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【傑作SF】『スタートレック:ヴォイジャー』最大の問題作「イヤー・オブ・ヘル(Year of Hell)」!崩壊する艦とジェインウェイの執念

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【傑作SF】『スタートレック:ヴォイジャー』最大の問題作「イヤー・オブ・ヘル(Year of Hell)」!崩壊する艦とジェインウェイの執念

エピソード「地獄の1年」の概要

『スタートレック:ヴォイジャー』全172話の中で、ファンから「最も映画化してほしかったエピソード」「シリーズ最高傑作」と称賛される一方で、「あまりにも残酷すぎる」と語り継がれるのが、シーズン4第8・9話の前後編「イヤー・オブ・ヘル(原題:Year of Hell/邦題:地獄の1年)」です。

このエピソードでは、時間を自在に操作して歴史を書き換える「タイムシップ」を持つ強敵クレニム帝国が登場します。彼らの攻撃によりヴォイジャーはかつてないほど徹底的に破壊され、多くのクルーが命を落とし、ジェインウェイ艦長は狂気と紙一重の執念で孤独な戦いを強いられます。

当初はシーズン全体(1年間)を使って描かれる予定だったという壮大な構想が凝縮された、SFドラマ史に残る濃密なサバイバルストーリーを徹底解説します。

詳細:崩壊するヴォイジャーと時間の罠

【時間を「兵器」にする男、アノラックス】

物語の敵役となるのは、クレニム帝国の科学者アノラックスです。彼は巨大な「タイムシップ」を操り、特定の種族や惑星を歴史から完全に「消去」することで、現在の勢力図を書き換え、クレニム帝国を強大化させようとしていました。

しかし、彼の真の目的は侵略ではありませんでした。彼は過去の計算ミスによって、自身の妻と子供たちが暮らしていたコロニーを誤って消去してしまっていたのです。彼は愛する家族を取り戻すために、「妻が存在する完璧な時間線」を求めて何百年もの間、終わりのない歴史改変を繰り返していました。彼もまた、時間に囚われた哀しい被害者だったのです。

【ヴォイジャーの完全崩壊】

このエピソードの最大の見どころは、これまでのシリーズでは見られなかった「ヴォイジャーの徹底的な破壊描写」です。
通常、どんなにダメージを受けてもエピソードの最後にはピカピカに戻るのがスタートレックのお約束ですが、今回は違います。デッキは吹き飛び、ブリッジは炎に包まれ、医務室も機能停止。主要キャラクターであるトゥヴォックは失明し、チャコティとパリスは敵の捕虜となり、残されたクルーは救命ポッドで船を捨てる決断を迫られます。

ボロボロのタンクトップ姿で、廃墟と化した艦橋に一人残り、「私はこの船を絶対に諦めない!」と叫ぶジェインウェイ艦長の姿は、彼女の強さと脆さが同居するシリーズ屈指の名シーンとして知られています。

【幻の「シーズン構想」とリセットボタン】

実はこの「地獄の1年」は、脚本段階ではシーズン4全体を通して描く壮大なアーク(連続ドラマ)として構想されていました。しかし、当時の放送局側の事情により、2話完結の前後編に凝縮されることになったのです。

そのため、物語のラストには賛否両論ある「リセットボタン(歴史修正による原状回復)」が待っています。すべてが無かったことになる結末に対し、「これまでの苦労は何だったのか」と感じる視聴者もいますが、SF的な観点からは「アノラックスの執念が解かれた瞬間にこそ意味がある」と高く評価されています。たとえ記憶に残らなくとも、極限状態で見せたクルーたちの絆と自己犠牲の精神は、ヴォイジャーというチームの本質を浮き彫りにしました。

【ジェインウェイとアノラックスの鏡像関係】

このエピソードが優れているのは、主人公ジェインウェイと敵アノラックスが、「目的のためには手段を選ばず、過去や未来を犠牲にしてでも大切なものを守ろうとする」という点で鏡合わせの存在として描かれていることです。
アノラックスは「家族」のために、ジェインウェイは「クルー(家族)」のために戦います。もし一歩間違えば、ジェインウェイも彼のような怪物になっていたかもしれない――そんな危うさが、物語に深い陰影を与えています。

参考動画

まとめ

「イヤー・オブ・ヘル」は、華やかな未来を描くスタートレックにおいて、戦争の悲惨さと「時間」という不可逆なものの重さを描いた異色作です。

艦が破壊され、仲間が倒れていく絶望的な状況の中で、それでも「希望」という名の船を動かし続けるジェインウェイの姿は、リーダーシップの極致とも言えます。たとえ歴史が書き換わり、誰も覚えていない戦いになったとしても、その瞬間に彼らが示した勇気は、視聴者の心に「永遠」に刻まれるはずです。
アクション、SFギミック、哲学的な問いかけ、そして人間ドラマ。すべてが詰まったこの前後編は、間違いなく『ヴォイジャー』の最高傑作の一つです。

関連トピック

アノラックス (失われた妻を取り戻すために時間を操作し続ける悲劇の科学者)

クレニム帝国 (時空操作兵器を保有し、デルタ宇宙域の覇権を握ろうとする種族)

タイムパラドックス (過去を変えることで現在に矛盾が生じる現象)

バタフライエフェクト (些細な歴史改変が、数百年後に予期せぬ巨大な変化をもたらすこと)

レッド・アラート (非常警報。本エピソードではほぼ鳴りっぱなしの状態となる)

関連資料

DVD/Blu-ray 『スタートレック:ヴォイジャー シーズン4』

アクションフィギュア 「Playmates Star Trek Voyager Series」

書籍 『Star Trek: Voyager Companion』 (制作の裏側や脚本の初期構想について詳しく解説)

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