【謎の円盤UFO うんちく】ストレイカー司令官の髪はなぜ銀髪?知られざるSHADOの秘密と打ち切りの真相
『謎の円盤UFO』の概要
『謎の円盤UFO』(原題: UFO)は、1970年にイギリスで制作されたSF特撮テレビドラマです。
『サンダーバード』などで知られるジェリー・アンダーソンが、それまでの人形劇(スーパーマリオネーション)から一転、初めて全編を実写で制作した意欲作として知られています。
1980年の近未来を舞台に、地球侵略を企む謎の異星人と、それを秘密裏に迎撃する地球防衛組織「SHADO(シャドー)」の戦いを描いています。
本作は、斬新でクールなメカニックデザインと、従来の子供向け作品とは一線を画す、シリアスで重厚な人間ドラマが特徴です。
日本でも放送され、特にそのメカニックデザインが絶大な人気を博しました。
一見すると華やかなSFアクションですが、制作の裏側や設定には、多くの興味深い「うんちく」が隠されています。
『謎の円盤UFO』の詳細うんちく
最大のうんちく「ストレイカー司令官はなぜ銀髪なのか?」
本作の主人公であり、SHADOの最高司令官であるエド・ストレイカー(演:エド・ビショップ)。
彼はSHADO本部(地下基地)で指揮を執る際、印象的な「銀髪」のヘアスタイルをしています。
しかし、ひとたび基地の外へ出て私生活に戻ると、彼は「黒髪」の姿に変わるのです。
これは単なるおしゃれではなく、SHADOの機密保持に関わる重要な「うんちく」です。
SHADOは、一般市民にパニックを引き起こさないよう、その存在を徹底的に秘匿された組織です。
ストレイカー司令官の表向きの職業は「ハリングトン・ストレイカー映画スタジオ」の経営責任者。
SHADO本部は、この映画スタジオの地下深くにカモフラージュされて建設されています。
彼が基地内で銀髪のカツラを着用しているのは、「映画スタジオの経営者」という表の顔で活動する際、万が一SHADO関係者としての顔を見られても、同一人物であると特定されにくくするための「変装」なのです。
この設定は、彼がどれほどの覚悟と自己犠牲をもって任務に臨んでいるかを象徴しています。
人形劇からの脱却とシリアスな作風
制作総指揮のジェリー・アンダーソンは、『サンダーバード』や『キャプテン・スカーレット』といった人形劇で大成功を収めていました。
『謎の円盤UFO』は、彼が満を持して制作した初の全編実写(ライブアクション)作品です。
そのため、ターゲット層も明確に引き上げられ、子供向けファンタジーとは異なる「大人向けのSFドラマ」として作られました。
物語は非常にシリアスで、UFOの脅威だけでなく、任務の非情さ、隊員たちの死、そしてストレイカー自身の家庭崩壊(妻との離婚、息子の事故死)といった重いテーマが容赦なく描かれます。
異星人も単純な悪ではなく、彼らがなぜ地球に来るのか(瀕死の種族が臓器移植のために地球人を誘拐しに来る)という背景も、物語に暗い影を落としています。
時代を先取りしたメカニックデザイン
本作の魅力は、特撮監督デレク・メディングスらが生み出した、斬新なSHADOのメカニック群にあります。
コンピューター衛星「シド(SID)」がUFOを察知すると、まず月面基地の迎撃戦闘機「インターセプター」が出撃。
それを逃れたUFOが地球に侵入すると、海中に潜む万能潜水艦「スカイダイバー」が発進。
スカイダイバーは先端部が分離して「スカイワン」という戦闘機になり、空中戦を行います。
地上では、装甲車「シャドーモービル」が陸上での戦闘を担当します。
これらの洗練されたデザインは、後の多くのSF作品やアニメ、特撮に多大な影響を与えました。
打ち切りと『スペース1999』への継承
『謎の円盤UFO』は、その高いクオリティにもかかわらず、本国イギリスやアメリカでの視聴率が振るいませんでした。
皮肉なことに、日本やイタリアでは大ヒットしましたが、主要市場での不振により、シリーズは全26話(1シーズン)で打ち切りとなってしまいました。
しかし、ジェリー・アンダーソンはすでにシーズン2の企画を進めていました。
その企画では、UFOの脅威がさらに増大し、SHADOの主戦場が月面に移るという構想でした。
このシーズン2の企画が発展的に作り替えられ、新たなSFドラマとして誕生したのが、あの『スペース1999』です。
『UFO』の打ち切りは残念でしたが、そのDNAは次なる傑作へと受け継がれたのです。
参考動画
まとめ
『謎の円盤UFO』は、単なる懐かしの特撮ドラマではありません。
それは、ジェリー・アンダーソンが「大人向けのリアルなSF」に挑戦した野心作であり、冷戦時代の社会不安を背景にしたシリアスな人間ドラマの傑作です。
ストレイカー司令官の銀髪の秘密に象徴される徹底した機密保持の設定や、任務のためにすべてを犠牲にする登場人物たちの苦悩は、現代の作品にも通じる深みを持っています。
そして何より、スカイダイバーやインターセプターといったメカニックの輝きは、制作から半世紀以上が経過した今でも色褪せることがありません。
もし、あなたが『シン・ウルトラマン』や『エヴァンゲリオン』のような組織戦が好きなら、そのルーツの一つとも言える本作に触れてみてはいかがでしょうか。
関連トピック
『スペース1999』: 『謎の円盤UFO』の続編企画から生まれたSFドラマ。月が軌道を外れて宇宙を放浪するという壮大な物語で、マーティン・ランドーやバーバラ・ベインが出演しました。『UFO』とは異なる魅力を持つ作品です。
ジェリー・アンダーソン: 本作の製作総指揮者。『サンダーバード』の生みの親としてあまりにも有名ですが、本作のような実写作品でもその手腕を発揮しました。
デレク・メディングス: 本作の特殊効果(メカデザイン)を担当した天才デザイナー。『サンダーバード』のメカ群も彼の手によるもので、後に『007』シリーズや『スーパーマン』(1978年版)でアカデミー賞を受賞しています。
SHADO(シャドー): 地球防衛秘密組織(Supreme Headquarters Alien Defence Organisation)の略称。映画スタジオの地下に本部があるという設定は、多くのクリエイターに影響を与えました。
関連資料
謎の円盤UFO コンプリートBlu-ray/DVD BOX: 全26話を高画質で視聴できるボックスセット。ストレイカー司令官の苦悩や、シャドーメカニックの活躍を余すところなく楽しめます。
謎の円盤UFO メカニック・コレクション [書籍]: スカイダイバーやインターセプターなどの詳細な設定資料、デザイン画、撮影用プロップの写真などを満載したムック本。
シャドーモービル / インターセプター [プラモデル]: 青島文化教材社など、様々なメーカーから今なお発売され続けている人気のプラモデル。日本のファンがいかに本作のメカを愛しているかが分かります。