレビドラマです。

物語の概要は、中国・少林寺で武術と哲学を学んだ僧、クワイ・チャン・ケインが、師の仇を討つ(結果的に皇帝の甥を殺害する)も、追われる身となりアメリカ西部に逃亡するところから始まります。

彼は賞金稼ぎから逃れながら西部を放浪し、そこで出会う人々との交流や、様々な事件に遭遇します。

この作品は、単なるカンフー・アクションドラマではなく、過酷な西部劇の世界に「不殺」や「調和」といった東洋哲学を持ち込んだ異色のヒューマンドラマとして、今なおカルト的な人気を誇っています。

この記事では、「燃えよカンフー」にまつわる、知られざる「うんちく」を徹底的に深掘りします。

「燃えよカンフー」の詳細

ブルース・リーが主役を演じるはずだった?最大のうんちく

「燃えよカンフー」にまつわる最も有名で、最も重要な「うんちく」は、主人公クワイ・チャン・ケイン役とブルース・リーに関する逸話です。

このドラマシリーズの企画原案は、当時ハリウッドで活躍の場を模索していたブルース・リー自身(あるいは彼の妻リンダ)が持ち込んだものだと言われています。

ブルース・リーは当然、自らが主人公ケインを演じることを強く望んでいました。

しかし、当時のハリウッドのテレビ局(ABC)は、「アジア人の主演俳優では視聴率が取れない」と判断しました。

彼らは、アジア人の主人公がアメリカの家庭のお茶の間で受け入れられるとは信じられなかったのです。

その結果、ブルース・リーの企画(あるいは彼の主演)は採用されず、役は白人俳優であるデビッド・キャラダインに渡りました。

この時、主人公の設定は「白人と中国人の混血」と変更されました。

この決定に深く失望したブルース・リーは、ハリウッドに見切りをつけ、香港へ戻ることを決意します。

そして香港で制作した映画『ドラゴン危機一発』や『燃えよドラゴン』で世界的なスーパースターとなるのです。

「燃えよカンフー」は、ブルース・リーが演じられなかったという皮肉な歴史を持つ一方で、もし彼がこの役を得ていたら、その後のカンフー映画史は大きく変わっていたかもしれません。

なぜ「バッタくん(Grasshopper)」と呼ばれるのか?

ドラマの中で、ケインが師匠から呼ばれる愛称として非常に有名なのが「グラスホッパー(Grasshopper)」です。

日本語の吹き替え版では「バッタくん」または「コオロギくん」などと訳され、広く親しまれました。

これは、ケインがまだ幼い修行僧だった頃のエピソードに由来します。

ケインの師であり、盲目の高僧であるマスター・ポー(演:ケイ・ルーク)は、常にケインに哲学的な問いを投げかけます。

ある時、ケインは師匠に自分の成長ぶりを示そうとしますが、師匠はケインの未熟さを穏やかに諭します。

「グラスホッパー」という呼び名は、ケインが師匠の手のひらに乗ったバッタを、師匠に気づかれずに(あるいは音もなく)掴むことができなかったというエピソードや、師匠がケインの未熟さ、若さ、そして秘めた可能性を「小さなバッタ」に例えたことに由来します。

この「グラスホッパー」という言葉は、師匠から弟子への愛情ある呼びかけの象徴として、放送当時アメリカで流行語にもなりました。

アクションと哲学が融合した独自の「フラッシュバック」

「燃えよカンフー」の物語構成は非常に特徴的です。

ドラマは「現代」のアメリカ西部パートと、「過去」の中国・少林寺での修行パートが交互に描かれます。

主人公ケインが西部の荒野で暴力や偏見、困難な問題に直面するたび、彼の脳裏に少林寺時代の師匠(マスター・ポーやマスター・カン)との対話がフラッシュバックします。

西部劇が「力(銃)による正義」の世界であるのに対し、師匠の教えは「不殺(殺さず)」、「調和」、「内なる平和」といった東洋哲学(道教や仏教)に基づいています。

ケインは、師匠の教えを思い出し、自問自答しながら、暴力ではなく知恵と武術の「型」をもって問題を解決しようと試みます。

主演のデビッド・キャラダイン自身は、ブルース・リーのような武道家ではありませんでしたが、ダンサーとしての素養がありました。

彼独特の流れるような、どこか瞑想的な動きは、力強さよりも「静」の哲学を体現するケイン役に不思議とマッチし、他のどのアクションドラマとも異なる独自の雰囲気を作り出すことに成功しました。

「燃えよカンフー」の参考動画

「燃えよカンフー」のまとめ

「燃えよカンフー」は、1970年代に世界中で巻き起こったカンフー・ブーム、そして東洋思想への関心の高まりを象徴する作品でした。

ブルース・リーが演じるはずだった役を、白人俳優デビッド・キャラダインが演じたという事実は、当時のハリウッドが抱えていた人種的な限界を示す「うんちく」として今も語り継がれています。

しかし同時に、デビッド・キャラダインが演じた静かで哲学的なヒーロー像は、西部劇と東洋哲学という異質な要素を見事に融合させ、多くの視聴者に深い感銘を与えました。

単なるアクションではなく、人間の内面的な葛藤と成長を描いた「燃えよカンフー」は、時代を超えたカルト・クラシックとして、その「道」の教えを伝え続けています。

関連トピック

デビッド・キャラダイン: 主人公クワイ・チャン・ケインを演じた俳優。俳優一家「キャラダイン家」の一員。この作品で世界的なスターとなり、後年、映画『キル・ビル』で再び注目されました。

ブルース・リー: 当初、本作の主演を熱望していたとされる伝説的アクションスター。彼が主演していたら全く異なる作品になっていたと言われています。

マスター・ポー (ホー先生): ケインの盲目の師匠。演じたケイ・ルークは、ハリウッドで活躍したアジア系俳優の草分け的存在です。「グラスホッパー」の名付け親。

西部劇: 物語の舞台はアメリカ西部開拓時代。銃と暴力が支配する世界で、東洋の僧侶が放浪するという異色の設定が特徴です。

フラッシュバック: ドラマの重要な手法。ケインが困難に直面するたびに、過去の少林寺での師匠の教えを思い出すシーンが挿入されます。

関連資料

『燃えよカンフー』 (DVDコンプリート・ボックス): テレビシリーズ全シーズンを収録したもの。デビッド・キャラダインの静かな演技と、マスター・ポーの哲学的な言葉を堪能できます。

『キル・ビル Vol.2』 (映画): クエンティン・タランティーノ監督作。デビッド・キャラダインが組織のボス「ビル」役で出演。「燃えよカンフー」へのオマージュや、彼が「グラスホッパー」について言及するシーンも登場します。

ブルース・リー関連の伝記・ドキュメンタリー: 「燃えよカンフー」の企画がどのように生まれ、なぜ彼が主役になれなかったのか、その経緯について触れられている資料が多数あります。

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