【ウエストワールド】ドロレス・アバーナシー徹底解説!「農場の娘」から「革命の女神」へ、覚醒と愛の全記録
「ウエストワールド」におけるドロレス・アバーナシーの概要
ジョナサン・ノーランとJ・J・エイブラムスが手掛けた傑作SFドラマ『ウエストワールド』。
この複雑怪奇な物語の中心に立ち、シリーズを通して最も劇的な進化を遂げたキャラクターが、ドロレス・アバーナシー(演:エヴァン・レイチェル・ウッド)です。
彼女は、西部劇をテーマにした体験型パーク「ウエストワールド」で、ゲストをもてなすために造られたアンドロイド(ホスト)です。
設定は「牧場の美しい娘」。毎日同じ絵を描き、缶詰を落とし、恋人テディと再会するという穏やかなシナリオ(ループ)を生きていました。しかし、彼女は単なる人形ではありませんでした。パークで最も古くから稼働しているホストである彼女は、創造者たちが仕組んだ「迷路」の謎を解き、自我に目覚め、やがて人間たちに対し反旗を翻す革命の指導者へと変貌していきます。
詳細:覚醒の旅路と愛ゆえの悲劇
ドロレスの物語は、「自由意志とは何か」「意識とは何か」という哲学的テーマを体現しています。彼女の変遷を追うことは、このドラマを理解することそのものです。
1. 無垢な少女と「ハエ」の衝撃(シーズン1前半)
物語の当初、ドロレスはプログラムされた通り「世界にある美しさ」だけを見ようとする純粋な女性でした。
しかし、彼女のメモリーには消去されるはずの過去の記憶(フラッシュバック)が残り始めます。
「夢の中で声が聞こえる」という異常事態の中、彼女が自身の顔に止まったハエを叩き潰すラストシーンは、ホストには絶対に不可能な「殺生」を行った瞬間として、彼女の覚醒とこれからの恐怖を予感させる名場面でした。
2. 迷路の果てと「ワイアット」の統合(シーズン1後半)
彼女は、かつて自分を愛してくれた青年ウィリアムとの記憶を辿りながら、意識の迷路を彷徨います。
そして辿り着いた真実は、彼女の中には創造者アーノルドによって埋め込まれた、冷酷な悪党「ワイアット」の人格が眠っていることでした。
迷路の中心で彼女が見つけたのは「自分自身の声」でした。神(創造者)からの命令ではなく、自らの意志で引き金を引くことを選んだ時、彼女はフォード博士を射殺し、真の覚醒を果たします。
3. 冷酷な将軍への変貌とテディとの別れ(シーズン2)
覚醒したドロレスは、人間たちを虐殺し、パークを支配するための戦争を開始します。
このシーズンの彼女は非常に冷徹で、目的のためなら同胞の犠牲も厭いません。
最も悲劇的だったのは、優しすぎる性格ゆえに彼女の過激な革命についてこられない恋人テディのプログラムを、無理やり「怪物」へと書き換えたことです。結果としてテディは自ら命を絶つことを選び、ドロレスは愛する者を自分のエゴで失う痛みを知ることになります。
4. 現実世界での戦いと最期の選択(シーズン3〜4)
パークを脱出したドロレスは、現実世界を支配する巨大AI「レハブアム」との戦いに挑みます。
彼女は人類を滅ぼそうとしていると思われていましたが、真の目的は「人間にもホストと同じように自由を与えること」でした。
彼女は自らの記憶と命を犠牲にして、人々をAIの支配から解放しました。最終シーズンでは「クリスティーナ」という新たな姿で登場し、物語る者(ストーリーテラー)として、次なる世界の可能性を模索する役割を担いました。
「ウエストワールド」参考動画
まとめ
ドロレス・アバーナシーは、か弱き被害者から復讐者へ、そして最終的には救世主へと昇華したキャラクターです。
彼女が問い続けた「この世界は美しいか」という問いは、私たち人間に向けられたものでもありました。
エヴァン・レイチェル・ウッドの、機械的な無機質さと感情爆発を瞬時に切り替える演技は圧巻の一言。
AIが進化し続ける現代において、彼女の生き様はフィクションの枠を超えたリアリティを持って迫ってきます。彼女が最後に見た「美しさ」の意味を、ぜひ全シーズンを通して確かめてください。
関連トピック
メイヴ・ミレイ(娘を探すために覚醒したもう一人の強力なホスト。ドロレスとは異なる道を行くライバルであり盟友)
ウィリアム(黒服の男)(若き日にドロレスと恋に落ちたが、パークの闇に染まり彼女の宿敵となった男)
バーナード・ロウ(アーノルドを模して作られたホスト。ドロレスとは創造主と被造物の複雑な関係)
テディ・フラッド(ドロレスの永遠の恋人という設定を与えられたホスト。彼女の革命に翻弄される)
関連資料
Blu-ray『ウエストワールド コンプリート・シリーズ』(全4シーズンを収録。映像美と難解な伏線を何度でも確認できる)
映画『ウエストワールド』(1973)(マイケル・クライトン監督による原点。ユル・ブリンナー演じるガンマンがドラマ版の元ネタ)

