もしも『タイムトンネル』のダグとトニーの英語が通じなかったら? 絶望的な「言葉の壁」を徹底考察
概要:タイムトラベラー最大の悪夢
SFドラマ『タイムトンネル』で、過去や未来のあらゆる時代に飛ばされる主人公、トニー・ニューマン博士とダグ・フィリップス博士。
劇中では、タイタニック号の乗客、フランス革命の市民、古代ギリシャの兵士まで、誰もが流暢な(現代)英語を話し、彼らとコミュニケーションを取っていました。
しかし、これはあくまで視聴者のための「お約束(翻訳コンベンション)」です。
もしも、この「お約束」がなかったらどうなっていたでしょうか。
もしも、彼らの現代英語が転送先で全く通じなかったら。
『タイムトンネル』ダグ トニー 英語 通じない、という絶望的な「if」シナリオを考察します。
詳細考察:言葉が通じない世界の恐怖
即座の「敵」認定と処刑の危機
もしダグとトニーの言葉が通じなかった場合、彼らが直面する最大の脅威は「歴史的事件」ではなく、「現地人による即時の排除」です。
例えば、彼らが「トロイア陥落」の真っ只中に転送されたとします。
ギリシャ兵にもトロイア兵にも理解不能な言葉(=現代英語)を叫ぶ二人は、どちらの陣営にとっても「敵国のスパイ」か、あるいは「神の怒りに触れた呪われた者」としか映りません。
彼らが「我々は未来から来た科学者だ」といくら説明しようとしても、それは意味不明な音の羅列でしかなく、弁明の機会さえ与えられず、その場で槍で突かれて終わる可能性が非常に高いのです。
科学者としての知識を披露する以前に、生存することすら困難になります。
知識が伝わらない絶望
ダグとトニーの最大の武器は、その時代の人々が持たない「未来の知識」です。
例えば「タイタニック号」では、彼らは船が氷山に衝突することを知っていました。
しかし、もし言葉が通じなければ、その警告をスミス船長や他の乗組員に伝える手段がありません。
「氷山だ!」「沈むぞ!」と英語で叫んでも、「何を騒いでいるんだ、このアメリカ人たちは」と(もし相手が英語を解さなければ)無視されるだけです。
「アラモの砦」でデイビー・クロケットに援軍が来ないことを伝えようとしても、「奇妙な服装で奇妙な言葉を話す不審者」として、砦から追い出されてしまうでしょう。
彼らは歴史の悲劇をただ傍観することしかできないのです。
孤立無援のサバイバル
言葉が通じないということは、食料や水、寝床を確保することさえ困難になることを意味します。
彼らがいかに優れた科学者であっても、中世ヨーロッパの村でパン一つ手に入れるために、身振り手振りで必死に訴えなければなりません。
その姿は、現地の人々にとって「知的な科学者」ではなく、「言葉も話せない奇妙な浮浪者」としか見えません。
『タイムトンネル』の冒険活劇は、「知的なサスペンス」から、ただ生き延びるためだけの過酷な「サバイバル劇」へと変貌してしまいます。
基地(コントロールセンター)の無力感
アリゾナのタイムトンネル基地では、カーク所長やアン博士たちが、二人が言語の壁にぶつかり、誰にも理解されず苦しんでいる姿をモニター越しに見守ることになります。
彼らがどれほど必死に歴史的知識をマイクで伝えようとしても、その言葉をダグとトニーが現地人に翻訳する術がありません。
基地のスタッフは、彼らがスパイとして捕らえられたり、飢えたりするのを、ただ見ていることしかできないのです。
これは、ドラマ本編で描かれた以上に深刻な無力感でしょう。
参考動画:『タイムトンネル』の世界
まとめ:ドラマの「お約束」の重要性
もしもダグとトニーの英語が転送先で通じなかったら、彼らの任務は「歴史の修正」や「脱出」ではなく、「最低限の生存」となります。
彼らの科学知識は、それを伝える「言葉」という媒介がなければ、何の役にも立ちません。
『タイムトンネル』が、時代や場所に関わらず英語が通じるという「翻訳コンベンション」を採用したのは、このあまりにもリアルで絶望的な「言葉の壁」という問題を回避し、視聴者が純粋にSFアドベンチャーを楽しむために不可欠な「必要なお約束」だったのです。
この「if」シナリオは、私たちが当たり前に使っている「言葉が通じること」の重要性を、改めて浮き彫りにします。
関連トピック
翻訳コンベンション
映画やドラマ、演劇などで、本来は異なる言語を話しているはずの登場人物たちが、視聴者の便宜のために(例えば)すべて英語や日本語で会話する、という暗黙のルールのことです。
『タイムトンネル』 (テレビドラマ)
1960年代に放送されたSFドラマの金字塔。二人の科学者が時空を漂流し、様々な歴史的事件に遭遇する物語です。
言語の壁 (Language Barrier)
異なる言語を使用する者同士の間で、意思疎通が困難になること。ダグとトニーにとっては、これが最大の脅威となったでしょう。
古英語・中英語
もし彼らが「魔術師マーリン」の時代(6世紀)に行った場合、現代英語とは似ても似つかない「古英語」の世界であり、全くコミュニケーションが取れないはずです。
関連資料
『タイムトンネル』 DVD-BOX
劇中でいかに「翻訳コンベンション」が巧みに使われ、物語がスムーズに進んでいるかを確認できます。
『メッセージ』 (原題: Arrival) [映画]
もし言葉が全く通じない相手(異星人)と遭遇したら、コミュニケーションを確立することがいかに困難で重要かを描いた傑作SF映画。
『キングダム・オブ・ヘブン』 [映画]
中世ヨーロッパ(十字軍時代)の多言語が飛び交う状況がリアルに描かれており、言葉が通じないことの緊張感が伝わります。

