【スペース1999 うんちく】『謎の円盤UFO』の続編だった?傑作メカ「イーグル号」とシーズン2の激変を徹底解説
『スペース1999』の概要
『スペース1999』(原題: Space: 1999)は、1975年からイギリスで放送されたSF特撮テレビドラマです。
『サンダーバード』や『謎の円盤UFO』を手掛けたジェリー・アンダーソンが制作総指揮を務めました。
物語は、1999年9月13日、月面に貯蔵されていた核廃棄物が大爆発を起こし、その衝撃で月が地球の軌道を離れて宇宙空間へ放り出される、という衝撃的な展開から始まります。
月面基地「ムーンベース・アルファ」の隊員たちは、故郷を失ったまま、未知の宇宙を放浪する旅に出ることになります。
本作は、その硬派で哲学的なストーリー、そしてSFメカデザインの金字塔と名高い「イーグル号」の登場により、今なおカルト的な人気を誇っています。
しかし、その制作背景には『謎の円盤UFO』との意外な繋がりや、シーズン間の大きな路線変更といった知られざる「うんちく」が存在します。
『スペース1999』の詳細うんちく
最大のうんちく:『謎の円盤UFO』シーズン2が原型だった
前作『謎の円盤UFO』は、そのシリアスな作風とクールなメカニックで日本やイタリアではヒットしたものの、主要市場であるアメリカでの視聴率が振るわず、1シーズンで打ち切りとなりました。
しかし、制作総指揮のジェリー・アンダーソンはすでにシーズン2の企画を進めていました。
その構想は、UFOの脅威が増大し、SHADO(シャドー)の主戦場が地球から月面基地に移るというものでした。
この「月面基地を舞台にした物語」という基本コンセプトのみが引き継がれ、まったく新しい設定のSFドラマとして企画が練り直された結果、誕生したのが『スペース1999』なのです。
もし『謎の円盤UFO』がヒットしていれば、『スペース1999』は生まれなかったかもしれません。
SFメカデザインの金字塔「イーグル号」
本作の最大の功績の一つが、主役メカである万能輸送船「イーグル・トランスポーター」のデザインです。
機能美を徹底的に追求したその姿は、後のSF作品に計り知れない影響を与えました。
イーグル号は、操縦席のあるコマンドモジュール、人員や貨物を運ぶコンテナモジュール、そしてエンジン部が明確に分離・合体できる「モジュラー構造」を採用しています。
この現実の宇宙開発にも通じる合理的なデザインは、架空のメカでありながら圧倒的なリアリティを感じさせました。
『スター・ウォーズ』のミレニアム・ファルコン号のデザインにも影響を与えたという説もあるほど、そのデザインは画期的でした。
アルファの基地には28隻(最大時)が配備されており、偵察、戦闘、救助などあらゆる任務で活躍しました。
主演は『スパイ大作戦』コンビで実生活の夫婦
本作の主人公であるジョン・コーニッグ指揮官を演じたのはマーティン・ランドー、そしてヒロインのヘレナ・ラッセル博士を演じたのはバーバラ・ベインです。
この二人は、大ヒットドラマ『スパイ大作戦』のローラン・ハンド役とシナモン・カーター役で共演したコンビとして有名です。
さらに、二人は当時、実生活でも夫婦でした(1957年結婚、1993年離婚)。
『スパイ大作戦』を降板した後、再び夫婦でSFドラマの主役を務めるという点も、当時の大きな話題となりました。
シーズン2での突然の「激変」
シーズン1は、硬派で哲学的、時には救いのない展開もあるシリアスな作風が特徴でした。
しかし、この難解さがアメリカ市場で受け入れられなかったため、シーズン2では大規模なテコ入れが図られます。
『宇宙大作戦(スタートレック)』をシーズン3で打ち切りに導いたとされるプロデューサー、フレッド・フライバーガーが招集されました。
彼の指揮の下、シーズン2はよりアクション志向で分かりやすいエンターテイメント路線へと大きく舵を切ります。
知性派のビクター・バーグマン教授(演:バリー・モース)がリストラされ、代わりに変身能力を持つ異星人女性「マヤ」がレギュラークルーとして登場。
バリー・グレイが手掛けた重厚なシーズン1のテーマ曲も、デレク・ワズワースによるポップでリズミカルな曲に変更され、衣装デザインもカラフルになるなど、あらゆる面で「激変」しました。
この路線変更は、シーズン1のファンからは賛否両論を巻き起こしましたが、結果として『スペース1999』という作品に二つの異なる顔を与えることになりました。
参考動画
まとめ
『スペース1999』は、故郷を失った人々の絶望と希望を描くという、非常に重厚なテーマを持ったSFドラマの傑作です。
その魅力は、なんといっても「イーグル号」に代表される、徹底的にリアリティを追求したメカニックデザインと映像美にあります。
一方で、『謎の円盤UFO』の続編企画という出自や、アメリカ市場のテコ入れによるシーズン2での大胆な路線変更など、制作の裏側にも多くのドラマが隠されています。
シーズン1の哲学的でダークな雰囲気と、シーズン2の明るいスペース・アドベンチャー。
あなたはどちらの『スペース1999』がお好みでしょうか。
今見ても古びないその映像世界に、改めて触れてみるのも一興です。
関連トピック
『謎の円盤UFO』: 本作の事実上の前身となった作品。SHADO月面基地のコンセプトが『スペース1999』のムーンベース・アルファに引き継がれました。
イーグル号: 本作の主役メカ。その機能的なモジュール構造とデザインは、SFメカデザイン史に残る傑作として高く評価されています。
ジェリー・アンダーソン: 『サンダーバード』や『UFO』を生み出したイギリスの特撮界の巨匠。本作は彼の代表的な実写作品の一つです。
マーティン・ランドー&バーバラ・ベイン: 『スパイ大作戦』でも共演した、実生活でも夫婦だった主演コンビ。彼らのシリアスな演技が作品に重厚感を与えました。
関連資料
スペース1999 コンプリートBlu-ray/DVD BOX: シーズン1とシーズン2の全エピソードを収録。画質が向上したBlu-ray版では、イーグル号のディテールまで鮮明に楽しめます。
イーグル・トランスポーター [プラモデル/ダイキャストモデル]: 青島文化教材社やMPC、海外メーカー(Product Enterprise/Sixteen 12)などから、様々なスケールで模型化されています。特に大型モデルはその精密さで人気です。
スペース1999関連ムック本: メカニックの設定資料、撮影の舞台裏、デザイン画などを収録した書籍。作品をより深く理解するための一助となります。