怪傑ゾロのうんちく徹底解説!「Z」の刻印に隠された黒い仮面のヒーロー誕生秘話
「怪傑ゾロ」の概要
『怪傑ゾロ』(かいけつゾロ、原題: Zorro)は、1919年にアメリカのパルプ・マガジン作家ジョンストン・マッカレーによって生み出されたヒーローキャラクター、およびその主人公が活躍する作品群の総称です。
スペイン統治時代のカリフォルニアを舞台に、黒い仮面とマント、レイピア(細身の剣)を携えた剣士「ゾロ」が、圧政に苦しむ民衆を救うために戦う物語です。
その象徴的な「Z」の刻印と、昼の姿(ドン・ディエゴ)と夜の姿(ゾロ)を使い分ける二面性は、後世の多くのヒーロー像に決定的な影響を与えました。
この記事では、100年以上にわたって愛され続ける「怪傑ゾロ」の概要と、その魅力的な「うんちく」の数々を徹底的に解説します。
「怪傑ゾロ」の詳細とトリビア
『怪傑ゾロ』を深く理解するための、いくつかの興味深い「うんちく」をご紹介します。
「ゾロ」の意外な意味と誕生
「ゾロ(Zorro)」という名前は、スペイン語で「雄ギツネ(Fox)」を意味します。
これは、彼がギツネのように狡猾で、神出鬼没に現れては悪党を出し抜き、颯爽と去っていく姿に由来しています。
ゾロが誕生したのは、1919年にパルプ・マガジン『オール・ストーリー・ウィークリー』で連載された小説『カピストラノの呪い(The Curse of Capistrano)』が最初でした。
当初、この作品は読み切りでゾロの正体が明かされて終わる予定でしたが、あまりの人気に続編が書かれることになりました。
世界的人気は「映画」から
小説として誕生したゾロですが、その人気を世界的に決定づけたのは、1920年に公開されたサイレント映画『奇傑ゾロ(The Mark of Zorro)』です。
当時絶大な人気を誇ったスター俳優、ダグラス・フェアバンクスが演じたゾロは、華麗な剣さばきとアクロバティックなアクションで観客を魅了しました。
この映画の大ヒットにより、ゾロの「黒い衣装と仮面、マント」というビジュアルイメージが確立されました。
ゾロの「昼の顔」の重要性
ゾロの正体は、裕福な貴族の息子「ドン・ディエゴ・デ・ラ・ベガ」です。
彼の最大の特徴は、公の場では詩を愛し、争いごとを嫌う「気弱な伊達男」を演じている点にあります。
この「頼りない昼の顔」と「正義の味方である夜の顔」というギャップこそが、ヒーローの正体を隠すための最も重要なカモフラージュとなっています。
この「二面性を持つヒーロー」という設定は、ゾロが元祖の一つとされています。
あの超有名ヒーローの「親」だった
ゾロが生み出した「二面性」「裕福な家の出身」「秘密の拠点(洞窟)」「正義のための仮装」という設定は、ある超有名なヒーローに多大な影響を与えました。
それは、DCコミックスの「バットマン」です。
バットマンの作者であるボブ・ケインは、ゾロ(特にダグラス・フェアバンクス版)から大きなインスピレーションを得たことを公言しています。
さらに有名なうんちくとして、バットマンことブルース・ウェインが少年時代、両親が強盗に殺害されたその夜に観ていた映画こそが、ゾロの映画『The Mark of Zorro』だった、という設定が後のコミックで加えられました。
つまり、ゾロはバットマン誕生のきっかけとなった「ヒーローのヒーロー」なのです。
ディズニー版による人気の確立
日本では、特に1950年代後半からウォルト・ディズニー・プロダクションが製作したテレビドラマシリーズ『怪傑ゾロ(原題:Zorro)』によって、その人気が不動のものとなりました。
ガイ・ウィリアムズが演じたゾロは、スマートな剣さばきと、馬の「トルネード」と共に現れる勇姿で、日本中の子供たちの心を掴みました。
「♪ゾーロ、ゾーロ」と連呼する、あの有名なテーマソングを記憶している人も多いでしょう。
様々な「ゾロ」たち
ゾロは100年の歴史の中で、非常に多くの俳優によって演じられてきました。
初代のダグラス・フェアバンクス、テレビ版のガイ・ウィリアムズのほか、1940年版のタイロン・パワー、1975年にはフランスのスター、アラン・ドロンも『アラン・ドロンのゾロ』で主演を務めました。
近年では、1998年の映画『マスク・オブ・ゾロ』でアントニオ・バンデラスが演じた「二代目ゾロ(アレハンドロ)」が、アンソニー・ホプキンス演じる「初代ゾロ(ディエゴ)」から後継者として指導を受けるという形で、新たなゾロ像を打ち立てました。
日本でもアニメ化
海外ドラマや映画だけでなく、日本でもゾロは人気を博し、1996年には『快傑ゾロ』としてNHK衛星アニメ劇場でテレビアニメが放送されました。
このアニメ版は、原作の舞台や設定を踏襲しつつ、ゾロの少年時代の友人や新たなライバルが登場するなど、オリジナルの要素も加えて人気となりました。
参考動画
まとめ
『怪傑ゾロ』は、単なる古典的な活劇ヒーローではありません。
彼が生み出した「仮面とマント」「二面性」「秘密の拠点」といった要素は、その後の「スーパーヒーロー」というジャンルそのものの基礎となりました。
圧政に苦しむ人々のために、裕福な地位を捨てて(演じながら)戦うその姿は、ダグラス・フェアバンクスの時代からアントニオ・バンデラスの時代、そして現代に至るまで、変わることのないロマンと正義の象徴として輝き続けています。
もしあなたが『バットマン』などの現代のヒーローが好きならば、その偉大なる「父」とも言える『怪傑ゾロ』の世界に触れてみてはいかがでしょうか。
関連トピック
バットマン: ゾロから最も強く影響を受けたヒーローとして知られています。ブルース・ウェインのキャラクター造形に、ドン・ディエゴの面影を見ることができます。
スカーレット・ピンパーネル (紅はこべ): ゾロに先立ち、「昼は愚鈍な貴族、夜は正義の味方」という二面性ヒーローの原型を確立したと言われるイギリスの小説・戯曲です。
ジョンストン・マッカレー: ゾロの生みの親であるアメリカの作家です。『カピストラノの呪い』がヒットした後、生涯で60以上ものゾロの物語を執筆しました。
ダグラス・フェアバンクス: 1920年の映画『奇傑ゾロ』で主演し、ゾロのイメージを世界中に広めたサイレント映画時代の大スターです。
関連資料
マスク・オブ・ゾロ (Blu-ray/DVD): アントニオ・バンデラス、アンソニー・ホプキンス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが出演した1998年の大ヒット映画です。現代的なアクションでゾロの魅力を再構築しました。
ディズニー版 怪傑ゾロ (DVD): ガイ・ウィリアムズ主演のテレビドラマシリーズです。日本でのゾロ人気を決定づけた不朽の名作として知られています。
快傑ゾロ (アニメDVD): 1996年に日本で製作・放送されたテレビアニメ版です。子供から大人まで楽しめる冒険活劇として人気を博しました。
カピストラノの呪い (書籍 / 邦訳版): ジョンストン・マッカレーによるゾロの原点となった小説です。ヒーロー誕生の瞬間を原文で読むことができます。