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【伝説の第1話】『スペース1999』「はるかなる旅路」完全解説!月が地球を離れた運命の日と、SF史に残る特撮の衝撃

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【伝説の第1話】『スペース1999』「はるかなる旅路」完全解説!月が地球を離れた運命の日と、SF史に残る特撮の衝撃

『スペース1999』第1話「はるかなる旅路」の概要

1970年代半ば、世界中のSFファンに衝撃を与えたイギリスのテレビドラマ『スペース1999(原題:Space: 1999)』。

『サンダーバード』のジェリー・アンダーソンが、人形劇から実写ドラマへと舞台を移し、当時としては破格の製作費と最新鋭の特撮技術を注ぎ込んで作り上げた傑作SFシリーズです。

その記念すべき第1話「はるかなる旅路(原題:Breakaway)」は、シリーズ全体の設定を決定づける最も重要なエピソードであり、人類が月と共に「宇宙の孤児」となる絶望と、そこから始まる果てしない旅路への決意を描いたスペクタクル巨編です。

「1999年9月13日、月は地球の周回軌道を外れ、宇宙の放浪者となった」。

このあまりにも有名で、科学的には荒唐無稽とも言える大胆なプロットは、一体どのようにして描かれたのでしょうか?

本記事では、放送から半世紀を経てもなお色褪せない第1話のあらすじ、緻密なミニチュアワークによる特撮の見どころ、そしてジョン・コーニッグ司令官ら登場人物たちの重厚な人間ドラマについて徹底解説します。

第1話「はるかなる旅路」の詳細解説

物語の幕開け:不吉な予兆と新司令官の着任

物語の舞台は、西暦1999年の月面基地「ムーンベース・アルファ」。
人類はすでに月に恒久的な基地を築き、そこを拠点にさらなる深宇宙探査を進めていました。

9月9日、地球から一人の男が月へ到着します。彼の名はジョン・コーニッグ(マーティン・ランドー)。
彼は、前任の司令官に代わり、新たな指揮官として着任しました。彼の最大の任務は、新発見された惑星「メタ」への有人探査飛行を予定通りに実施することでした。

しかし、基地内には不穏な空気が流れていました。
着任早々、コーニッグは医療部門の責任者であるヘレナ・ラッセル博士(バーバラ・ベイン)から衝撃的な報告を受けます。

惑星メタへの探査訓練を行っていた宇宙飛行士たちが、次々と謎の脳障害を発症し、死亡していたのです。
彼らは凶暴化し、うわ言のように見えない何かに怯えながら息絶えていました。
コーニッグは当初、これを「宇宙ウイルス」の感染だと疑いますが、ヘレナは「放射能障害に似ているが、放射能は検出されていない」と、原因不明であることを告げます。

真の原因:核廃棄物の悪夢

調査を進めるコーニッグと、科学顧問のヴィクター・バーグマン教授(バリー・モース)は、ある事実にたどり着きます。
発症したパイロットたちは全員、月面の裏側にある「第1核廃棄物貯蔵エリア」の上空を飛行していたのです。

当時、地球のエネルギー問題は解決されていましたが、その代償として排出される大量の核廃棄物が、月の裏側に埋められていました。
第1エリアはすでに満杯で閉鎖され、現在は第2エリアが使用されていました。

バーグマン教授の分析により、閉鎖されたはずの第1エリアから、未知の強力な磁気エネルギーが漏れ出していることが判明します。
このエネルギーがパイロットの脳に影響を与えていたのです。
さらに恐ろしいことに、この磁気エネルギーは蓄積され続けており、臨界点を超えれば大爆発を起こす危険性がありました。

「月全体が巨大な爆弾の上に載っているようなものだ」。
事態の深刻さに気づいたコーニッグは、惑星メタへの探査計画を中止し、全力を挙げてこの危機に対処することを決断します。

運命の9月13日:月が地球を離れる日

コーニッグたちは、遠隔操作のイーグル号を使って第1エリアの核廃棄物を分散させようと試みますが、作業中にエネルギーが暴走し、第1エリアは壊滅的な爆発を起こします。

しかし、これは真の悪夢の序章に過ぎませんでした。
さらに巨大な「第2貯蔵エリア」でも同様のエネルギー上昇が確認されたのです。
コーニッグは、第2エリアの核廃棄物容器を一つずつ地表から引き離し、宇宙空間へ投棄することで誘爆を防ごうとする危険な賭けに出ます。

基地の全イーグル号が出動し、決死の作業が始まりますが、エネルギーの上昇スピードは予想を遥かに超えていました。
そして運命の時、1999年9月13日。

第2エリアで発生した磁気エネルギーの閃光は、連鎖的な大爆発を引き起こしました。
その爆発エネルギーは凄まじく、月そのものをロケットのように押し出す推進力となってしまいました。
巨大なG(重力加速度)がムーンベース・アルファを襲い、隊員たちは床に叩きつけられます。
窓の外では、月面が燃え上がり、地球が急速に遠ざかっていくのが見えました。
月は、地球の重力圏を振り切り、コントロール不能のまま太陽系の外へと飛び出してしまったのです。

苦渋の決断:宇宙の孤児として

爆発が収まった後、月は猛烈なスピードで宇宙空間を移動していました。
コーニッグ司令官は、生き残った311人の隊員たちと共に、アルファの損害状況を確認します。

通信システムは回復しましたが、地球との距離は絶望的なほど開いていました。
地球側からの通信で、地球でも月の離脱による潮汐力の影響で大災害が起きていることが伝えられます。

コーニッグは苦渋の決断を迫られます。
今あるイーグル号で地球へ帰還しようとしても、全員を運ぶことは不可能であり、月が離れてしまった今、地球へ戻るリスクも高すぎました。

「我々は地球へは帰れない。この月と共に生きる道を探すしかないのだ」。
コーニッグは全隊員に向けて演説を行い、ムーンベース・アルファを宇宙船として、新たな生存圏を探す旅に出ることを宣言します。
こうして、彼らの終わりのない放浪の旅が始まったのです。

特撮技術の結晶:イーグル号のリアリティ

第1話の最大の見どころは、何と言ってもブライアン・ジョンソン率いる特撮チームによる映像美です。
特に、ムーンベースの主力メカである「イーグル・トランスポーター(Eagle Transporter)」の発進、飛行、着陸のシークエンスは、ため息が出るほどの完成度です。

汚し塗装が施された船体、月面の粉塵を巻き上げる逆噴射ロケット、機能性を重視した無骨なデザイン。
これらは『スター・ウォーズ』や『エイリアン』に先駆ける「使い古された未来(Used Future)」の美学を提示しており、後のSF映画に多大な影響を与えました。

また、核廃棄物エリアが連鎖爆発を起こし、月面が火の海となるクライマックスシーンは、ミニチュア特撮の限界に挑んだ迫力ある映像となっています。

『スペース1999』第1話 参考動画

『スペース1999』第1話のまとめ

『スペース1999』第1話「はるかなる旅路」は、人類の慢心が招いた科学技術のしっぺ返しと、極限状態における人間の尊厳を描いたドラマです。

「核廃棄物の爆発で月が飛んでいく」という設定は、現代の科学常識からすれば荒唐無稽かもしれませんが、放送当時は冷戦下の核の恐怖や環境問題への関心が高まっていた時期であり、視聴者に強烈なリアリティと警鐘を与えました。

何より、故郷・地球を強制的に奪われ、漆黒の宇宙へ投げ出されるという絶望的なスタートは、他の明るい冒険SFとは一線を画す、本作独自の「哀愁」と「緊張感」を生み出しています。

このエピソードを見ることで、以降のシリーズで彼らがなぜ必死に「住める星」を探すのか、なぜ異星人に対して時に攻撃的になるのか、その心理的背景を深く理解することができるでしょう。

CG全盛の今だからこそ、手作りの特撮が持つ「重み」と、重厚なSFドラマの原点を、ぜひその目で確かめてみてください。

関連トピック

ムーンベース・アルファ:第1話の舞台であり、シリーズを通して主人公たちの「家」となる月面基地。直径4kmに及ぶ巨大施設で、居住区、司令室(メイン・ミッション)、発着場などが完備されている。

イーグル・トランスポーター:本作を象徴する万能宇宙船。中央のコンテナを換装することで、貨物輸送、人員輸送、救助、戦闘などあらゆる任務に対応する。その合理的で美しいデザインは、世界中のSFファンに愛されている。

ジェリー・アンダーソン:本作の製作総指揮。『サンダーバード』で大成功を収めた後、より大人向けの本格SFドラマを目指して本作を制作した。妻のシルヴィア・アンダーソンと共に、衣装やセットデザインにも独特の未来観を取り入れた。

1999年9月13日:作中で月が地球を離れた日。ファンの間では「Breakaway Day(ブレイクアウェイ・デー)」と呼ばれ、毎年この日にはSNSなどで記念イベントや投稿が行われている。

関連資料

Blu-ray『スペース1999 コレクターズ・ボックス』:HDリマスター化された高画質映像で、第1話の緻密な特撮ディテールを確認できる決定版ソフト。

プラモデル「イーグル・トランスポーター」:MPC社などから発売されている模型。第1話で活躍した様々なバリエーション(救助型、貨物型など)がキット化されており、根強い人気を誇る。

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