映画『リレー:声なき仲介者』は、内部告発者と巨大企業のあいだで「口止めの取引」をまとめる謎のフィクサーを描いた、骨太のサスペンス・スリラーです。
日本では劇場公開されず配信スルーとなりましたが、Amazonプライム・ビデオで「人気上昇中」として話題になり、隠れた良作として注目を集めています。
この記事では、作品の基本情報やあらすじはもちろん、タイトルの由来である「電話リレーサービス」の仕組み、英語圏のインタビューから拾った制作秘話、海外の評価まで詳しく解説します。
後半には結末と考察(ネタバレあり)もまとめているので、鑑賞後の答え合わせにもご活用ください。
この記事でわかること
- 『リレー:声なき仲介者』のあらすじ・キャスト・日本での視聴方法
- タイトルの由来「電話リレーサービス」と、作品を支えるアナログな仕掛け
- 英語圏のインタビューで明かされた制作秘話・トリビア
- Rotten Tomatoes、Metacritic、IMDbなど海外での評価と、結末をめぐる賛否
『リレー:声なき仲介者』作品の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原題 | Relay |
| 邦題 | リレー:声なき仲介者 |
| 制作国 | アメリカ |
| 公開年 | 2024年(トロント国際映画祭で世界初上映)/2025年8月22日 全米劇場公開 |
| ジャンル | サスペンス・スリラー |
| 監督 | デヴィッド・マッケンジー(David Mackenzie) |
| 脚本 | ジャスティン・パイアセッキ(Justin Piasecki) |
| 原作 | なし(オリジナル脚本) |
| 製作 | ブラック・ベア・ピクチャーズ、サンダー・ロード・フィルムズ、シグマ・フィルムズ |
| 配給 | ブリーカー・ストリート(米国)/ソニー・ピクチャーズ(日本でのデジタル配信) |
| 上映時間 | 112分(映画祭・Wikipedia英語版の表記。配信版は107分〜112分と表記に幅あり) |
| 日本での視聴方法 | Amazonプライム・ビデオで見放題配信中、U-NEXTなどでレンタル配信(2026年10月時点) |
作品の概要
『リレー:声なき仲介者』は、『最後の追跡』(Hell or High Water)でアカデミー賞作品賞にノミネートされたスコットランド出身の監督デヴィッド・マッケンジーが手がけたサスペンス・スリラーです。
主演は『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』でアカデミー主演男優賞にノミネートされたリズ・アーメッド、共演に『シンデレラ』のリリー・ジェームズ、『アバター』のサム・ワーシントンが名を連ねています。
脚本はジャスティン・パイアセッキによるオリジナルで、もともとは『The Broker(ブローカー)』というタイトルでした。
2019年に、ハリウッドで「まだ映画化されていない優れた脚本」を業界関係者の投票で選ぶ「ブラックリスト(The Black List)」に選出されたことで注目を浴び、映画化が実現しています。
パイアセッキにとっては、これが長編映画デビュー作です。
物語の舞台は現代のニューヨークです。
主人公は、内部告発を思いとどまった人物と、告発されかけた企業とのあいだに入り、「証拠を返す代わりに金と身の安全を保証させる」という裏の取引をまとめるフィクサーです。
彼は自分の声や素性を一切明かさないために、本来は聴覚障害者のための公的サービスである「電話リレーサービス」を利用して依頼人とやり取りします。
作品全体には、1970年代の陰謀スリラー、いわゆる「パラノイア・スリラー」へのオマージュが色濃く漂っています。
スマホやネットではなく、公衆電話、郵便、テレタイプ端末といったアナログな道具で追う者と追われる者が知恵比べを繰り広げる点が、むしろ新鮮に感じられるはずです。
派手な爆発やCGに頼らず、緊張感と駆け引きで見せる大人向けのスリラーが好きな人、『コンドル』や『カンバセーション…盗聴…』のような古典的な陰謀映画が好きな人には特におすすめです。
また、リズ・アーメッドの「ほとんどしゃべらないのに雄弁な」演技を味わいたい人にもぴったりの一本です。
『リレー:声なき仲介者』予告編
あらすじと世界観(ネタバレなし)
物語の出発点
ニューヨークの雑踏に紛れるように暮らすアッシュは、企業の不正を知ってしまった人々を守る「仲介人」です。
彼の顧客は、内部告発を考えたものの、企業からの脅迫や監視に耐えられず「もう証拠を返して元の生活に戻りたい」と望む人たちです。
アッシュは証拠のコピーを保険として手元に残したうえで、企業から口止め料を引き出し、依頼人の安全を確保します。
ある日、バイオテクノロジー企業の研究者サラ・グラントが、弁護士を通じてアッシュの存在を知り、助けを求めてきます。
彼女は、会社が開発した遺伝子組み換え小麦に深刻な健康リスクがあることを示す報告書を持ち出していました。
当初は告発するつもりでしたが、会社が送り込んだ監視チームに四六時中つきまとわれ、命の危険すら感じるようになっていたのです。
タイトルの由来「電話リレーサービス」とは
本作の最大の特徴が、アッシュの連絡手段である「電話リレーサービス(Telecommunications Relay Service)」です。
これは、耳の聞こえない人や発話が難しい人のために、オペレーターが文字と音声を通訳して電話をつなぐ公的なサービスです。
アッシュはテレタイプ端末(TTY/TDD)で文字を打ち、オペレーターがそれを読み上げて相手に伝えるため、彼の声は決して相手に届きません。
さらに、このサービスは利用者のプライバシー保護が厳格で、通話の記録が残らない仕組みになっています。
劇中でも、企業側の追跡チームが発信元をたどろうとしますが、法律の壁に阻まれます。
話し終えるたびに「ゴー・アヘッド(どうぞ)」と言うという独特の会話ルールも、物語の緊張感を高める小道具として巧みに使われています。
追う者と追われる者の頭脳戦
サラを監視しているのは、冷酷なリーダーのドーソン率いる企業側の「回収チーム」です。
アッシュは姿を隠したままサラに細かな指示を出し、変装をしながら現場に潜り込み、チームの動きを逆に監視していきます。
飛行機、郵便、鉄道といった日常のインフラを使って追っ手を撒く手口の数々は、まるでチェスの対局を見ているようです。
しかし、決して依頼人と顔を合わせないことを鉄則としてきたアッシュは、孤独を抱えたサラとのやり取りを重ねるうちに、少しずつ自分のルールを破りはじめます。
「声なき仲介者」が守ろうとするものは何なのか、そして取引の行方はどうなるのかが、物語の大きな見どころです。
『リレー:声なき仲介者』の見どころ
前半ほぼ無言、リズ・アーメッドの「目」の演技
アッシュは、映画の前半ではほとんど言葉を発しません。
海外の批評でも、リズ・アーメッドが目と佇まいだけで人物の過去や孤独を感じさせる演技は、繰り返し絶賛されています。
アッシュが自らを「幽霊のような存在」にすることで、内なる弱さから身を守っていることが、セリフではなく表情から伝わってきます。
アナログ技術が生む独特のサスペンス
本作では、スマホのハッキングや監視カメラといった現代的な手段ではなく、TTY端末、公衆電話、郵便の転送、使い捨て携帯といったアナログな道具が駆け引きの主役です。
海外メディアの中には、この作品を「アナログへのラブレター」と表現したものもあります。
「記録が残らない電話」という一見地味な設定が、ここまでスリリングな仕掛けになるのかと驚かされるはずです。
七変化の変装とニューヨークの街並み
アッシュは、配達員、警官、工事作業員など、さまざまな職業に変装して追跡チームの懐に入り込みます。
海外の批評家からも、衣装を替えるたびに楽しさが増すと好意的に評されたポイントです。
ニューヨークの何気ない街角やメトロノース鉄道(ニューヨーク近郊の通勤路線)を舞台にした追跡劇も、ロケならではのリアリティがあります。
会わないふたりの「スロー・バーン」な関係
アッシュとサラは、劇中でほとんど直接顔を合わせません。
それでも、オペレーター越しの短いやり取りを通して、孤独なふたりのあいだに不思議な絆が生まれていきます。
リズ・アーメッド自身も、ふたりが会うのか、心が通じ合うのかという「じわじわと高まる関係性」こそが、緊張感の源泉だと語っています。
70年代陰謀スリラーへのオマージュ
海外の批評家たちは、本作を『パララックス・ビュー』や『カンバセーション…盗聴…』、『コンドル』といった1970年代の名作と比較しています。
巨大企業の権力に個人が立ち向かうというテーマや、街中でのロケ撮影を多用した硬質な映像は、まさにあの時代の空気をまとっています。
撮影監督ジャイルズ・ナットジェンズ(Giles Nuttgens)による、ひんやりとした金属的な色調の映像も見逃せません。
制作秘話・トリビア
主人公の名前は当初「トム」だった
2023年に映画化が報じられた当初、主人公の名前は「トム」と発表されていました。
完成した本編では主人公の名前は「アッシュ」となっていますが、劇中で彼が別の場面で使う偽名として「トム」が登場します。
そのため、海外のデータベースやレビューの一部には、今も主人公を「トム」と表記しているものが残っています。
監督も「本当に実在するのか?」と驚いた
マッケンジー監督は米メディアのインタビューで、脚本を読んだとき、多くの人と同じように「このサービスは本当に存在するのか」と驚いたと明かしています。
リレーサービスは、より手軽な技術の登場によって今ではほとんど使われなくなりつつある、と監督は語っています。
しかし、アッシュの「隠れ家」の撮影場所としてペンシルベニア駅(ニューヨークの主要ターミナル駅)をロケハンした際、公衆電話の並びにTTY用のブースが今も残っているのを見つけ、大いに感激したそうです。
リリー・ジェームズは「誰もいない電話」に向かって演技
サラの電話の場面の多くは、リリー・ジェームズがひとりで撮影し、アッシュのセリフはカメラの外から別の俳優が読み上げる形で進められました。
ジェームズは、ニューヨークの夜間撮影で「誰もいない相手」と電話をする不思議な状況だったと笑いながら振り返っています。
ただ、その孤独な撮影環境こそが、サラとアッシュに共通する寂しさを表現するうえで大きな意味を持った、とも語っています。
監督が出した「宿題」は70年代スリラー
リリー・ジェームズによると、マッケンジー監督は役作りのために古典的なスリラー映画を大量に観るよう勧めたそうです。
作品のトーンや空気感をつかむうえで、これが非常に役立ったとジェームズは語っています。
全米公開直前には、配給会社が70年代風にデザインした特別な予告編まで公開し、作品のルーツを前面に打ち出しました。
『サウンド・オブ・メタル』の手話がここで生きる
リズ・アーメッドは『サウンド・オブ・メタル』で聴覚を失うドラマーを演じた際、アメリカ手話(ASL)を習得しました。
本作でも、耳の聞こえない協力者と手話で会話する短い場面があり、海外のファンや批評家からは「うれしいセルフオマージュ」として話題になりました。
冒頭のリレーサービスの場面では、観客がアーメッドが再び聴覚障害者を演じているのかと錯覚する作りになっている点も面白いところです。
脚本を書き換えた「オペレーターのふり」の場面
マッケンジー監督は米公共ラジオNPRのインタビューで、ある重要な電話の場面は、もともと別のリレーオペレーターを通した通話として書かれていたと明かしています。
撮影版では、アッシュが自らオペレーターのふりをしてサラに直接電話をかけるという展開に変更されました。
監督は、アッシュとサラのあいだには「孤立と孤独という共通の絆」があると語っており、この変更はふたりの距離を縮める重要な一手になっています。
完成から全米公開まで約1年
撮影は2023年4月にニューヨークで始まり、ニュージャージー州でもロケが行われました。
2024年9月のトロント国際映画祭でワールドプレミアを迎えた後、同年11月にブリーカー・ストリートが米国配給権を獲得し、2025年6月のトライベッカ映画祭を経て、8月22日にようやく全米公開されています。
日本では劇場公開されず、2026年2月にソニー・ピクチャーズからデジタル配信でリリースされました。
キャストとキャラクター紹介
アッシュ(演:リズ・アーメッド)
素性を一切明かさず、電話リレーサービスを使って依頼人とやり取りする凄腕のフィクサーです。
緻密な計画と厳格なルールで自分を守り、街に溶け込む変装の名人でもあります。
禁酒の自助グループに通う一面もあり、過去に抱えた深い傷が少しずつ明らかになっていきます。
依頼人サラとの出会いによって、彼が守り続けてきたルールが揺らぎはじめます。
サラ・グラント(演:リリー・ジェームズ)
バイオテクノロジー企業に勤める研究者で、遺伝子組み換え小麦の危険性を示す報告書を持ち出した人物です。
告発を考えたものの、会社の執拗な監視と脅しに追い詰められ、アッシュに助けを求めます。
怯えながらも芯の強さを感じさせる彼女の存在が、物語に大きな波乱を呼び込みます。
ドーソン(演:サム・ワーシントン)
企業側に雇われた「回収チーム」を率いるリーダーです。
目的のためなら手段を選ばない冷徹な男で、アッシュの正体と居場所を執拗に追い続けます。
アッシュとの知恵比べは、本作の最大の見せ場のひとつです。
ロセッティ(演:ウィラ・フィッツジェラルド)
ドーソンの右腕として回収チームを支えるメンバーです。
冷静で抜け目がなく、チームの監視・追跡作戦で重要な役割を担います。
ウォッシュ(演:エイサ・デイヴィス)
アッシュが通う自助グループで、彼の支えとなっている人物です。
本業は警察の刑事で、他人を信用しないアッシュにとって数少ない信頼できる存在として描かれます。
ホフマン(演:マシュー・マー)/マクヴィー(演:ヴィクター・ガーバー)
ホフマンは、映画の冒頭でアッシュの仲介によって企業と取引をした元社員です。
マクヴィーは、そのホフマンが勤めていた企業「オプティモ」のCEOで、『タイタニック』などで知られるベテラン俳優ヴィクター・ガーバーが演じています。
この冒頭の一件が、後の展開に意外な形でつながっていきます。
主要キャスト・スタッフの経歴と代表作
リズ・アーメッド(Riz Ahmed)
1982年ロンドン生まれのイギリスの俳優・ラッパーです。
HBOのドラマ『ナイト・オブ・キリング 失われた記憶』で注目を集め、『ナイトクローラー』『ジェイソン・ボーン』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『ヴェノム』など話題作に次々と出演してきました。
『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、短編映画『The Long Goodbye』ではアカデミー賞短編実写映画賞を受賞しています。
近年は『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』にも出演し、自ら主演する新解釈の『ハムレット』や、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督とトム・クルーズによる新作にも参加しています。
リズ・アーメッドは本作でも、セリフに頼らず存在感で語るという持ち味を存分に発揮しており、海外では「『サウンド・オブ・メタル』以来のベストアクト」と評する批評家もいました。
リリー・ジェームズ(Lily James)
イギリス出身の女優で、ドラマ『ダウントン・アビー』で注目され、ディズニー実写版『シンデレラ』で主演を務めました。
その後も『ベイビー・ドライバー』『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』などに出演し、ドラマ『パム&トミー』ではパメラ・アンダーソン役でエミー賞にノミネートされています。
近年はプロレス一家を描いた『アイアンクロー』でも評価を高めました。
本作では、か弱さの奥に読み取れない何かを秘めたサラを演じ、海外の批評家からは「二度目の鑑賞でこそ面白さがわかる演技」とも評されています。
サム・ワーシントン(Sam Worthington)
オーストラリア出身の俳優で、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』シリーズの主人公ジェイク・サリー役で世界的に知られています。
『ターミネーター4』『タイタンの戦い』などの大作でも主演を務めました。
マッケンジー監督とは、ドラマ『アンダー・ザ・ヘブン 信仰の真実』でも組んでおり、本作は再タッグとなります。
ウィラ・フィッツジェラルド(Willa Fitzgerald)
アメリカの女優で、Amazonのドラマ『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~』シーズン1のロスコー役や、スリラー映画『ストレンジ・ダーリン』の主演で注目を集めています。
本作では回収チームの一員として、静かな凄みを見せています。
デヴィッド・マッケンジー監督(David Mackenzie)
1966年生まれ、スコットランドを拠点に活動する映画監督です。
『ヤング・アダム』『パーフェクト・センス』『名もなき塀の中の王』など、ジャンルの異なる作品を撮り続けてきたことで知られています。
『最後の追跡』(2016年)はアカデミー賞で作品賞を含む4部門にノミネートされ、彼の代表作となりました。
その後、Netflix映画『アウトロー・キング ~スコットランドの英雄~』やドラマ『アンダー・ザ・ヘブン 信仰の真実』を手がけています。
『アウトロー・キング』はトロント国際映画祭での初上映後に大幅に再編集されたことでも話題になりましたが、本作では同じトロントの地で、緻密に組み立てられたスリラーを披露しました。
作曲のトニー・ドゥーガン(Tony Doogan)は『アウトロー・キング』でも監督と組んだ常連スタッフです。
結末と考察(ネタバレあり)
⚠️ここから先はネタバレを含みます。
未見の方はご注意ください。
サラの正体という大どんでん返し
物語の終盤、アッシュはサラを救うためについに自らのルールを破り、素性を明かして彼女の前に姿を現します。
しかし、最大のどんでん返しは、サラこそが企業側の回収チームの一員だったという事実です。
本当の標的はサラの報告書ではなく、冒頭でホフマンが手放した「オプティモ」の不正の証拠であり、それを保険として保管しているアッシュ自身でした。
サラの依頼は最初から、アッシュをおびき出し、彼が隠し持つ証拠の保管場所を突き止めるための罠だったのです。
観客がアッシュと同じ目線でサラに肩入れしていたからこそ、この裏切りは強烈に効いてきます。
アッシュの過去と「沈黙で稼ぐ」ことへの罪悪感
物語の途中、アッシュは自助グループで、自分が9.11の後に酒に溺れたこと、そしてかつて自分自身も企業の不正を暴こうとした過去があることを打ち明けます。
彼は今、告発者たちの「沈黙」を仲介することで金を得ていることに罪悪感を抱えています。
冒頭のホフマンが、告発をやめたことへの後悔を何度も留守電に残す場面も、アッシュの心の傷を映す鏡になっています。
ラストシーンの意味
最終的に、アッシュは刑事でもあるウォッシュの助けを得て窮地を脱し、ドーソンやサラらは逮捕されます(ロセッティは逃走)。
アッシュは、唯一信頼できる相手であるウォッシュに、これまで保管してきた証拠を託します。
そして、受け取った50万ドルの大半をリレーサービスに送り、列車で街を去るのと同時に、オプティモの不正を報じるニュースが流れます。
この結末は、「沈黙を売る仲介者」だったアッシュが、最後に「真実を世に出す側」へと回ったことを示しています。
自分の声を隠すために使っていたリレーサービスへの送金は、障害を持つ人々のためのインフラを利用してきたことへの、彼なりの恩返しとも読み取れます。
タイトルの「リレー」には、通信サービスの名前と同時に、埋もれかけた真実をバトンのように次へつなぐという意味も重ねられているのではないでしょうか。
ラストの展開は賛否両論
一方で、この終盤の展開は海外で大きく評価が分かれました。
サラの裏切りは「予想外で効果的」と評価する声がある一方、「途中で読めてしまう」「やや無理がある」という批判も少なくありません。
特にウォッシュの登場による決着は、都合のよい「デウス・エクス・マキナ(ご都合主義的な解決)」だと指摘する批評家もいました。
海外の評価と反響
評価スコア(2026年10月時点)
- Rotten Tomatoes:Tomatometer(批評家スコア)82%(147件)/Popcornmeter(観客スコア)89%
- IMDb:7.0/10
- Metacritic:Metascore 70(批評家28人、「おおむね好評」の評価)
Rotten Tomatoesの批評家総評では、古典的な陰謀映画のざらついたリアリティを思わせる知的なスリラーで、どんでん返しがひとつ多すぎるものの、最後まで見事に走り切った作品、という趣旨でまとめられています。
全米での興行収入は約400万ドルと小規模にとどまり、「もっと大きく公開されるべきだった」と惜しむ批評家もいました。
批評家が評価したポイント
最も多く称賛されたのは、やはりリズ・アーメッドの抑制の効いた演技です。
また、電話リレーサービスという独創的な設定、ニューヨークの街並みを生かした追跡劇、テンポのよい演出も高く評価されました。
米Deadlineの批評家ダモン・ワイズは、いたちごっこの追跡劇を独創的でスリリングだと評し、ロサンゼルス・タイムズのロバート・アベルは、演出・編集と、ひんやりとした質感の撮影を称えています。
英ガーディアン紙の著名な映画評論家ピーター・ブラッドショーは、2025年の年間ベスト企画の中で、ジャスティン・パイアセッキの脚本を選出しました。
デビュー作の脚本がこうした形で評価されたことは、大きな勲章と言えるでしょう。
批判されたポイント
一方で、終盤のどんでん返しについては厳しい意見も目立ちます。
RogerEbert.comのマット・ゾラー・サイツは、技術面や演技、明快なセリフを高く評価しつつも、ご都合主義的な結末には否定的でした。
アッシュの過去を語る場面が説明的すぎる、リリー・ジェームズの役が脚本上やや損な役回りになっている、といった指摘も見られます。
ロサンゼルス・タイムズのレビューでは、一部の音楽の選曲に違和感があるとも述べられていました。
日本での反響
日本では劇場未公開の配信スルー作品でしたが、Amazonプライム・ビデオの見放題に加わったことで「人気上昇中」として多くの人の目に触れるようになりました。
日本のレビューサイトでは、「電話リレーサービスという仕組みを初めて知った」という声が多く、作品をきっかけにサービスの存在に関心を持った人も少なくないようです。
「静かに進むが要所でハラハラする」「隠れた良作」と評価する声がある一方、海外同様に終盤の展開については好みが分かれています。
よくある質問(FAQ)
『リレー:声なき仲介者』はどこで見られますか?
2026年10月時点で、Amazonプライム・ビデオで見放題配信されています。
U-NEXTやLeminoなどではレンタル配信も行われています。
配信状況は変わる可能性があるため、視聴前に各サービスでご確認ください。
実話がもとになっているのですか?
物語自体はジャスティン・パイアセッキによるオリジナル脚本で、特定の実話をもとにしたものではありません。
ただし、劇中の電話リレーサービスは実在する仕組みで、劇中の「トライステート・リレー・サービス」という名称のみが架空のものです。
原作小説はありますか?
原作はありません。
2019年に「ブラックリスト」に選ばれたオリジナル脚本『The Broker』が映画化されたものです。
続編はありますか?
2026年10月時点で、続編の製作は発表されていません。
物語は本作でひとつの区切りを迎える構成になっています。
リズ・アーメッドは本作でも耳が聞こえない役ですか?
いいえ、アッシュは耳が聞こえない人物ではありません。
素性を隠すために、聴覚障害者向けのリレーサービスを利用しているという設定です。
ただし、劇中には『サウンド・オブ・メタル』で習得した手話を披露する場面があります。
まとめ
『リレー:声なき仲介者』は、電話リレーサービスという意外な仕組みを軸に、巨大企業の闇と、孤独なフィクサーの心の揺れを描いた知的なサスペンス・スリラーです。
派手なアクションよりも、アナログな手段による頭脳戦と、じわじわと高まる緊張感で観客を引き込みます。
リズ・アーメッドの「語らない演技」と、リリー・ジェームズとの会わないままに深まる関係は、本作ならではの魅力です。
終盤の展開には海外でも賛否がありますが、Rotten Tomatoesで批評家82%・観客89%という数字が示すとおり、総合的には高く評価されている作品です。
1970年代の陰謀スリラーが好きな方、『最後の追跡』のような硬派な大人向け映画を求めている方、そして「最近こういう映画が少なくなった」と感じている方に、ぜひ見てほしい一本です。
鑑賞後は、ラストの意味やサラの言動を思い返しながら、もう一度最初から見直してみるのもおすすめです。
関連作品
本作に関連する公式グッズ(日本版Blu-ray・DVD、サウンドトラックなど)は、2026年10月時点で確認できませんでした。
本作を気に入った方には、同じ監督・主演による次の作品もおすすめです。
- 『最後の追跡』(Hell or High Water/デヴィッド・マッケンジー監督)
- 『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(リズ・アーメッド主演)
- 『名もなき塀の中の王』(Starred Up/デヴィッド・マッケンジー監督)
参考リスト
- Relay (film)(Wikipedia英語版)
- Relay(Rotten Tomatoes)
- Relay: Full Cast & Crew(Rotten Tomatoes)
- How Relay’s Analog Tech Gives The Classic Noir A Fresh Look(Inverse)
- Filmmaker David Mackenzie talks about his new retro crime thriller, ‘Relay’(NPR/WMRA)
- David Mackenzie Doesn’t Make the Same Film Twice(IndieWire/Yahoo)
- Relay(Tribeca Festival)
- Relay Review(JoBlo)
- Relay review(The A.V. Club)
- ‘Relay’ Review [TIFF](The Playlist)
- How to watch Relay(Flicks)
- デビッド・マッケンジー監督の新作スリラーにリズ・アーメッド&リリー・ジェームズ(映画.com)
- リレー : 声なき仲介者(ソニー・ピクチャーズ公式)
- リレー : 声なき仲介者(Prime Video)
- リレー : 声なき仲介者の動画配信サービス情報(Filmarks)
