名犬ラッシーのうんちく決定版!エリザベス・テイラーとの共演と、主役がオス犬だった驚きの秘密
「名犬ラッシー」の概要
「名犬ラッシー」は、世界で最も有名で、最も愛された犬のキャラクターと言っても過言ではありません。
ラッシーは、特定の「一匹の犬」の名前ではなく、世代を超えて受け継がれてきた「役柄(キャラクター)」の名称です。
その概要は、非常に賢く、深い忠誠心を持ったラフ・コリー種の犬が、困難な状況に陥った飼い主(特に少年)を救うために活躍するというものです。
この物語は、1940年に出版されたエリック・ナイトの小説『名犬ラッシー 家路(Lassie Come-Home)』を原作としています。
以来、映画、テレビドラマ、アニメーションと、様々な形で映像化され、ラッシーは「理想の犬」の象徴となりました。
この記事では、「名犬ラッシー」にまつわる、知られざる「うんちく」を徹底的に解説します。
「名犬ラッシー」の詳細
すべての始まりとエリザベス・テイラー
ラッシーの伝説が始まったのは、1943年にMGMが制作した映画『名犬ラッシー 家路』です。
この映画は、貧困のために売られてしまったラッシーが、数百マイル離れたスコットランドからイングランドにいる元の飼い主の少年の元へ帰ろうとする、壮大な旅を描いた物語でした。
この映画は世界的な大ヒットとなり、ラッシーの名を不朽のものにしました。
そして、この映画に関する最大の「うんちく」の一つが、共演者です。
この映画には、子役時代のロディ・マクドウォール(『猿の惑星』のコーネリアス役)と共に、まだ無名だったエリザベス・テイラーが出演していました。
当時11歳だった彼女の美少女ぶりは、ラッシーの健気な姿と共に観客の心を掴み、彼女の輝かしいキャリアの初期を飾る作品となったのです。
最大のうんちく「ラッシーは常にオス犬が演じていた」
「名犬ラッシー」の物語に関する、最も有名かつ重要なうんちくは、原作ではメス(母犬)であるにもかかわらず、映像作品のラッシーは一貫してオスのラフ・コリーが演じてきたという事実です。
これには、非常に現実的な理由がありました。
最大の理由は、オス犬の方がメス犬よりも体格が大きく、冬毛の時期の被毛(特に首回りの「ラフ」と呼ばれる飾り毛)が豊かで、見栄えがするという点です。
ラッシーは「ヒーロー」であるため、より大きく、立派に見える必要がありました。
また、メス犬の場合、年に数回の発情期(ヒート)があり、その期間は撮影が困難になったり、体調や被毛の状態が不安定になりがちです。
さらに、メスは出産後に被毛が抜け落ちる(ブローアウトする)ため、長期間の撮影スケジュールをこなす上で、一年中安定した外見を保てるオス犬の方が適していたのです。
初代ラッシーを演じたのは「パル(Pal)」という名のオス犬で、彼がその後のラッシー像の基準を作りました。
「パル」の血統とテレビシリーズの黄金期
映画の成功後、ラッシーの活躍の場はテレビへと移ります。
1954年から1973年まで、約20年間にわたって放送されたテレビドラマ「名犬ラッシー」(日本では「うちのラッシー」や「名犬ラッシー」として放送)は、お茶の間の絶対的な人気を博しました。
ここにも興味深いうんちくがあります。
この長寿番組でラッシー役を演じたのは、初代映画スター犬「パル」の血を引く、直系の子孫たちだったのです。
初代ラッシーのトレーナーであったラッド・ウェザーワックス氏は、パルの子孫を代々訓練し、常に「ラッシー」を演じられるように準備していました。
このテレビシリーズでは、ジェフやティミーといった少年とラッシーの絆が描かれ、「ティミーが井戸に落ちた!」という(実際には番組中では一度も言われていないとされるが、パロディで有名になった)フレーズを生み出すほど、ラッシーが危機を知らせるシーンはお約束となりました。
日本におけるコリー・ブームと世界名作劇場
「名犬ラッシー」の人気は日本にも波及し、特にテレビドラマ版の放送は、日本国内で爆発的な「コリー・ブーム」を引き起こしました。
多くの家庭が、ラッシーのような賢く美しいラフ・コリーを飼うことに憧れたのです。
この人気は一過性のものではなく、ラッシーの物語が持つ「忠誠心」や「家族愛」といったテーマが、日本人の感性に強く響いた結果と言えます。
そして1996年、日本独自の解釈として、フジテレビ系の「世界名作劇場」シリーズの一環として、アニメ『名犬ラッシー』が制作・放送されました。
これにより、ラッシーの物語は、昭和のテレビドラマ世代だけでなく、平成生まれの子供たちにも知られることとなり、世代を超えて愛されるキャラクターであり続けています。
「名犬ラッシー」の参考動画
「名犬ラッシー」のまとめ
「名犬ラッシー」は、単なる「犬の物語」ではありません。
それは、エリック・ナイトの感動的な原作小説から始まり、エリザベス・テイラーという未来の大女優を見出し、「ラッシーはオス犬が演じる」というプロフェッショナルな撮影裏の「うんちく」を生み出しました。
そして、初代「パル」から続く血統(犬の王朝)がテレビ黄金期を支え、遠く離れた日本にまでコリー・ブームを巻き起こした、巨大な文化のアイコンです。
時代がどれだけ変わっても、ラッシーが体現する無償の愛と絶対的な忠誠心は、私たちの心を打ち続ける普遍的な力を持っているのです。
関連トピック
ラフ・コリー: ラッシーの犬種として知られるスコットランド原産の牧羊犬。その優雅な容姿と高い知性、温厚な性格で知られています。ラッシーの成功により、世界で最も有名な犬種の一つとなりました。
エリック・ナイト: 『名犬ラッシー 家路』の原作者であるイギリス人作家。自身の愛犬(コリー)との実話にインスピレーションを得て、この不朽の名作を書き上げました。
エリザベス・テイラー: 1943年の映画『名犬ラッシー 家路』に子役として出演。ラッシーとの共演が、彼女のキャリア初期の重要なステップとなりました。
世界名作劇場: 日本のアニメーションシリーズ。1996年に『名犬ラッシー』を原作としたアニメを制作し、原作の感動を日本の子供たちに伝えました。
関連資料
『名犬ラッシー 家路』 (1943年版 DVD/Blu-ray): すべての原点となったMGM制作の映画。エリザベス・テイラーの可憐な姿と、初代ラッシー「パル」の熱演を見ることができます。
『名犬ラッシー』 (世界名作劇場版 DVD): 1996年に日本で制作されたアニメシリーズ。日本の視聴者向けに再構成された、もう一つのラッシーの物語です。
『名犬ラッシー』 (エリック・ナイト著・原作小説): 物語の原点。映像作品とは異なる、原作ならではの深い感動と、犬の驚くべき帰巣本能が描かれています(邦訳版が各社から出版されています)。