プリズナーNo.6のうんちく徹底解説!難解ドラマの金字塔、「村」と「007」辞退の秘密

プリズナーNo.6のうんちく徹底解説!難解ドラマの金字塔、「村」と「007」辞退の秘密

「プリズナーNo.6」の概要

「プリズナーNo.6」(原題: The Prisoner)は、1967年にイギリスで制作・放送された、テレビドラマ史に燦然と輝く伝説的なカルト作品です。

物語の概要は、ある日突然拉致された元スパイ(と思われる男)が、国籍不明の謎の場所「村(The Village)」に監禁されるところから始まります。

彼は自身の名前を奪われ、ただ「No.6(ナンバーシックス)」という番号で呼ばれることになります。

「村」を管理する「No.2」と呼ばれる人物(毎回のように入れ替わる)は、No.6に対して「なぜ辞職したのか?」という情報を執拗に問い続けます。

しかしNo.6は、「俺は番号じゃない、自由人だ!(I am not a number, I am a free man!)」と叫び、徹底的に「村」の管理社会に抵抗し、脱出を試み続けます。

本作は、主演・企画・製作総指揮、さらには多くのエピソードで脚本・監督まで務めたパトリック・マクグーハンの強烈な作家性が爆発した作品であり、スパイ活劇、SF、不条理劇、サイケデリック・アートが融合した、極めて前衛的な内容で知られています。

この記事では、この難解なドラマに隠された数々の「うんちく」を紐解いていきます。

「プリズナーNo.6」の詳細

パトリック・マクグーハンと「007」辞退のうんちく

「プリズナーNo.6」を語る上で、主演のパトリック・マクグーハンの存在は絶対的です。

彼は本作以前に「秘密諜報員ジョン・ドレイク(Danger Man)」というスパイ役で国際的な大スターになっていました。

そのため、ファンの間では「プリズナーNo.6の主人公は、ジョン・ドレイクが辞職した後日談なのではないか」という説が今も根強く語られています。

そして、彼にまつわる最も有名な「うんちく」が、映画「007」のジェームズ・ボンド役のオファーを断っていたという逸話です。

マクグーハンは、初代ボンド役の最有力候補として2度もオファーを受けましたが、これを断固として拒否しました。

その理由は、「ボンドは女性関係が派手すぎ(不道徳)で、殺人を肯定しすぎている」という、彼の厳格な道徳観(敬虔なカトリック教徒だった)によるものでした。

「プリズナーNo.6」は、そんな彼が「スパイ」というガジェットを使いながらも、ボンドとは正反対の「個人の尊厳」や「管理社会への抵抗」というテーマを追求した、アンチ「007」的な魂の作品とも言えるのです。

伝説の最終回とテレビ局への抗議電話

「プリズナーNo.6」の「うんちく」として絶対に外せないのが、テレビ史上に残る伝説的な最終回「”Fall Out”(日本語題:『終り』または『自由か死か』)」です。

全17話にわたって張り巡らされた「村」の謎、「No.1」の正体、そしてNo.6が辞職した理由が、この最終回でついに明かされると視聴者は期待しました。

しかし、実際に放送された内容は、それまでの謎が解明されるどころか、さらにシュールで、抽象的で、難解なイメージの奔流でした。

No.6はついに黒幕「No.1」と対面しますが、その衝撃的な正体は、視聴者の混乱に拍車をかけました。

イギリスでの本放送時、この結末に全く納得できなかった(あるいは意味が理解できなかった)視聴者からの抗議の電話がテレビ局(ITV)に殺到する事態となりました。

あまりの反響に、マクグーハンは身の危険を感じて、一時的に国外(スイスとも言われる)に避難しなければならなかった、という逸話まで残っています。

この最終回は、今なお「テレビドラマ史上、最も難解で議論を呼ぶ最終回」の一つとして語り継がれています。

「村」のロケ地と番人「ローバー」の誕生秘話

ドラマの強烈なビジュアル・イメージを作り出しているのが、カラフルでどこか歪んだ「村」そのものです。

このロケ地は架空のセットではなく、イギリス・ウェールズ地方に実在する「ポートメリオン(Portmeirion)」という観光地(元々はホテル)です。

建築家クロー・ウィリアムズ=エリスが「イタリアの地中海沿岸の村」をイメージして、長い年月をかけて作り上げたこのユニークな場所は、ドラマのヒットにより「プリズナーNo.6の聖地」として世界中からファンが訪れるようになりました。

そして、「村」のもう一つの象徴が、脱走者を捕らえる謎の白い球体「ローバー(Rover)」です。

このローバーの誕生にも「うんちく」があります。

当初、機械仕掛けの番人を考案していましたが、撮影でうまく作動しませんでした。

困ったスタッフが、たまたま試験中だった「気象観測用の白い気球」をアドリブで飛ばしてみたところ、それが音もなく人を襲う姿が非常に不気味で効果的だったため、そのまま採用されたと言われています。

「プリズナーNo.6」の参考動画

「プリズナーNo.6」のまとめ

「プリズナーNo.6」は、1960年代に制作されたとは信じられないほど、現代的なテーマに満ち溢れています。

監視カメラ、個人情報の管理、見えざる権力による同調圧力、そして「自由」とは何か、「個性」とは何かという根源的な問い。

本作が半世紀以上を経ても色褪せず、世界中のクリエイター(『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督など)に影響を与え続けるのは、No.6の「俺は番号じゃない、自由人だ!」という叫びが、今を生きる私たち自身の叫びでもあるからでしょう。

この難解さこそが、「プリズナーNo.6」をカルト作品の頂点たらしめている最大の魅力なのです。

関連トピック

パトリック・マクグーハン: 本作の主演・企画・脚本・監督を務めた天才。「007」のオファーを道徳的な理由で断った男として有名。彼の執念がこの作品を生み出しました。

ポートメリオン: 「村」のロケ地として使われた、イギリス・ウェールズに実在する美しい観光地。今でもファンイベントが開催されています。

ローバー (Rover): 「村」の不気味な番人である白い球体。その正体は気象観測用気球だったという逸話があります。

No.2 (ナンバーツー): 「村」の管理責任者。No.6の情報を引き出すため、毎回のように違う人物(俳優)が演じ、懐柔や脅迫を繰り返します。

秘密諜報員ジョン・ドレイク (Danger Man): マクグーハンが本作以前に主演した人気スパイ活劇。多くのファンが、ドレイクが辞職して「プリズナーNo.6」になったと信じています。

関連資料

『プリズナーNo.6』 (DVD / Blu-ray BOX): 映像作品そのもの。特にHDリマスター版では、ポートメリオンの美しい(そして不気味な)風景を鮮明に楽しむことができます。

『The Prisoner: The Official Companion』 (書籍・洋書): 制作の裏側、詳細なエピソード解説、インタビューなどを網羅した公式ガイドブック。より深く知りたいファン向け。

『新世紀エヴァンゲリオン』 (アニメ): 庵野秀明監督が「プリズナーNo.6」(特に最終回)から強い影響を受けたと公言しています。両作品の最終回を見比べるのも一興です。

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