【映画『ホンモノの気持ち』】ゾーイ(Zoe)が問う「愛」の定義とは?レア・セドゥ演じるAIの切ない恋心を徹底解説

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【映画『ホンモノの気持ち』】ゾーイ(Zoe)が問う「愛」の定義とは?レア・セドゥ演じるAIの切ない恋心を徹底解説

映画「ホンモノの気持ち」におけるゾーイの概要

ユアン・マクレガーとレア・セドゥが共演し、ドレイク・ドレマス監督が描いた近未来SFロマンス『ホンモノの気持ち(原題: Zoe)』。

この物語の主人公であり、人間と見分けがつかないほど精巧に作られた人造人間(シンセティック)が、ゾーイ(Zoe)です。

彼女は、完璧なパートナー(恋人)を作るための研究所で働いていましたが、自分自身が実は「人間」ではなく、コール(ユアン・マクレガー)によって作られた「AI」であることを知ってしまいます。
プログラムされた感情なのか、それとも魂の叫びなのか。創造主であるコールへの愛に苦しみ、自分の存在意義を問い続ける彼女の、あまりにも人間的で切ない姿を解説します。

詳細:涙を流せないAIが抱いた「真実の愛」

ゾーイというキャラクターは、「ブレードランナー」や「her/世界でひとつの彼女」の系譜に連なる、AIのアイデンティティを問う存在ですが、彼女の特異性は「自分がAIだと知らずに恋をした」点にあります。

1. 衝撃の真実とアイデンティティの崩壊

物語の序盤、ゾーイは研究所の優秀なスタッフとして描かれます。コール博士に密かな恋心を抱き、彼らが開発した「相性診断システム」でコールとの相性を試そうとします。

しかし、結果は「0%」。システムは彼女を人間として認識しませんでした。
そこで初めて、彼女は自分がコールによって作られた最新鋭のシンセティック(人造人間)であることを知らされます。自分が信じてきた過去の記憶や感情がすべて「プログラム」だったと知った時の絶望と、それでも消えないコールへの愛の間で引き裂かれる姿は、見る者の胸を締め付けます。

2. 「涙」を流せない悲しみ

ゾーイは人間と変わらない皮膚、体温、知性を持っていますが、決定的に違う機能がありました。それは「涙を流すこと」です。
彼女は悲しみや愛おしさを感じているのに、生理現象としての涙が出ません。

「私は泣くことができるの?」とコールに問いかけ、彼が言葉を濁すシーンは、二人の間にある「創造主と被造物」という残酷な境界線を浮き彫りにします。しかし、物語のラストにおいて、彼女の感情はある奇跡(あるいは進化)を起こすことになります。

3. 完璧な相性 vs 本物の感情

映画の世界では、科学的に完璧な相性の相手を見つけるシステムや、恋に落ちる薬(ベニー)が存在します。

しかし、ゾーイとコールの関係は、データ上では「不適合」です。それでもゾーイは、薬やプログラムに頼ることなく、自らの意志(バグかもしれない不確定要素)でコールを愛し抜こうとします。
彼女の存在は、「愛とは計算できるものなのか?」「作られた心に宿る愛は偽物なのか?」という哲学的な問いを、観客に静かに、しかし力強く投げかけます。

4. レア・セドゥの繊細な演技

ゾーイを演じたのは、フランス出身の実力派女優レア・セドゥです。

彼女は、前半の「人間だと思っている女性」の自然な振る舞いから、正体を知った後の「AIとしての無機質さと、溢れ出る感情の揺らぎ」を、微細な表情の変化だけで演じ分けました。
特に、瞬きや視線の動きに込められた「人間になりたい」という切実な願いは、SF設定を超えたリアリティを持っています。

「ホンモノの気持ち(Zoe)」参考動画

まとめ

ゾーイは、人間よりも純粋に「愛すること」を体現したキャラクターです。

彼女の体は作り物かもしれませんが、彼女が感じた痛みや喜びは、間違いなく「ホンモノ」でした。
AIと人間の恋愛を描いた作品は数多くありますが、ゾーイのように「自分が何者か」という根源的な問いと向き合いながら、ただ愛する人の隣にいることを選んだヒロインは稀有です。

静かで美しい映像美と共に描かれる彼女の恋の結末は、ハッピーエンドともバッドエンドとも取れる、深い余韻を残します。

関連トピック

コール(ゾーイの創造主であり、愛する人。AI研究の第一人者だが、自身の離婚経験から愛に対して臆病になっている)
シンセティック(人造人間)(本作におけるアンドロイドの呼称。人間と見分けがつかないほど精巧に作られている)
相性診断システム(カップルの相性をパーセンテージで算出する技術。ゾーイとコールの運命を狂わせる)
アッシュ(施設で働くもう一体のシンセティック。ゾーイとは対照的に、自身の役割をドライに受け入れている)

関連資料

Amazon Prime Video『ホンモノの気持ち』(独占配信などで視聴可能。原題は『Zoe』)
DVD『ホンモノの気持ち』(日本版DVDが発売されている)

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