【元祖おバカ映画】『ケンタッキー・フライド・ムービー』徹底解説!『燃えよドラゴン』パロディから豪華カメオまで伝説の笑撃
『ケンタッキー・フライド・ムービー』の概要
1977年に公開された『ケンタッキー・フライド・ムービー』(原題:The Kentucky Fried Movie)は、コメディ映画の歴史を変えた伝説のオムニバス・スケッチ映画です。
監督は後に『ブルース・ブラザース』や『マイケル・ジャクソン スリラー』を手掛けるジョン・ランディス。
そして脚本・製作総指揮を務めたのは、後に『フライングハイ』『裸の銃(ガン)を持つ男』シリーズで世界を笑いの渦に巻き込むことになる「ZAZ」こと、デヴィッド・ザッカー、ジム・エイブラハムズ、ジェリー・ザッカーの3人組です。
本作は彼らの商業映画デビュー作であり、そのスタイル——真面目な顔してふざけ倒す「デッドパン・コメディ」——の原点でもあります。
内容は、架空のニュース、CM、映画予告編、そして長編映画のパロディなどが支離滅裂に続くコント集。
特に、映画の約半分を占める『燃えよドラゴン』のパロディ「フィスト・オブ・イェン」は、本家顔負けのアクションとクオリティで描かれる傑作中の傑作です。
低予算ながら爆発的なヒットを記録し、その後のパロディ映画ブームの火付け役となった、愛すべきナンセンス・コメディの金字塔を徹底解説します。
『ケンタッキー・フライド・ムービー』の予告編
『ケンタッキー・フライド・ムービー』の詳細(徹底解説)
あらすじと構成:テレビのチャンネルを回す感覚
本作にはメインのストーリーはありません。
「11時のニュース」のキャスターたちが真顔で読み上げる下品なニュースや、「死後の世界へのなぐさめ」を謳う怪しいレコードのCM、教育映画のパロディなどが、まるでチャンネルをザッピングしているかのようなテンポで次々と映し出されます。
この構成は、ZAZの3人が運営していた即興コメディ劇団「ケンタッキー・フライド・シアター」の舞台をそのまま映像化したものであり、その過激さとスピード感は当時画期的でした。
現代のYouTubeやTikTokのショート動画を先取りしていたとも言える、飽きさせない構成が見事です。
伝説のカンフー・パロディ「フィスト・オブ・イェン」
本作のハイライトであり、ファンの間で最も語り草となっているのが、映画の中盤に挿入される劇中劇『フィスト・オブ・イェン(A Fistful of Yen)』です。
これはブルース・リーの『燃えよドラゴン』を徹底的にパロディ化した30分以上に及ぶ長編スケッチです。
- あらすじ:武道家ルー(エヴァン・C・キム)は、英国政府の依頼を受け、悪の組織を率いるクラーン博士(ボン・スー・ハン)の要塞へ潜入し、武術大会に出場する。
- 見どころ:セットや衣装、カメラワークに至るまで『燃えよドラゴン』を忠実に再現しつつ、要所要所でとんでもないギャグを挟んできます。
- 「とてつもない規模の軍隊」と言いつつ、数人しかいない雑魚敵。
- 敵のアジトで迷い込んだ先には、「オズの魔法使い」の世界が広がっている。
- クライマックスの戦闘中、なぜか敵が自身の弱点を丁寧にアナウンスしてしまう。
主演のエヴァン・C・キムはブルース・リーに生き写しの動きを見せ、悪役のボン・スー・ハンも本物のテコンドーの達人であるため、アクション自体のクオリティが無駄に高いのが笑いを増幅させます。
時代を先取り?過激すぎるスケッチの数々
- 「カトリック・ハイスクール・ガールズ・イン・トラブル」:70年代のエクスプロイテーション映画(低俗なB級映画)の予告編パロディ。女子高生が不良に絡まれるという典型的な展開を、大袈裟かつ扇情的に描きます。
- 「フィール・ア・ラウンド(感覚映画)」:映画館の座席の後ろに係員が立ち、スクリーンの状況に合わせて観客に匂いを嗅がせたり、耳元で叫んだり、ナイフで突いたりする「究極の4D体験」を描いたコント。あまりにアナログな手法に爆笑必至です。
- 「酸化亜鉛(Zinc Oxide)」:典型的な教育フィルムのパロディ。「もし世界から酸化亜鉛がなくなったら?」という主婦の問いに対し、突然画面から色が消えたり、車が分解したりと、シュールな展開を見せます。
豪華カメオ出演と制作秘話
低予算映画ながら、ジョン・ランディスやZAZの人脈により、驚くべきスターがカメオ出演しています。
- ドナルド・サザーランド:「不器用なウェイター」役として出演。ただひたすらに物を落とし、転びまくるというスラップスティックな演技を披露。
- ジョージ・レーゼンビー:2代目ジェームズ・ボンド俳優。「フィスト・オブ・イェン」の中で、「建築家」として一瞬だけ登場し、007ネタを彷彿とさせるセリフを言います。
- ヘンリー・ギブソン:『ナッシュビル』などで知られる名優が、死刑執行反対を訴える(しかし内容はとんでもない)団体の代表として出演。
キャストとキャラクター紹介
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エヴァン・C・キム(ルー役)
『燃えよドラゴン』のブルース・リーを完璧に模写した俳優。
その動きのキレは本物で、後に『ダーティハリー5』でクリント・イーストウッドの相棒役に抜擢されるほどの実力者です。
真剣な表情でふざけた敵を倒していく姿は、コメディ演技の模範と言えます。 -
ボン・スー・ハン(クラーン博士役)
合気道とテコンドーの達人であり、映画『ビリー・ジャック』のアクション指導でも知られる武道の大家。
本作では義手が様々な武器(というより日用品)に変わる悪の親玉を怪演。
「お前の流派はなんだ?」「デトロイト流だ」というやり取りは名シーンです。 -
ビル・ビクスビー(本人役)
テレビドラマ『超人ハルク』のバナー博士役で有名な俳優。
「サン・クエンティン刑務所へようこそ」という架空のCMに本人役で登場し、爽やかな笑顔で過酷な刑務所ライフを紹介するというブラックジョークを演じました。
『ケンタッキー・フライド・ムービー』のまとめ(社会的評価と影響)
『ケンタッキー・フライド・ムービー』は、公開当時わずか65万ドルという低予算で製作されましたが、全米で2000万ドル以上を稼ぎ出す大ヒットとなりました。
この成功がなければ、後のZAZトリオによる『フライングハイ』も『裸の銃を持つ男』も生まれず、ジョン・ランディスが『ブルース・ブラザース』を撮ることもなかったでしょう。
つまり、80年代コメディ映画の源流はここにあるのです。
「タブーを恐れない」「権威を笑い飛ばす」「映画の文法自体をパロディにする」という彼らのスタイルは、後の『サウスパーク』や『ファミリー・ガイ』といった現代のアダルト・アニメーションにも多大な影響を与えています。
下品で不謹慎、でも最高に知的で面白い。
コメディ映画ファンを自称するなら、避けては通れない必修科目です。
作品関連商品
- Blu-ray:『ケンタッキー・フライド・ムービー デザイン・オブ・ザ・デッド タフ&クレイジー・エディション』
(高画質化に加え、ジョン・ランディスらによる音声解説が収録されており、制作の裏話が満載です) - 関連映画:『フライングハイ』
(ZAZトリオの次作。本作のスタイルを長編ストーリー映画に落とし込み、パロディ映画の最高傑作と称される作品) - 関連映画:『燃えよドラゴン』
(本作の「フィスト・オブ・イェン」を見る前に、あるいは見た後に観賞すると、その再現度の高さに驚愕します)

