【徹底解説】実写映画『トムとジェリー』(2021)は面白い?あらすじ・吹替声優・評価まとめ
概要
2021年に公開された映画『トムとジェリー』(原題:Tom & Jerry)は、誕生80周年を記念して製作された、実写映像とアニメーションを融合させたコメディ映画です。
監督は『ファンタスティック・フォー』シリーズなどで知られるティム・ストーリー。主演は『キック・アス』のヒットガール役で世界的な人気を博したクロエ・グレース・モレッツが務めました。
本作の最大の特徴は、トムとジェリーをはじめとする動物キャラクターたちが、あえて「2Dアニメーション(手描き風)」の質感のまま、実写の世界に存在しているという点です。
フルCGでリアルな動物にするのではなく、私たちがよく知る「マンガのような動き」をする彼らが、実写の俳優たちと演技を交わし、ニューヨークの超高級ホテルを破壊し尽くします。
「世界一有名なライバル」である2匹が、なぜか協力して「世紀のウェディング」を成功させようと奮闘(あるいは妨害?)する姿は、かつての短編アニメを見て育った大人には懐かしく、現代の子供たちには新鮮に映るでしょう。
批評家と観客で評価が分かれたポイントや、日本版ならではの豪華声優陣の話題も含め、本作の魅力を余すところなく紹介します。
オープニング
YouTubeの「ワーナー ブラザース 公式チャンネル」より、映画のハイライトと世界観がわかる本予告をご覧ください。
実写のニューヨークに違和感なく(?)溶け込む2匹の姿が確認できます。
詳細(徹底解説)
あらすじと舞台:ニューヨークの超高級ホテルでの「就職」と「戦争」
物語の舞台は、活気あふれる大都市ニューヨーク。
田舎から出てきた夢見がちなジェリーは、セントラル・パークでピアノを弾いていたトムとひと悶着起こした後、居心地の良い住処を求めて、歴史ある超高級ホテル「ロイヤル・ゲート・ホテル」に忍び込みます。
一方、職を失いニューヨークでくすぶっていた女性ケイラ(演:クロエ・グレース・モレッツ)は、口八丁手八丁で他人の経歴を盗み、ロイヤル・ゲート・ホテルの臨時スタッフとして採用されることに成功します。
ホテルは週末に、SNSで大人気のセレブカップル、ベンとプリータの「世紀のウェディング」を控えており、ピリピリしたムード。
そんな中、ホテル内にネズミ(ジェリー)が住み着いていることが発覚します。
ネズミの存在がバレれば、ホテルの名声もウェディングも台無しです。
ケイラは総支配人から「ネズミ退治」の任務を任され、その対策として、天敵であるネコ(トム)をホテルに雇い入れることを提案します。
こうして、豪華絢爛なホテルを舞台に、トムとジェリーの壮絶な追いかけっこがスタート。
しかし、2匹の喧嘩はホテルの備品を破壊し、ウェディングの準備をメチャクチャにし、ついには新郎新婦の関係にまで亀裂を入れてしまいます。
果たしてケイラとトムとジェリーは、最悪の事態を収拾し、結婚式を成功させることができるのでしょうか?
映像表現のこだわり:なぜ「2D風」なのか?
本作が他の「実写化映画(例:ライオン・キングやピーターラビット)」と一線を画すのは、動物たちをリアルなCGにしなかった点です。
トムが叩かれてペラペラになったり、目が飛び出たりといった「カートゥーン・フィジックス(漫画的物理法則)」は、リアルな猫やネズミでやるとグロテスクになってしまいます。
制作陣は、オリジナルのアニメーションの魅力を最大限に生かすため、実写背景の中に、あえて輪郭線のあるフラットなアニメキャラクターを合成する手法(2Dルックの3Dアニメーション技術)を採用しました。
これにより、俳優とキャラクターの視線が合うなどのリアリティを保ちつつ、アニメ版そのままのコミカルな暴力を再現することに成功しています。
ちなみに、劇中に登場する犬、鳩、象、トラなどの動物はすべてアニメーションで描かれています。
特筆すべき見どころ:クロエのコメディエンヌぶりと「協力プレイ」
- クロエ・グレース・モレッツの演技:主演のクロエは、自身も『トムとジェリー』の大ファン。何もない空間に向かって、あたかもそこにトムやジェリーがいるかのようにリアクションを取る彼女の演技力(パントマイム)は見事です。少し狡賢いけれど憎めないケイラのキャラクターは、トムとジェリーの「人間版」のような立ち位置で物語を引っ張ります。
- まさかの共闘:物語の後半、ある失敗を取り戻すために、トムとジェリー、そしてケイラがタッグを組みます。普段は喧嘩ばかりの2匹が、ジェリーの知恵とトムの身体能力を合わせてトラブルを解決しようとする姿は、長編映画ならではの熱い展開です。
- 小ネタの数々:劇中には、過去の短編アニメへのオマージュが散りばめられています。トムが空を飛ぶための自作の翼や、スパイク(ブルドッグ)との因縁など、ファンならニヤリとする要素が満載です。
制作秘話・トリビア
- 声の出演:トムとジェリーは基本喋りませんが、彼らの叫び声や笑い声は、オリジナル版のクリエイターであるウィリアム・ハンナのアーカイブ音声(過去の録音)を使用しています。これにより、80年前と変わらない「あの声」を聞くことができます。
- 即興演技:イベントプランナー役のマイケル・ペーニャや、ケイラ役のクロエの会話シーンには、多くのアドリブが含まれています。コメディ俳優たちの掛け合いの良さが、アニメと実写の違和感を埋める接着剤となりました。
キャストとキャラクター紹介(日本語吹替版含む)
本作は、日本語吹き替え版のキャストが非常に豪華であることでも話題になりました。
ケイラ
演:クロエ・グレース・モレッツ / 吹替:水瀬いのり
経歴を偽ってホテルに潜り込んだ要領の良い女性。トラブルメーカーですが、根は優しく行動力があります。
水瀬いのりの快活な演技が、ケイラの前向きなキャラクターにマッチしています。
テレンス
演:マイケル・ペーニャ / 吹替:木村昴
ホテルのイベント担当マネージャー。ケイラを疑い、トムとジェリーの騒動に巻き込まれてひどい目に遭う苦労人。
『アントマン』シリーズでもおなじみのマイケル・ペーニャが演じる「嫌味だけど笑える男」を、木村昴(ジャイアン役など)がコミカルに演じています。
ベン
演:コリン・ジョスト / 吹替:日野聡
世紀のウェディングの新郎。SNS映えを気にするあまり、新婦の気持ちを置いてきぼりにしてしまい、象に乗って登場するなどの派手な演出にこだわります。
プリータ
演:パラヴィ・シャルダ / 吹替:坂本真綾
ベンの婚約者。本当はシンプルで静かな式を望んでいますが、ベンの暴走を止められずにいます。
まとめ(社会的評価と影響)
映画『トムとジェリー』は、Rotten Tomatoesなどの批評家レビューでは「脚本が薄い」「人間ドラマのパートが多すぎる」といった厳しい意見も見られましたが、観客スコア(オーディエンススコア)は高く、ファミリー層を中心に支持されました。
全世界興行収入もコロナ禍の公開ながら健闘し、ヒットを記録しました。
「実写になってもトムとジェリーは変わらない」という安心感と、最新技術で描かれる「懐かしいドタバタ」は、かつてテレビにかじりついていた親世代と、その子供たちが一緒に笑って楽しめる貴重なコンテンツであることを証明しました。
何も考えずに見て、スカッとして、最後は少し温かい気持ちになれる。そんな『トムとジェリー』の良心が詰まった一作です。
作品関連商品
- Blu-ray / DVD:『トムとジェリー』ブルーレイ&DVDセットがワーナー・ブラザースより発売中。未公開シーンやNG集などの特典映像が収録されています。
- 配信:Amazon Prime Video、U-NEXT、Netflixなどで配信中(時期により見放題対象外の場合あり)。
- サントラ:劇中で使用された楽曲は、ヒップホップやR&Bを取り入れた現代的な選曲でおしゃれな雰囲気を演出しています。

