『サンダーバード』劇場版の面白うんちく!英国スターのカメオ出演、6号機の「正体」、そして黒柳徹子の参加秘話を徹底解説
『サンダーバード』劇場版の概要
世界的な人気を誇るジェリー・アンダーソンのスーパーマリオネーション作品『サンダーバード』は、テレビシリーズの成功を受けて複数の劇場版が制作されました。
オリジナル(人形劇)の劇場版としては、『サンダーバード 劇場版』(1966年、原題: Thunderbirds Are Go)と、『サンダーバード6号』(1968年、原題: Thunderbird 6)の2作品が有名です。
これらの作品には、テレビ版を超えるスケール感と、ファンを驚かせる様々な「うんちく」が隠されています。
(※本記事は主にこのオリジナル劇場版2作を中心に解説し、2004年の実写版、2022年の新作人形劇にも触れます)
『サンダーバード』劇場版の詳細うんちく
うんちく1: 1作目『劇場版』には英国の超大物スターが「人形で」カメオ出演
記念すべき劇場版第1作『サンダーバード 劇場版』には、当時のイギリスを代表する超人気歌手クリフ・リチャードと、彼のバックバンドであるザ・シャドウズが、本人そっくりの「人形」になってカメオ出演しています。
劇中、ペネロープが訪れる宇宙のナイトクラブで、彼らが「Shooting Star」という曲を演奏するシーンは大きな話題となりました。
これは、未来(2060年代)の話であるため「クリフ・リチャード・Jr.」という設定でした。
うんちく2: 1作目の目玉メカ「ゼロX号」
劇場版第1作の目玉メカは、サンダーバードメカではなく、火星探検用に開発された超大型宇宙船「ゼロX号(Zero-X)」でした。
このゼロX号は、複数のパーツが合体・分離して大気圏突入や火星着陸を行うという、非常に野心的なデザインでした。
このメカデザインと特撮を担当したのは、後に『007』シリーズや『エイリアン』『スーパーマン』でアカデミー賞を受賞することになる、特撮監督のデレク・メディングスです。
うんちく3: 2作目『6号』は興行的に「大失敗」した
第1作の好評を受け、さらにスケールアップした第2作『サンダーバード6号』が制作されました。
しかし、この作品は興行的に大失敗に終わってしまいます。
原因は、当時すでに『サンダーバード』ブームが下火になっていたことに加え、作品の方向性にもありました。
タイトルの「6号」がどんな新メカなのかを巡って物語が展開しますが、その正体は…。
うんちく4: ネタバレ注意!「サンダーバード6号」の衝撃的な正体
『サンダーバード6号』の最大の「うんちく」は、そのオチにあります。
国際救助隊は、設計者のブレインズから「サンダーバード6号」の設計図を受け取るものの、物語の最後までその正体は明かされません。
クライマックス、敵の罠にかかり飛行船(スカイシップ・ワン)から脱出できなくなったトレーシー一家(とペネロープたち)。
絶体絶命のピンチを救ったのは、なんとアランが操縦する旧式の複葉機「タイガー・モス」でした。
結局、ブレインズが設計した「6号」は採用されず、「いかなる状況でも任務を遂行できる小型で信頼性の高い航空機」こそが真の6号機にふさわしい、という結論に至るのです。
この「新メカが登場しない」という結末が、当時の子供たちの期待を裏切り、興行不振の一因となったとも言われています。
うんちく5: 2004年「実写版」の評価は…
2004年には、アメリカで実写版映画『サンダーバード』(原題: Thunderbirds)が制作されました。
しかし、この作品はトレーシー一家の大人たち(ジェフ、スコット、バージルなど)が早々に退場し、末っ子のアランと彼の友人たち少年少女が活躍する…という、原作のファン層とは異なる「キッズムービー」路線でした。
そのため、オリジナルのファンからは「これは我々の観たかったサンダーバードではない」と酷評され、興行・評価ともに振るわない結果に終わりました。
うんちく6: 2022年『55/GOGO』は「音声ドラマ」から生まれた奇跡の新作
日本で2022年に公開された『サンダーバード55/GOGO』は、非常に特殊な成り立ちの作品です。
これは、1960年代当時、テレビシリーズと並行して制作されていた「音声ドラマ(オーディオドラマ)」の音源(当時のオリジナル声優陣の声が残っている)を元にしています。
イギリスの熱狂的なファンがクラウドファンディングで資金を集め、ジェリー・アンダーソン監督の息子ジェイミー・アンダーソンらの協力のもと、当時のスーパーマリオネーションの撮影技術を「完全再現」して、音声に合わせた「新作映像」を50年以上経ってから作り上げたのです。
構成は日本の『シン・ウルトラマン』の樋口真嗣監督が担当しました。
うんちく7: 黒柳徹子、劇場版への「不参加」と「復活」
テレビ版でペネロープ役を務めた黒柳徹子さんは、60年代のオリジナル劇場版2作(『劇場版』『6号』)では、スケジュールの都合などでペネロープ役を演じていません(別の声優が担当)。
しかし、前述の『サンダーバード55/GOGO』では、樋口真嗣監督たっての希望で、55年の時を経て、再びペネロープ役(の追加録音部分)として参加しました。
一方、新作でペネロープのメインの声を担当したのは、ドラマ『トットてれび』で若き日の黒柳さん自身を演じた満島ひかりさんであり、まさに運命的なバトンタッチが実現しました。
参考動画
まとめ
『サンダーバード』の劇場版は、テレビシリーズの枠を超えようとした野心と、時代の変化に翻弄された歴史そのものです。
1作目『劇場版』ではクリフ・リチャードのカメオ出演やゼロX号の雄姿が描かれ、2作目『6号』では「新メカが出ない」という伝説的なオチが待っていました。
そして時は流れ、2004年の実写版はファンを失望させたものの、2022年の『55/GOGO』では、ファンの熱意(クラウドファンディング)とオリジナル音声という奇跡によって、黒柳徹子さんを含む「本物」の新作がスクリーンに蘇ったのです。
関連トピック
ジェリー・アンダーソン (Gerry Anderson): 『サンダーバード』の生みの親。
スーパーマリオネーション (Supermarionation): 『サンダーバード』で使われた独自の特撮人形劇の技術。
デレク・メディングス (Derek Meddings): 『サンダーバード』の特撮監督。後に『007』シリーズなどで活躍。
クリフ・リチャード (Cliff Richard): 劇場版第1作に人形でカメオ出演したイギリスの伝説的歌手。
樋口真嗣: 『サンダーバード55/GOGO』の日本公開版の構成を担当した映画監督。
関連資料
『サンダーバード 劇場版』『サンダーバード6号』 (Blu-ray/DVD): オリジナルの劇場版2作品。高画質で特撮の真髄を楽しめます。
『サンダーバード55/GOGO』 (Blu-ray/DVD): クラウドファンディングによって蘇った奇跡の完全新作。
実写版『サンダーバード』 (2004年): オリジナルとは別物として、キッズ向けSFアドベンチャー映画として観ることができます。