概要:映画版プロデューサーが放つ、知られざる「若き日のスーパーマン」
1988年から1992年にかけて全米で放送されたテレビドラマシリーズ『スーパーボーイ(原題:Superboy / The Adventures of Superboy)』をご存知でしょうか?
本作は、後に大ヒットとなる『ヤング・スーパーマン(Smallville)』よりも10年以上前に制作された、クラーク・ケントの大学時代を描く実写作品です。
特筆すべきは、その制作陣。クリストファー・リーヴ主演の映画『スーパーマン』シリーズ(1978年〜)を手掛けたアレクサンダー・サルキンド&イリヤ・サルキンド親子がプロデュースを担当しています。
映画版のノウハウを活かしたフライングシーンや、コミックに忠実なヴィランの登場など、往年のファンを唸らせる要素が満載でありながら、長らく権利問題により再放送やソフト化が難航し、一時期は「幻の作品」と化していました。
本記事では、2人の主演俳優による作風の違い、衝撃の主役交代劇、そしてマニアが熱狂するカルト的な魅力について、4,000文字を超えるボリュームで徹底解説します。
オープニング映像
当時の特撮技術と80年代後半の空気感を感じさせるオープニングはこちらです。
(※シーズンによって主演俳優とテーマ曲のアレンジが異なります)
詳細解説:なぜ『スーパーボーイ』はカルト的人気を誇るのか?
あらすじと世界観:フロリダの大学で繰り広げられるヒーロー活動
物語の舞台は、フロリダ州にある架空の大学「シャスター大学(Shuster University)」。
スーパーマンの原作者ジョー・シャスターにちなんで名付けられたこの大学で、クラーク・ケントはジャーナリズムを専攻する学生として生活しています。
『ヤング・スーパーマン』が「飛ぶな、スーツを着るな(No Tights, No Flights)」というルールで青春ドラマに徹したのに対し、本作のクラークは第1話から青と赤のコスチュームを身にまとい、自由に空を飛び回ります。
普段は地味なメガネの学生、事件が起きれば寮の窓から飛び出してスーパーボーイに変身するという、まさに王道のスタイル。
幼馴染のラナ・ラングや、ペリー・ホワイトの甥であるルームメイトT.J.ホワイトと共に、大学内で起こる怪事件やマッドサイエンティストの脅威に立ち向かうのが基本プロットです。
シーズンごとの展開と「2人のスーパーボーイ」
このドラマを語る上で避けて通れないのが、シーズン1とシーズン2以降での劇的な変化です。
主演俳優の交代に加え、脚本のトーン、ヴィランの質、そしてレックス・ルーサーの設定までもが大きく変更されました。
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シーズン1(1988-1989):青春キャンパスドラマ路線
初代主演はジョン・ヘイムズ・ニュートン。
彼の演じるスーパーボーイは少し声が低く、古典的な二枚目スタイルでした。
初期のエピソードは、大学でのバスケットボールの試合や、少し不思議な超常現象を解決するといった、比較的ライトな内容が中心。
レックス・ルーサーもまだ「ハゲていない」、ただの嫌味な金持ち学生として描かれており、スーパーボーイに嫉妬して嫌がらせをする程度の存在でした。 -
シーズン2〜4(1989-1992):本格コミック・アクション路線
シーズン2からは主演がジェラルド・クリストファーに交代。
彼はコミックファンそのものであり、自ら脚本や制作にも関与し、より「原作に忠実なスーパーボーイ像」を追求しました。
物語のトーンは一気にダークかつシリアスになり、舞台も大学から「超常現象調査局(The Bureau for Extra-Normal Matters)」へとシフト。
何より、原作ファンにはたまらない有名ヴィランが次々と登場するようになります。
特筆すべき見どころ:マニアを唸らせるヴィランの造形
本作の最大の魅力は、当時のテレビ予算の限界に挑んだヴィランたちの実写化です。
特にシーズン2以降は、「え、これをテレビでやるの?」と思わせるキャラクターが登場します。
- ビザロ(Bizarro):スーパーボーイの不完全な複製。悲哀に満ちたその姿は、特殊メイクによって見事に再現されました。
- メタロ(Metallo):クリプトナイトを動力源とするサイボーグ。胸のハッチが開いて緑の光を放つシーンは必見です。
- Mr. Mxyzptlk:5次元から来た厄介な小人。原作のイメージそのままに、トリッキーな魔法でスーパーボーイを翻弄します。
CGが未発達な時代ゆえに、着ぐるみや特殊メイク、ミニチュア特撮を駆使した映像には、現代の作品にはない「特撮の温かみと執念」が詰まっています。
特に飛行シーンは、映画版と同じプロデューサーの手腕により、当時のテレビシリーズとしては破格のクオリティを誇っていました。
制作秘話:泥沼の主役交代劇と権利問題
ファンにとって衝撃だったのは、シーズン1終了後の主演交代劇です。
初代のジョン・ヘイムズ・ニュートンは、制作陣に対し20%のギャラアップを要求しました。
さらに不運なことに、同時期に飲酒運転(DUI)での逮捕報道が出てしまったことで、プロデューサーのサルキンド親子は彼の降板を即決したと言われています。
その結果、急遽抜擢されたのがジェラルド・クリストファーでした。
彼はオーディション時、すでに30歳前後でしたが、その童顔と筋肉質な肉体、そして何より「スーパーマンへの愛」が決め手となりました。
皮肉なことに、この交代によって作品の質は向上し、シリーズはシーズン4まで続く人気番組へと成長しました。
しかし、番組終了後はさらに大きなトラブルに見舞われます。
ワーナー・ブラザースとサルキンド家の間で「スーパーボーイ」の権利を巡る訴訟が泥沼化。
この影響で、本シリーズは再放送が行われず、長年にわたりVHSやDVDが発売されない「封印期間」が続きました。
2000年代に入ってようやく権利関係が整理され、完全版DVDがリリースされたことで、再評価の波が訪れたのです。
キャストとキャラクター紹介
本作のキャラクターは、シーズンによってその役割や性格が大きく変化するのが特徴です。
クラーク・ケント / スーパーボーイ
演:ジョン・ヘイムズ・ニュートン(S1) / ジェラルド・クリストファー(S2-S4)
シャスター大学に通う大学生。
ジョン・ヘイムズ・ニュートン版は、少し生意気で若さゆえの荒削りな面が強調されていました。
一方、ジェラルド・クリストファー版は、より知的で誠実、そしてクリストファー・リーヴのスーパーマンを彷彿とさせる「優しさ」を湛えています。
特にクリストファー版は、変身後の凛々しさと、クラーク時のナード(オタク)な演技の使い分けが絶妙で、歴代最高のクラーク・ケントの一人として推す声も少なくありません。
ラナ・ラング
演:ステイシー・ハイダック
クラークの幼馴染であり、永遠のヒロイン。
ロイス・レインが登場しない本作において、彼女はヒロインでありながら、事件を捜査する探偵役も担います。
スーパーボーイの正体を知らない設定ですが、何度も「クラーク=スーパーボーイでは?」と疑う鋭い勘を持っています。
全シーズンを通して出演し、ファッションや髪型の変化で80年代〜90年代の流行を体現しました。
レックス・ルーサー
演:スコット・ウェルズ(S1) / シャーマン・ハワード(S2-S4)
スーパーボーイの宿敵。
シーズン1ではただの「いじめっ子」でしたが、シーズン1最終話の実験事故で髪を失い、シーズン2からは俳優も変更。
シャーマン・ハワード演じるルーサーは、狂気と知性を兼ね備えた真のヴィランへと変貌しました。
彼とスーパーボーイの対決は、単なる力比べではなく、知能戦の要素が強く描かれています。
キャストの代表作品と経歴
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ジェラルド・クリストファー(スーパーボーイ役)
本作終了後、彼は『Lois & Clark: The New Adventures of Superman』のオーディションに参加し、実は最終選考まで残っていました。
しかし、プロデューサーが「彼はすでにスーパーボーイを演じていた」という事実を知り(当時は権利問題でその事実がネガティブに捉えられた)、不採用になったという逸話があります。
現在は俳優業からは一線を引きつつも、ファンのためのイベント等には積極的に参加しています。 -
ステイシー・ハイダック(ラナ・ラング役)
『シークエスト(seaQuest DSV)』のキャサリン・ヒッチコック少佐役や、昼ドラ(ソープオペラ)の『The Young and the Restless』『Days of Our Lives』での悪女役として、アメリカのお茶の間で長く活躍しています。
彼女のキャリアにおいて、『スーパーボーイ』は記念すべきブレイク作品となりました。
まとめ:社会的評価と後世への影響
『スーパーボーイ』は、批評家サイトRotten TomatoesやIMDbにおいて、決して満点の評価を得ているわけではありません。
低予算ゆえのチープさや、シーズン1の方向性の迷走は否定できない事実です。
しかし、コミックファンからの評価は非常に高く、特に「クリストファー・リーヴの映画版と、現代のドラマ版を繋ぐミッシングリンク」として重要視されています。
ジェラルド・クリストファーが演じた、原作へのリスペクトに溢れるスーパーボーイ像は、後の『Lois & Clark』や『Smallville』、そして近年の『Superman & Lois』に至るまで、テレビドラマにおけるスーパーマン像の基礎を築いたと言っても過言ではありません。
もしあなたが「クリストファー・リーヴのスーパーマンが好き」で、まだこの作品を見ていないなら、ぜひチェックしてみてください。
そこには、CG全盛の現代では失われてしまった、手作りの特撮と真っ直ぐなヒーロー魂が息づいています。
作品関連商品
現在、本作を視聴する最も確実な方法は、Warner Archive Collectionから発売されているDVDを入手することです。
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Superboy: The Complete First Season
ジョン・ヘイムズ・ニュートン主演のシーズン1全26話を収録。特典映像として、当時のオーディション風景などが含まれている場合があります。 -
Superboy: The Complete Second Season
ジェラルド・クリストファー主演、シャーマン・ハワード(レックス・ルーサー役)登場の転換点となるシーズン。 -
Superboy: The Complete Third & Fourth Seasons
シリーズ完結までを収録。より深みを増したストーリーと、衝撃の結末を見届けることができます。
※日本国内盤のDVDは未発売または入手困難な状況が続いていますが、輸入盤DVD(リージョンフリーのプレイヤー等が必要な場合あり)であればAmazonなどで購入可能です。

