【徹底解説】アニメ『ピンク・パンサー・ショー』お洒落でクールなピンクの豹!あらすじから名曲の秘密、クルーゾー警部まで総まとめ
概要
『ピンク・パンサー・ショー』(原題:The Pink Panther Show)は、1969年からアメリカNBCなどで放送されたテレビアニメーションシリーズです。
制作は、『ルーニー・テューンズ』の監督としても知られるフリッツ・フレレングが設立した「デパティ・フレレング・エンタープライズ(DFE)」。
このキャラクターの出自は非常にユニークです。
元々は1963年の実写映画『ピンクの豹(The Pink Panther)』のオープニング・タイトルバックに登場するアニメキャラクターとして生み出されました。
しかし、ヘンリー・マンシーニ作曲の気怠くも洗練されたジャズ・テーマに乗せて動くこの「ピンクの豹」は、映画本編に匹敵するほどの人気を博してしまいます。
その結果、まずは劇場用短編アニメーションとしてシリーズ化され、第一作『ピンク騒動(The Pink Phink)』がいきなりアカデミー短編アニメ賞を受賞。
その勢いのままテレビ番組として再編集されたのが、この『ピンク・パンサー・ショー』です。
番組は、ピンクパンサーの短編をメインに、『警部(The Inspector)』や『アント&アードバーク』といった他の短編シリーズを挟むオムニバス形式で放送されました。
セリフをほとんど喋らず、パントマイムと音楽だけで笑わせるピンクパンサーのスタイルは、言葉の壁を越えて世界中で愛され、ここ日本でも夕方の再放送などで多くの子供たちを魅了しました。
ただのアニメではない、大人の鑑賞にも耐えうる「アート」としての側面も持つ本作の魅力を徹底解説します。
オープニング
YouTubeの「Pink Panther」公式チャンネルより、誰もが知るあのテーマ曲に乗せたオープニング映像をご確認いただけます。
実写の少年が運転する近未来的な車「パンサー・モービル」からピンクパンサーとクルーゾー警部が降りてくる、有名なイントロダクションです。
詳細(徹底解説)
あらすじとスタイル:粋で洒脱なスラップスティック
『ピンク・パンサー・ショー』は基本的にストーリーの連続性を持たない、1話完結の短編集です。
しかし、そこには明確な「スタイル」が存在します。
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ピンクパンサー(The Pink Panther):
主人公は、細長い手足とクールな表情を持つピンク色の豹。
彼は基本的に言葉を喋りません(ごく稀な例外を除く)。
彼が遭遇するトラブル――例えば、家のペンキを青く塗りたい男とピンクに塗りたいパンサーの攻防(『ピンク騒動』)や、朝起きられないパンサーと目覚まし時計の戦いなど――を、ジャズのリズムに乗せた流麗な動きと視覚的なギャグだけで解決していきます。
ドタバタ(スラップスティック)でありながら、どこか優雅で余裕があるその振る舞いは、他のカートゥーンキャラクターとは一線を画す「大人の余裕」を感じさせます。 -
クルーゾー警部(The Inspector):
実写映画版でピーター・セラーズが演じたジャック・クルーゾー警部をアニメ化したシリーズ。
こちらはセリフの掛け合いがメインのコメディです。
フランス警察(シュアテ)の敏腕(自称)警部が、部下のドゥドゥ(Deux Deux)と共に事件を解決しようとしますが、警部のドジによって事態は常に悪化。
最終的にはドゥドゥの機転で解決するか、あるいは警部がひどい目に遭って終わるのがお約束です。
伝説の車「パンサー・モービル」
番組のオープニング(実写パート)で登場する、超ロングノーズの奇抜なピンク色の車。
これは「パンサー・モービル(The Panthermobile)」と呼ばれる実在するカスタムカーです。
1969年に著名なカスタムカー・ビルダーであるジェイ・オバーグによって製作されました。
運転席が最前列にあり、後部はラウンジのようになっているこの車は、番組のアイコンとして強烈な印象を残しました。
当時の子供たちは、アニメの合間に流れるこの実写映像を見て、「ピンクパンサーは本当にいるんだ」という錯覚と憧れを抱いたものです。
サブシリーズの魅力:アント&アードバーク
ショーの中で放映されたもう一つの人気シリーズが『アント&アードバーク(The Ant and the Aardvark)』です。
アリ(アント)と、それを食べようと追いかけるツチブタ(アードバーク)の終わりのない追いかけっこを描きます。
『トムとジェリー』の構図に似ていますが、特徴的なのはその「お喋り」です。
アードバークは視聴者に向かってボヤいたり、皮肉を言ったりと、とにかくよく喋ります。
原語版ではコメディアンのジャッキー・メイソンの物真似で演じられており、日本版(広川太一郎などが担当したバージョン)でもその軽妙な語り口が人気を博しました。
制作秘話・トリビア
- アカデミー賞の快挙:アニメキャラクターのデビュー作がいきなりアカデミー賞を受賞したのは、ディズニーなどの大手を除けば異例中の異例でした。これはフリッツ・フレレングの演出力と、既存の枠にとらわれないシンプルなキャラクターデザインが高く評価された結果です。
- 「リトル・マン」の受難:ピンクパンサーの短編によく登場する、白塗りで鼻の大きな小さなおじさん。通称「リトル・マン(The Little Man)」と呼ばれる彼は、フレレング自身がモデルだと言われています。彼はパンサーのイタズラの被害者として、あらゆる役柄で登場します。
キャストとキャラクター紹介
ピンクパンサー (The Pink Panther)
常にクールでマイペースな豹。
礼儀正しい紳士ですが、自分の平穏や好みを邪魔する者には容赦ないイタズラを仕掛けます。
音楽や掃除、大工仕事など多才な趣味を持ちます。
警部 (The Inspector)
声:パット・ハリントン・Jr
トレンチコートを着たフランスの警部。
プライドは高いが能力は低い。部下の手柄を横取りしようとすることもありますが、どこか憎めないキャラクター。
「Sacre bleu!(なんてこった!)」が口癖。
ドゥドゥ (Sergeant Deux-Deux)
声:パット・ハリントン・Jr
警部の部下であるスペイン系の巡査。
「Si, Oui(スィ、ウィ)」とスペイン語とフランス語を混ぜて返事をするのが特徴。
警部よりもはるかに有能で、常識人です。
アードバーク (The Aardvark)
青い体のツチブタ。アリを食べることに執念を燃やしますが、いつも失敗します。
現代っ子のような冷めた口調でボヤくのが特徴。
キャスト(スタッフ)の経歴
- ヘンリー・マンシーニ (Henry Mancini)
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『ティファニーで朝食を』や『酒とバラの日々』で知られる映画音楽の巨匠。
彼が作曲した「ピンク・パンサーのテーマ(The Pink Panther Theme)」は、ジャズ・スタンダードとして定着しており、この曲なくしてシリーズの成功はあり得ませんでした。サックスの音色を聞くだけでピンク色を想起させる、音楽と映像の完璧な融合例です。 - フリッツ・フレレング (Friz Freleng)
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『ルーニー・テューンズ』でバッグス・バニーやトゥイーティーの短編を数多く手掛けた伝説的監督。
ワーナー・ブラザースのアニメ部門閉鎖後に独立し、ピンクパンサーで第二の黄金期を築きました。タイミングの良さと音楽的な演出は彼の真骨頂です。
まとめ(社会的評価と影響)
『ピンク・パンサー・ショー』は、その洗練されたビジュアルと音楽により、子供だけでなく大人をもターゲットにした「お洒落なアニメ」の先駆けとなりました。
キャラクターグッズとしての人気も凄まじく、ぬいぐるみやアパレル商品は50年以上経った今でも定番アイテムとして販売され続けています。
安室奈美恵の楽曲『WoWa』のMVでコラボレーションしたり、ユニクロのUTになったりと、日本での浸透度も抜群です。
言葉がいらないビジュアル・コメディの傑作として、いつの時代に見ても色褪せない、まさに「クール」を体現した作品です。
作品関連商品
- DVD:『ピンク・パンサー フィルム・コレクション』などのDVD-BOXが発売中。初期の傑作短編を高画質で楽しめます。
- CD:ヘンリー・マンシーニのベスト盤やサントラ。『ピンク・パンサーのテーマ』は吹奏楽やジャズバンドの定番レパートリーでもあります。
- グッズ:TY社のぬいぐるみや、BE@RBRICK(ベアブリック)とのコラボフィギュアなど、コレクターズアイテムが多数存在します。

