【徹底解説】映画『天地創造』(1966)のあらすじと見どころ!巨匠ジョン・ヒューストンが描く旧約聖書の世界を完全網羅
概要
1966年に公開された映画『天地創造』(原題: The Bible: In the Beginning…)は、キリスト教の聖典である「旧約聖書」の冒頭「創世記」を圧倒的なスケールで映像化した歴史的大作です。
監督を務めたのは、『マルタの鷹』や『アフリカの女王』などで知られる巨匠ジョン・ヒューストン。
彼は本作で監督のみならず、神の声、そして物語の重要な役割を担うノア役としても出演し、その多才ぶりを発揮しました。
本作は、世界の始まりからアブラハムの試練に至るまでのエピソードを、当時のハリウッドの粋を集めた特撮技術と豪華キャストで描き出しています。
製作はイタリアの伝説的プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが担当。
上映時間は約3時間に及び、壮大なオーケストラ音楽が物語に神聖な重厚感を与えています。
単なる宗教映画の枠を超え、人類の根源的な問いや葛藤を描いた壮大な人間ドラマとして、半世紀以上経った今もなお色褪せない魅力を放っています。
予告編
詳細(徹底解説)
あらすじと世界観
本作は、光が闇を分かつ「天地創造」の瞬間から始まります。
神が六日間で世界を創り、七日目に休息をとるプロセスが、1960年代当時の最先端映像技術によって神秘的に表現されています。
物語は大きく分けて、「アダムとエバ」「カインとアベル」「ノアの方舟」「バベルの塔」「アブラハムとイサク」という、誰もが一度は耳にしたことがある有名なエピソードによって構成されています。
全編を通して流れるのは、「神と人間との契約」という重厚なテーマです。
楽園からの追放、兄弟間の嫉妬による人類初の殺人、堕落した人類への審判としての洪水など、人間の弱さと罪、そして信仰の尊さが壮大なビジュアルと共に綴られます。
シーズン/章ごとの展開
まず、エデンの園で無垢に生きるアダムとエバが、蛇の誘惑に負けて知恵の実を食べてしまう場面。
ここでは「恥」や「罪」の自覚が象徴的に描かれ、楽園を追われた二人の苦難が始まります。
続いて、その息子たちであるカインとアベルの悲劇。
神への捧げ物を巡る嫉妬から、カインが弟を殺害するというエピソードは、暴力の歴史の始まりとして重く描写されています。
そして本作のハイライトの一つである「ノアの方舟」。
何十年もの歳月をかけて巨大な舟を造るノアの執念と、ついに訪れる大洪水のシーンは圧巻です。
最後を飾るのは、信仰の父と呼ばれるアブラハムの物語。
老いて得た最愛の息子イサクを神に捧げるよう命じられるという、究極の試練が静かながらも力強く描かれます。
特筆すべき見どころ
本作の最大の見どころは、何と言っても「ノアの方舟」のシークエンスです。
ジョン・ヒューストン自らが演じるノアが、動物たちを次々と舟に誘導していくシーンでは、実際に生きた動物たちが多数使用されました。
つがいになった百獣の王ライオンから、小さな昆虫までが舟に乗り込む様子は、実写ならではの説得力とユーモア、誠実さに満ちています。
また、「バベルの塔」の建設シーンも特筆に値します。
天に届こうとする人間の傲慢さを象徴する巨大な塔のセットは、その威容だけで観客を圧倒します。
CGが存在しない時代に、これほどまでのスケール感を実現した美術スタッフの情熱には、現代の視聴者も感銘を受けるはずです。
制作秘話・トリビア
実は、当初の計画では本作は「聖書」全体を網羅する全3部の超大作になる予定でした。
しかし、あまりにも膨大な製作費と時間がかかることから、「創世記」の途中で物語を終える形になったと言われています。
また、アダムとエバのシーンでは、演者が本当に全裸のように見えるよう、巧みなカメラワークと肌色のタイツ、メイクが駆使されました。
当時の検閲制度とのせめぎ合いの中で、いかに「神聖な肉体」を表現するかが大きな課題だったそうです。
さらに、エバを演じたウラ・ベルグリッドは当時全くの無名でしたが、その「無垢な美しさ」が買われて大抜擢されました。
キャストとキャラクター紹介
ノア:ジョン・ヒューストン
- 本作の監督自身が演じています。
神の言葉を信じ、周囲の嘲笑を浴びながらも黙々と方舟を造り続ける実直な老人。
動物たちを愛でる姿には、監督自身の温厚な人柄も投影されており、観る者の心を和ませます。
アブラハム:ジョージ・C・スコット
- 神への絶対的な信仰と、息子への愛の間で引き裂かれる苦悩を演じました。
後に『パットン大戦車軍団』でアカデミー主演男優賞を受賞する名優の、重厚な演技が光ります。
サラ:エヴァ・ガードナー
- アブラハムの妻。老いてから子供を授かるという神の奇跡を信じきれず、初めは笑ってしまいますが、後に深い母性を発揮します。
ハリウッドを代表する美女が、静かな気品を持って演じています。
アダム:マイケル・パークス
- 人類最初の男。楽園での無垢な表情から、蛇に唆され罪を犯した後の絶望感まで、繊細な表情の変化を表現しています。
キャストの代表作品と経歴
ジョージ・C・スコットは、その圧倒的な存在感で1960年代から70年代にかけてハリウッドを牽引しました。
エヴァ・ガードナーは「世界一美しい動物」と称された黄金期のスターで、本作でもその衰えない美貌を披露しています。
リチャード・ハリス(カイン役)は後に『ハリー・ポッター』シリーズの初代ダンブルドア校長を演じることになる名優。
若き日の彼の荒々しい演技は、本作でも強烈な印象を残します。
まとめ(社会的評価と影響)
映画『天地創造』は、公開当時その壮大なビジュアルと再現度の高さで大きな注目を集めました。
第39回アカデミー賞では作曲賞にノミネートされるなど、芸術的な評価も得ています。
宗教的なテーマを扱いながらも、人間関係の対立や葛藤、自然への畏怖を普遍的に描いているため、信仰の有無に関わらず楽しめるエンタメ大作となっています。
また、ノアの方舟のイメージは、その後の多くの映画におけるビジュアルのスタンダードとなりました。
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