【神回解説】ドラマ『超人ハルク』唯一の同族対決！「ハルク・ライバル出現（The First）」の全貌と衝撃の結末

「ハルク・ライバル出現（The First）」の概要

1981年に放送されたドラマ『超人ハルク』シーズン4の第12・13話「ハルク・ライバル出現（原題：The First）」は、シリーズ全82話の中で唯一、「ハルク以外のガンマ線変異体」が登場する伝説的なエピソードです。

長きにわたり孤独な逃亡生活を送ってきた主人公デビッド・バナーが、自分より30年も前に「ハルク」になった男が存在したことを知り、治療法への希望と、力に取り憑かれた人間の狂気に対峙する物語です。

「もしハルクの力を悪用する者がいたらどうなるか？」というテーマを突き詰めた本作は、後の映画版やコミックにおける「アボミネーション」や「レッドハルク」の原型とも言える、ファン必見の重要なエピソードとなっています。

30年前の「最初のハルク」伝説

デビッド・バナーは、ある町で「30年前に凶暴な怪物が現れた」という噂を耳にします。

調査を進めたデビッドは、その怪物の正体が、今は町で孤独に暮らす病弱な老人、デル・フライ（演：ハリー・タウンズ）であることを突き止めます。

フライはかつてジェフリー・クライヴ博士の助手として働き、自らを実験台にしてガンマ線を浴びていましたが、現在は重度の関節炎に苦しみ、町の人々からもいじめられる惨めな生活を送っていました。

治療法への希望と、邪悪な誘惑

デビッドはフライに接触し、クライヴ博士が遺した研究データの中に、変身を解く「治療法（Cure）」があることを発見します。

二人は協力して廃墟となった研究所を復旧させますが、その動機は正反対でした。

デビッドは「ハルクを消し去る」ことを望んでいましたが、長年虐げられてきたフライは、「若さと力を取り戻し、自分を馬鹿にした連中に復讐する」ことを目論んでいたのです。

史上初のハルク対決：善なる怪物 vs 悪なる怪物

実験装置が稼働し、フライは再び大量のガンマ線を浴びることに成功します。

しかし、現れたのはデビッドのハルクとは異なる、邪悪な意思を持った緑の怪物（演：ディック・デュロック）でした。

フライの怪物は町へ繰り出し、破壊と殺戮を行おうとします。それを止めるためにデビッドも変身し、シリーズ史上初となる「ハルク対ハルク」の激突が勃発します。

本能で動くが純粋な心を持つハルクに対し、明確な殺意と悪意を持って暴れるフライの怪物は、ハルクにとって鏡に映った「最悪の可能性」そのものでした。

悲劇的な結末

激闘の末、フライの怪物は警察隊の一斉射撃を浴びて倒れます。

死の間際、変身が解けて元の老人の姿に戻ったフライは、力の代償として命を落とします。

デビッドは治療法を手に入れる寸前でしたが、フライの暴走によって研究所とデータは破壊され、再び孤独な旅路へと戻ることを余儀なくされます。

「力は、それを持つ者の心によって善にも悪にもなる」という重い教訓を残し、物語は幕を閉じます。

「ハルク・ライバル出現」は、単なるモンスターバトルにとどまらず、人間の「弱さ」と「欲望」を深く描いた名作です。

自分と同じ境遇の理解者を得たと思ったデビッドが、その相手によって最大の希望（治療）を打ち砕かれる展開は、シリーズ屈指の絶望感を与えます。

また、デル・フライ役のハリー・タウンズが見せる、哀れな老人から狂気的な悪役への変貌ぶりは圧巻であり、このエピソードをより一層ドラマチックなものにしています。

MCU（マーベル・シネマティック・ユニバース）全盛の今だからこそ、CGなしで描かれたこの「人間臭い」対決の重みが、改めて評価されるべきでしょう。