【傑作サスペンス】『謎の円盤UFO』第9話「湖底にひそむUFO」完全解説!静寂が招く恐怖とフォスター大佐の危機
『謎の円盤UFO』第9話「湖底にひそむUFO」の概要
1970年に制作され、日本でも今なお熱狂的な支持を集めるSFドラマ『謎の円盤UFO』。
その中でも第9話(日本放送順)「湖底にひそむUFO(原題:The Sound of Silence)」は、派手な戦闘シーンよりも心理的なサスペンスと独特の静謐な恐怖感を前面に押し出した異色かつ屈指の名作エピソードとして知られています。
物語は、ある静かな田舎の湖畔にUFOが飛来するところから始まります。
いつものような都市破壊や迎撃戦ではなく、美しい自然の中で忍び寄る「音のない侵略」の恐怖。
そして、調査に向かったSHADOの若きエース、ポール・フォスター大佐が消息を絶つという緊迫の展開が視聴者を引き込みます。
本記事では、ジェリー・アンダーソン作品ならではの緻密な特撮技術と、ヒッチコック映画を彷彿とさせるミステリアスな演出が光るこのエピソードのあらすじ、見どころ、そして「静寂(Sound of Silence)」というタイトルに込められた意味を徹底解説します。
第9話「湖底にひそむUFO」の詳細解説
物語の始まり:静寂の湖と放浪者
物語の舞台は、美しい森林に囲まれたのどかな湖。
そこへ一人の放浪者カルバーと彼の愛犬が通りかかります。
世俗を離れて自由に生きる彼らの平穏な日常は、湖の上空に現れた謎の飛行物体によって破られます。
UFOは音もなく湖水へと没し、湖底に潜伏します。
このエピソードの最大の特徴は、UFOや宇宙人が活動する際に、周囲の自然音が完全に消え失せる「静寂」の演出です。
鳥のさえずりや風の音が止み、不気味なほどの無音状態が訪れる時、そこには死の危険が迫っているのです。
この演出は、視聴者の聴覚に訴えかける恐怖として非常に効果的に機能しています。
フォスター大佐の失踪と孤独な捜索
一方、SHADOのポール・フォスター大佐(マイケル・ビリントン)は、休暇を利用してヘリコプターの操縦訓練を行っていましたが、偶然にもこのエリアの上空で不可解な現象に遭遇します。
無線が通じなくなり、何かを目撃した彼は着陸して調査を開始しますが、そのまま消息を絶ってしまいます。
連絡が途絶えたことを不審に思ったストレイカー司令官は、直ちに捜索隊を派遣。
現地に到着したSHADOの捜索チームは、森の中でフォスターの痕跡を探しますが、そこには「何か」に怯える放浪者カルバーの姿がありました。
カルバーは宇宙人を目撃していましたが、社会から疎外された彼の証言を誰も信じようとしません。
唯一、ストレイカーだけが彼の言葉の裏にある真実を感じ取り、湖の徹底調査を命じます。
湖底の対決と悲劇の結末
湖の調査には、SHADOの誇る万能潜水艦スカイダイバーや、特殊なソナー機器が投入されます。
水中の特撮シーンは『サンダーバード』の時代から定評があるアンダーソン・スタジオの真骨頂であり、水の揺らぎや気泡の表現がリアリティを高めています。
やがて湖底に潜むUFOを発見したSHADOは、ダイバー部隊を送り込みますが、そこで待ち受けていたのは罠でした。
宇宙人は、目撃者であるカルバーの愛犬を殺害し、さらにカルバー自身をも精神的に追い詰めていきます。
最終的にUFOは撃破されますが、事件に巻き込まれただけの無実の放浪者カルバーには、あまりにも悲しい結末が待っていました。
彼は事件の記憶を消されるか、あるいは精神崩壊したまま放置されるのか、ドラマは明確な救いを与えずに幕を閉じます。
「地球を守る」という大義のために、個人の小さな幸せや平穏が犠牲になるという『謎の円盤UFO』特有のダークでシビアな世界観が、このラストシーンに凝縮されています。
ポール・フォスターという男
本エピソードは、フォスター大佐のメイン回でもあります。
元テストパイロットであり、ストレイカー司令官とは時に衝突しながらも、互いに実力を認め合う関係。
今回は彼が単独行動で危機に陥ることで、SHADO全体の結束力や、ストレイカーの彼に対する信頼の深さが浮き彫りになります。
演じるマイケル・ビリントンの甘いマスクと、泥にまみれて森を彷徨う姿のギャップも、当時のファンを魅了したポイントでした。
『謎の円盤UFO』参考動画
『謎の円盤UFO』第9話のまとめ
第9話「湖底にひそむUFO」は、派手な宇宙戦争だけがこのドラマの魅力ではないことを証明した一作です。
原題の「The Sound of Silence(静寂の音)」が示す通り、音が消える瞬間の緊張感、美しい自然と異質なUFOのコントラスト、そして巻き込まれた一般人の悲哀が見事に融合しています。
特に、愛犬との絆を断ち切られた放浪者の姿は、宇宙人の残虐さと、秘密組織であるSHADOの冷徹さを際立たせており、視聴後に深い余韻(あるいはトラウマ)を残します。
大人になった今だからこそ理解できる、孤独や哀愁といったテーマが込められたこのエピソード。
ぜひ部屋を暗くして、その「静寂の恐怖」を体験してみてください。
関連トピック
ポール・フォスター大佐:元テストパイロットでSHADOの幹部。演じたマイケル・ビリントンは、ジェームズ・ボンド役の候補にもなったイケメン俳優。
バリー・グレイ:音楽担当。本エピソードでも、静寂と対比されるスリリングなブラスサウンドや、不気味な電子音でドラマを盛り上げている。
スカイダイバー:SHADOの主力兵器である潜水艦。戦闘機スカイワンを切り離す機能を持つが、今回は母艦としての潜水機能や探索能力がクローズアップされた。
ストレイカー司令官:非情な決断を下す指揮官だが、本話では部下を探す必死な姿や、放浪者への複雑な視線など、人間味も垣間見せる。
関連資料
DVD/Blu-ray『謎の円盤UFO』コンプリート・ボックス:高画質リマスター版で、湖や森の美しい色彩設計を確認できます。
書籍『ジェリー・アンダーソン SF特撮の世界』:メカニックの構造や撮影裏話が詳細に記されたファン必携の資料本。
CD『UFO オリジナル・サウンドトラック』:バリー・グレイによる名曲の数々を収録。本編の緊張感を耳から追体験できます。

