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【名作解説】映画『荒野の七人』はなぜ面白い?黒澤明『七人の侍』との違いやマックイーンvsブリンナーの確執まで

アクション・冒険
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【名作解説】映画『荒野の七人』はなぜ面白い?黒澤明『七人の侍』との違いやマックイーンvsブリンナーの確執まで

概要:ハリウッドが認めた、世界で最も有名なリメイク西部劇

1960年に公開された映画『荒野の七人(原題:The Magnificent Seven)』
西部劇史上、最も愛され、最も口ずさまれたテーマ曲を持つこの作品は、巨匠・黒澤明の傑作時代劇『七人の侍』(1954年)の舞台をメキシコの寒村に移してリメイクしたアクション大作です。

監督は『大脱走』のジョン・スタージェス
主演のユル・ブリンナーを筆頭に、スティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンといった、後にハリウッドを背負って立つことになるスターたちが「7人のガンマン」として集結しました。
単なるコピー作品に終わらず、西部開拓時代の過酷な現実や、ガンマンたちの孤独と美学をエンターテインメントとして昇華させた本作は、リメイク映画の成功例として映画史にその名を刻んでいます。

本記事では、オリジナル版とのキャラクター比較から、撮影現場で勃発していた主演俳優同士のプライドをかけた戦い、そしてエルマー・バーンスタインによる不滅の音楽について、4,000文字以上のボリュームで徹底解説します。

オープニング映像(テーマ曲)

誰もが一度は運動会やCMで耳にしたことがあるはず。
エルマー・バーンスタイン作曲による、高揚感あふれる伝説のメインテーマと予告編はこちらです。

詳細解説:刀から銃へ。魂を受け継いだ7人の男たち

あらすじと世界観:国境の南、20ドルの報酬

舞台はメキシコの貧しい農村。
毎年、収穫の時期になると野盗の首領カルヴェラ(イーライ・ウォラック)率いる一味が現れ、作物を根こそぎ奪っていきます。
絶望した村の長老たちは、わずかな金を持ってアメリカ国境の町へ向かい、村を守ってくれる「用心棒」を探します。

そこで出会ったのが、凄腕のガンマン、クリス(ユル・ブリンナー)。
彼は「金はないが、食うものだけはある」という村人たちの悲痛な願いを聞き入れ、仲間集めを開始します。
集まったのは、クリスを含めて7人。
報酬はたったの20ドル(現在の価値でも数万円程度)。
それでも彼らは、それぞれの理由とプライドを胸に、圧倒的不利な戦いへと身を投じていきます。

『七人の侍』との比較:キャラクターの再構築

本作が優れている点は、『七人の侍』のプロットを忠実になぞりつつ、キャラクターを西部劇向けに巧みにアレンジしていることです。
特に、「菊千代(三船敏郎)」と「勝四郎(木村功)」という二人の若者キャラクターを、本作ではチコ(ホルスト・ブッフホルツ)一人に統合しています。
また、「久蔵(宮口精二)」のストイックな剣豪キャラは、ナイフ使いのブリット(ジェームズ・コバーン)へと見事に変換されました。

  • 勘兵衛(志村喬)クリス(ユル・ブリンナー):冷静沈着なリーダー。
  • 五郎兵衛(稲葉義男)ヴィン(スティーブ・マックイーン):右腕的存在。
  • 平八(千秋実)オライリー(チャールズ・ブロンソン):子供たちに慕われる薪割り担当。
  • 久蔵(宮口精二)ブリット(ジェームズ・コバーン):寡黙な達人。
  • 菊千代+勝四郎チコ(ホルスト・ブッフホルツ):農民出身の若者。

さらに本作独自のキャラクターとして、金鉱を探すハリーや、過去のトラウマに怯えるリーといった人間臭いガンマンが追加されており、物語に厚みを与えています。

制作秘話:マックイーンの「主役食い」作戦

撮影現場では、主演のユル・ブリンナー(当時すでに大スター)と、まだ若手だったスティーブ・マックイーンの間で激しい火花が散っていました。
マックイーンは、自分がブリンナーの引き立て役で終わることを良しとせず、あらゆる手段で画面の中で目立とうとしました。

  • ブリンナーがセリフを喋っている後ろで、帽子を脱いで弄ぶ
  • 馬に乗って移動するシーンで、わざと体を大きく揺らして視線を集める
  • ブリンナーが土の山を作って身長を高く見せようとすると、マックイーンがそれを崩す。

ブリンナーはこれに激怒し、「これ以上やるなら帽子を取るぞ(=お前のハゲ頭を見せるぞ、という冗談めいた脅し)」と言ったとか。
しかし、この二人の緊張感があったからこそ、劇中のクリスとヴィンのプロフェッショナルなライバル関係がリアルに映し出されたとも言われています。
ちなみに、後に二人は和解し、ブリンナーがマックイーンを称賛するコメントを残しています。

キャストとキャラクター紹介

7人のガンマンと、憎むべき悪役を紹介します。

クリス・アダムス

演:ユル・ブリンナー / 吹替:小林修(ゴールデン洋画劇場版)

ケージャン(フランス系移民)の黒ずくめのガンマン。
スキンヘッドと鋭い眼光がトレードマーク。
常に冷静で、戦略眼に優れています。
「勝ったのは農民たちだ。我々はまた負けた」というラストの名台詞は、オリジナル版の精神をそのまま受け継いでいます。

ヴィン

演:スティーブ・マックイーン / 吹替:内海賢二

賞金稼ぎだったが、今は落ちぶれてギャンブルで食い繋いでいた男。
クリスと共に霊柩車の御者を買って出るシーンで意気投合し、最初の仲間になります。
皮肉屋ですが腕は立ち、クリスの最高の相棒となります。
マックイーンはこの役で、「何もしていないのにカッコいい」という独自のスタイルを確立しました。

ブリット

演:ジェームズ・コバーン / 吹替:小林清志

ナイフ投げの名手。
セリフは極端に少なく、行動で語る男。
彼が牛と一騎打ちをするシーンや、飛んでいる虫をナイフで仕留めるシーンは語り草です。
『七人の侍』の久蔵ポジションであり、最もファンが多いキャラクターの一人です。

ベルナルド・オライリー

演:チャールズ・ブロンソン / 吹替:大塚周夫

アイルランド系とメキシコ系のハーフ。
腕力自慢ですが、実は子供好き。
村の子供たちに「お前たちの父親は、銃を持たない勇気があるから偉いんだ」と諭すシーンは、本作屈指の泣ける名場面です。

リー

演:ロバート・ヴォーン / 吹替:矢島正明

かつては凄腕だったが、今は人を殺す恐怖に怯え、悪夢にうなされる男。
しかし、最後にはその恐怖を乗り越え、ある行動に出ます。
最も人間臭く、弱さを抱えたキャラクターとして描かれています。

ハリー・ラック

演:ブラッド・デクスター

金に目がなく、「村には隠された財宝があるはずだ」と信じて参加した男。
最後まで金を探していましたが、土壇場で彼が見せた行動は、金よりも大切なものを見つけた証でした。

チコ

演:ホルスト・ブッフホルツ / 吹替:井上真樹夫

農民出身であることを隠し、ガンマンに憧れて一行に付きまとう若者。
無鉄砲でトラブルメーカーですが、村の娘との恋や戦闘を通じて、真の勇気とは何かを学びます。
ドイツ人俳優である彼がメキシコ人を演じているのはご愛嬌。

カルヴェラ

演:イーライ・ウォラック / 吹替:雨森雅司

村を略奪する野盗のボス。
単なる悪党ではなく、「俺たちも食わなきゃならん」「羊(農民)の毛を刈って何が悪い」という独自の論理を持つ、どこか憎めないカリスマ性を持っています。
演じるウォラックは、後に『続・夕陽のガンマン』で「卑劣漢」トゥーコを演じる名優です。

キャストの代表作品と経歴

  • スティーブ・マックイーン(ヴィン役)
    本作で大ブレイクし、『大脱走』『ブリット』『タワーリング・インフェルノ』と立て続けにヒット作に主演。
    「キング・オブ・クール」と称され、スタントなしでカーチェイスやバイクアクションをこなす伝説のアクションスターとなりました。
  • ユル・ブリンナー(クリス役)
    『王様と私』でアカデミー主演男優賞を受賞。
    エキゾチックな容貌とスキンヘッドで、歴史劇からSF(『ウエストワールド』)まで幅広く活躍。
    本作の続編『続・荒野の七人』でも唯一クリス役として続投しました。
  • チャールズ・ブロンソン(オライリー役)
    遅咲きのアクションスター。
    日本では「う〜ん、マンダム」のCMで国民的人気を得ました。
    『狼よさらば(デス・ウィッシュ)』シリーズなど、ハードボイルドな役柄で70年代を席巻しました。

まとめ:男たちが命をかけて守ったもの

『荒野の七人』は、単なるドンパチ映画ではありません。
それは、時代に取り残されようとしている「プロフェッショナルたち」の挽歌であり、大地に根を張って生きる「農民たち」への賛歌でもあります。

2016年には、デンゼル・ワシントンやクリス・プラット主演でさらにリメイクされた『マグニフィセント・セブン』が公開されましたが、その原点にある本作の輝きは決して失われません。
黒澤明の魂が、海を越えて西部劇の傑作へと昇華された奇跡。
ぜひBlu-rayで、あの口笛と共に熱い男たちの生き様を目撃してください。

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    やはりオリジナル版との比較は欠かせません。
    雨の中の決戦シーンなど、両作を見比べることで、日米の演出の違いを楽しむことができます。
  • マグニフィセント・セブン [Blu-ray]
    2016年のリメイク版。
    現代的なアクションと多様性を取り入れたキャスティングで、新しい「七人」の形を提示しています。
    イーサン・ホーク演じるスナイパー(『荒野の七人』のリーに相当)など、キャラ配置の妙も楽しめます。
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