【ギネス認定】世界最長SFドラマ「ドクター・フー」の知られざる「うんちく」と魅力を徹底解剖

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【ギネス認定】世界最長SFドラマ「ドクター・フー」の知られざる「うんちく」と魅力を徹底解剖

「ドクター・フー」の概要

「ドクター・フー(Doctor Who)」は、イギリスの公共放送BBCが制作・放送している、世界で最も長く続いているSFテレビドラマシリーズです。

1963年11月23日に放送が開始されて以来、一時的な中断を挟みながらも現在まで半世紀以上にわたって愛され続けており、「世界最長のSFテレビシリーズ」としてギネス世界記録にも認定されています。

主人公は「ドクター」と呼ばれる謎の異星人(タイムロード)。

彼は「ターディス(TARDIS)」と呼ばれる青い警察電話ボックス型のタイムマシンに乗り、地球人の仲間(コンパニオン)と共に、過去や未来、宇宙の果てまで旅をしながら、地球や宇宙の危機を救います。

イギリスでは「知らない人はいない」と言われるほどの国民的ドラマであり、その影響はポップカルチャー全体に及んでいます。

「ドクター・フー」の詳細(うんちく)

「ドクター・フー」がなぜこれほど長く続き、カルト的な人気を誇るのか。

その裏には、制作側の苦肉の策から生まれた発明や、意外な誕生秘話など、面白い「うんちく」がたくさん隠されています。

1. 主役交代の画期的なシステム「再生(リジェネレーション)」

「ドクター・フー」最大の発明であり、番組が半世紀以上続いている最大の理由は、主人公の容姿が変わる「再生(Regeneration)」という設定です。

初代ドクターを演じたウィリアム・ハートネルが高齢による健康問題で降板せざるを得なくなった際、番組を終わらせないために制作陣が考え出したのが、「タイムロードは死に際に細胞をすべて入れ替え、別の肉体(別の顔、別の性格)に生まれ変わる」というアイデアでした。

これにより、俳優が交代しても「同じ人物」として物語を継続することが可能になりました。

気難しい老人から、エキセントリックな青年、そして女性へと、ドクターは姿を変え続けています。

「次は誰がドクターを演じるのか?」という話題は、イギリスでは次期ジェームズ・ボンド役の予想と同じくらい大きなニュースになります。

2. タイムマシンが「青い警察ボックス」である理由

ドクターが乗るタイムマシン「ターディス(TARDIS)」は、なぜ宇宙船らしくない、レトロな青い箱の形をしているのでしょうか?

設定上は、「カメレオン回路(周囲の環境に合わせて外見を変える擬装機能)」が、1960年代のロンドンに降り立った際に「ポリスボックス(警察電話ボックス)」に変身したまま故障してしまい、直らなくなったから、とされています。

しかし、現実的な制作裏話(うんちく)としては、番組開始当初の「低予算」が原因です。

毎回違う惑星に合わせてセットを作り直す予算がなかったため、「故障して形が変わらない」という設定にすることで、同じプロップ(小道具)を使い回せるようにしたのです。

結果として、この青い箱は番組の象徴的なアイコンとなりました。

ちなみに、「外見は小さいのに中は広い(Bigger on the Inside)」というセリフは、初搭乗者が必ず言うお決まりのフレーズです。

3. 悪役「ダーレク」とナチス、そして胡椒瓶

ドクターの最大の宿敵である「ダーレク(Dalek)」は、金属のボディに覆われた冷酷な種族です。

「抹殺せよ!(Exterminate!)」と叫びながら攻撃してくる彼らのモデルは、第二次世界大戦中のナチス・ドイツです。

純粋な種族以外をすべて排除しようとする排他的な思想は、ナチズムへの批判が込められています。

一方で、あの独特な形状のデザインのヒントになったのは、食堂のテーブルにあった「塩胡椒の瓶」だという有名な逸話があります(デザイナー自身は否定していますが、ファンの間では有名な伝説です)。

彼らは子供たちにとって「ソファの影に隠れて見るほど怖い」存在として、番組人気を不動のものにしました。

4. 独特なオープニングテーマの秘密

SF感満載の不思議な電子音で始まるオープニングテーマも有名です。

これは1963年当時、まだシンセサイザーが存在しなかった時代に、BBCの「レディオフォニック・ワークショップ」で作られました。

テープを物理的に切り貼りしたり、逆再生したり、加工したりして作られた「ミュジーク・コンクレート(具体音楽)」の傑作です。

あの「ヒュオーン」という独特な音は、実は廃品置き場にあったピアノの弦を鍵でこすり、その音を加工して作られたと言われています。

5. 失われたエピソード

1960年代から70年代にかけて、BBCは倉庫のスペースを空けるためや、テープが高価だったために再利用しようとして、古い放送テープを大量に破棄してしまいました。

その結果、初期の「ドクター・フー」には、映像が現存しない「失われたエピソード(Missing Episodes)」が90話以上も存在します。

世界中のファンやコレクターが今も捜索を続けており、時折、海外の放送局の倉庫や個人のコレクションから発見されると、世界的な大ニュースになります。

参考動画

まとめ

「ドクター・フー」は、単なる子供向けのSF冒険活劇ではありません。

その根底には、「知性とロマンスで暴力を解決する」というドクターの哲学、変化を受け入れることの重要性、そしてどんなに時代が変わっても変わらない人間愛(ヒューマニズム)が流れています。

低予算を逆手に取ったクリエイティブな工夫や、世代を超えて受け継がれる設定の数々は、知れば知るほど奥深いものです。

現在では動画配信サービスなどで手軽に見ることができますので、ぜひこの「青い箱」の扉を開けて、時空を超えた冒険に出かけてみてください。

きっと、「中は外よりも広い」その世界観に魅了されるはずです。

関連トピック

タイムロード
ドクターの種族名。時間を操る技術を持ち、長寿で、再生能力を持つ高等種族ですが、彼らの故郷ガリフレイは「タイム・ウォー(時間戦争)」によって消滅した(という設定が物語の鍵となります)とされています。

BBC(英国放送協会)
イギリスの公共放送局。「ドクター・フー」のほか、「シャーロック」や「トップ・ギア」など世界的にヒットする番組を多数制作しています。

ターディス (TARDIS)
“Time And Relative Dimension In Space”(宇宙における時間と相対的な次元)の頭文字を取った略称。ドクターの乗り物であり、生きている意識を持つパートナーでもあります。

ダーレク (Daleks)
シリーズを代表する悪役。感情を持たず、憎悪のみで動くミュータントが戦車のような移動装置に入っています。その特徴的な声と動きは、イギリスのポップカルチャーの象徴です。

ソニック・スクリュードライバー
ドクターが愛用する万能ツール。「音のドライバー」であり、鍵を開けたり、機械をハッキングしたり、スキャンしたりできますが、銃のような武器としては使いません(木製の扉には効かないという弱点があります)。

関連資料

『ドクター・フー オフィシャル・ガイド』(書籍)
キャラクター、エイリアン、ガジェットなどが詳細に解説されたガイドブック。初心者からマニアまで楽しめる情報が満載です。

Blu-ray / DVD Box Sets
クラシックシリーズ(旧作)からニューシリーズ(2005年以降)まで、数多くの映像ソフトが発売されています。特にニューシリーズの「シリーズ1」から見始めるのが現代の視聴者にはおすすめです。

Disney+ (ディズニープラス)
2023年以降の最新シリーズは、世界市場においてDisney+が配信のホストとなっています。最新のドクターの活躍を見るための主要なプラットフォームです。

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