もしも『新スタートレック』のデータ少佐が人間だったら? 失う能力と、得る「不完全さ」を徹底考察

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もしも『新スタートレック』のデータ少佐が人間だったら? 失う能力と、得る「不完全さ」を徹底考察

概要:ピノキオの願いが叶ったら

『新スタートレック』(TNG)のクルーとして、その驚異的な能力でエンタープライズ号の危機を幾度も救ってきたアンドロイド、データ少佐。

彼はポジトロニック頭脳を持つ「機械」でありながら、その生涯を通じて「人間になりたい」と願い続けた、シリーズで最も愛されるキャラクターの一人です。

しかし、もしも、その願いが最初から叶っていたらどうなっていたでしょうか。

もしも、データ少佐がアンドロイドではなく、私たちと同じ「人間」として生まれていたら。

この記事では、「データ少佐 人間だったら」という究極の「if」シナリオを、彼が失うもの、得るもの、そして人間関係の変化という観点から深く考察します。

詳細考察:人間「データ」の光と影

超人から「ただの人間」へ:失うもの

もしデータ少佐が人間だったら、彼が『新スタートレック』で発揮した超人的な能力は、そのほとんどが失われることになります。

まず、彼の最大の武器である「ポジトロニック頭脳」がありません。

エンタープライズ号のオペレーションオフィサーとして、惑星の全データを瞬時に分析したり、敵艦の戦術パターンを数秒で解析したりすることは不可能になります。

彼は「完璧な記憶力を持つアンドロイド」ではなく、「非常に優秀だが、時には間違うこともある人間の士官」となるでしょう。

また、その強靭な身体能力も失われます。

重い障害物を軽々と持ち上げたり、宇宙空間や有害な環境下で平然と任務を遂行したりすることもできません。

彼は怪我をし、病気になり、そして何より「死の恐怖」と常に向き合うことになります。

TNG劇場版『ネメシス』で見せた自己犠牲的な最期も、もし彼が人間であれば、それは単なる「任務」ではなく、恐怖を乗り越えた「究極の勇気」として、まったく異なる意味合いを持ったことでしょう。

念願の「感情」:得るものと苦しむもの

データ少佐が人間になることで得る最大のものは、彼が最も切望した「感情」です。

彼はアンドロイドとして、ユーモアを理解しようと試みたり、友情を学んだりしてきました。

人間であれば、彼は最初から喜び、愛、そして友情の温かさを自然に感じ取ることができます。

しかし、光があれば影があるのが人間です。

彼は喜びと同時に、恐怖、怒り、悲しみ、嫉妬、絶望といったネガティブな感情とも向き合わなければなりません。

劇場版『ジェネレーションズ』で「感情チップ」を起動した際、彼は恐怖で叫び、些細なことで大笑いするなど、感情の制御に著しく苦しみました。

もし彼が人間だったら、その「感情の暴走」を生涯かけてコントロールする方法を学ばねばならないのです。

さらに、アンドロイドとして「差別される」側だった彼が、人間として「偏見を持つ」側に回る可能性さえあります。

「完璧な存在」から「不完全な存在」へ。

それこそが、彼が求めた「人間らしさ」の正体だったのかもしれません。

クルーとの新たな関係性

データが人間だったら、エンタープライズ号のクルーたちとの関係性も大きく変わっていたでしょう。

ジョーディ・ラ=フォージとの友情は、単なる「アンドロイドの修理・調整役」と「好奇心旺盛なアンドロイド」という関係を超え、より対等で感情的な絆に基づいたものになります。

互いの弱さや悩みを打ち明け合う、本当の意味での「親友」になれたはずです。

ピカード艦長との関係も変わります。

ピカード艦長は、法廷で「データの権利」(『人間の条件』)を守る必要はなく、最初から彼を「一人の部下」「一人の人間」として扱います。

アンドロイドとしての特異性ではなく、彼の人間性や能力を評価することになるでしょう。

恋愛においても、ターシャ・ヤーとの一夜や、他の女性クルーとの交流は、単なる「プログラムの模倣」や「探求」ではなく、緊張や高揚感を伴う「本物のロマンス」として経験することになります。

「人間になる」という探求の終わり

データ少佐のアイデンティティの核であり、彼の最大の魅力は、「人間になりたい」という純粋な探求心そのものでした。

もし彼が最初から人間だったら、その探求の旅は始まることさえありません。

彼の原動力が失われ、彼は「より良い士官になる」という、他のクルーと同じ目標を持つ「普通の人」になっていたかもしれません。

彼の無垢さ、純粋な好奇心、そして物事を客観的に見つめる視点。

それらはすべて、彼が「人間ではなかった」からこそ際立っていたのです。

人間データは、そのユニークさの多くを失ってしまう可能性がありました。

参考動画:感情チップの暴走

まとめ:アンドロイドだったからこその魅力

「もしもデータ少佐が人間だったら」。

彼は超人的な能力と引き換えに、彼が切望した「感情」と「人間らしさ」を手に入れたことでしょう。

しかし、それは同時に、彼の最大の魅力であった「人間とは何か?」という純粋な探求の終わりをも意味します。

彼は「完璧」ではなくなり、私たちと同じように間違い、悩み、苦しむ「不完全な人間」となります。

『新スタートレック』のデータ少佐が、なぜあれほどまでに私たちの心を惹きつけるのか。

それは、彼が「人間ではない」にもかかわらず、誰よりも「人間らしくあろう」と努力し続けた、そのひたむきな姿にあったのではないでしょうか。

『スタートレック:ピカード』で彼の物語が(ある種の)結末を迎えた今、改めてこの「if」を考えると、人間であることの素晴らしさと複雑さを同時に教えられます。

関連トピック

感情チップ

データの創造主であるスン博士が開発した、データに人間と同様の感情を体験させるデバイス。

劇場版『ジェネレーションズ』で起動され、彼の感情は暴走し、大きな混乱を引き起こしました。

ローア (Lore)

データの「兄」にあたるアンドロイド。

データとは対照的に、最初から完璧な感情を持っていましたが、そのために傲慢で残忍なサイコパスとなりました。データが感情を持たなかったのは、ローアの失敗があったからです。

スタートレック:ピカード

『新スタートレック』の続編。

シーズン1およびシーズン3において、データ少佐の「その後」と、彼の意識と人間性の探求の結末が描かれています。

『人間の条件』 (TNGシーズン2)

データの権利をめぐり、彼が「機械」なのか「生命体」なのかが法廷で争われたエピソード。

ピカード艦長がデータの弁護に立ち、彼の生命としての権利を勝ち取りました。

関連資料

『新スタートレック』 [DVD/Blu-ray BOX]

データ少佐の「人間性への探求」のすべてが詰まった、オリジナルシリーズです。

彼の成長とクルーとの絆を追体験できます。

『スタートレック:ピカード』 [シーズン1&3配信・Blu-ray]

TNGから数十年後、データの物語に一つの区切りをつける重要なシリーズです。

彼が最終的に見つけた「人間性」の答えが描かれます。

『スタートレック ジェネレーションズ』 [映画]

データが初めて「感情チップ」を使用する映画作品。

本記事で触れた「感情の暴走」がコミカルかつシリアスに描かれています。

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