【ガタカ】アイリーン・カッシーニの美しさと哀しみ!「不完全」なエリートが選んだ愛の結末
映画「ガタカ」におけるアイリーン・カッシーニの概要
アンドリュー・ニコル監督によるSF映画の傑作『ガタカ(Gattaca)』。
遺伝子操作によって生まれた「適正者(ヴァリッド)」が支配する近未来を舞台に、ユマ・サーマン演じるヒロイン、アイリーン・カッシーニは、この物語のテーマを象徴する重要なキャラクターです。
彼女は、遺伝子的には優秀な適正者でありながら、心臓疾患という致命的な欠陥を抱えているため、宇宙への夢を絶たれた「不適正者(イン・ヴァリッド)」に近い立場にいます。
完璧を装う主人公ヴィンセントに惹かれ、やがて彼の嘘と真実を知ることになる彼女の、冷たくも情熱的な愛の物語を解説します。
詳細:遺伝子の呪縛と、真実の愛
アイリーン・カッシーニは、遺伝子社会の「光と影」の狭間で揺れる、非常に繊細で人間味あふれる女性です。
1. 「ガラスの天井」に阻まれたエリート
アイリーンは、ガタカ宇宙局に勤務する優秀な職員です。
遺伝子操作を受けて生まれた彼女は、知性や容姿において完璧に見えますが、わずか1%の確率で発症するはずだった心臓疾患のリスクを背負っています。
この「瑕疵(かし)」により、彼女はどれほど努力しても、土星の衛星タイタンへの探査ミッションには参加できません。地球からロケットを見上げることしか許されない彼女の姿は、遺伝子ですべてが決まる社会の残酷さを体現しています。
2. ヴィンセント(ジェローム)への疑念と憧れ
彼女は、同僚であるジェローム・モロー(実はなりすましているヴィンセント)に惹かれていきます。
彼のエリートとしての完璧な振る舞いに憧れる一方で、自分と同じようにどこか影のある彼にシンパシーを感じていました。
象徴的なシーンとして、彼女が自分の髪の毛をヴィンセントに渡し、DNA鑑定を促す場面があります。「風で飛んでいってしまった」と言って鑑定しなかったヴィンセントに対し、彼女は「調べなくても分かる」と告げます。これは、データではなく直感で彼を信じ始めた瞬間でした。
3. 真実を知った時の選択
物語の後半、彼女はヴィンセントが実は「不適正者」であり、なりすましを行っているという衝撃的な真実を知ります。
規則を重んじる彼女にとって、それは許されざる犯罪でした。しかし、遺伝子的に劣っているはずのヴィンセントが、努力と意志の力だけで運命(DNAの限界)を超えていく姿を目の当たりにし、彼女の価値観は崩壊します。
「不可能なことなんてない」と証明した彼を告発するのではなく、守り、送り出すことを選んだ彼女の決断は、彼女自身もまた遺伝子の呪縛から解放されたことを意味していました。
4. ユマ・サーマンのクール・ビューティー
アイリーンを演じたユマ・サーマンの、冷ややかで彫刻のような美しさは、本作の無機質な世界観に完璧にマッチしていました。
彼女が着用するシンプルで洗練されたスーツや、きっちりとまとめられたブロンドヘアは、90年代ミニマリズム・ファッションのアイコンとして、現在でも高く評価されています。
また、名前の「カッシーニ」は、土星探査機カッシーニ(および天文学者ジョヴァンニ・カッシーニ)に由来しており、彼女が土星に行けない運命であることを暗示しています。
「ガタカ」参考動画
まとめ
アイリーン・カッシーニは、完璧な世界における「不完全さ」の美しさを教えてくれるキャラクターです。
彼女は宇宙へ行くことはできませんでしたが、ヴィンセントを愛することで、自分自身の限界を受け入れ、同時にそれを精神的に乗り越えることができました。
ラストシーン、旅立つロケットを見つめる彼女の穏やかな表情は、希望に満ちています。
『ガタカ』はヴィンセントの夢の物語であると同時に、アイリーンの救済の物語でもあります。まだご覧になっていない方は、ぜひ彼女の視点からもこの美しい映画を楽しんでみてください。
関連トピック
ヴィンセント・フリーマン(主人公。不適正者でありながら、ジェロームになりすまして宇宙飛行士を目指す)
ジェローム・ユージーン・モロー(ヴィンセントに遺伝子情報を提供する、車椅子の元水泳選手)
アンドリュー・ニコル(本作の監督・脚本家。遺伝子差別というテーマをスタイリッシュに描いた)
マイケル・ナイマン(本作の音楽を担当。アイリーンの悲哀と美しさを際立たせる旋律を作曲)
関連資料
Blu-ray『ガタカ 4K ULTRA HD』(高画質で蘇る、アイリーンの美しさと美術セットのディテールは必見)
サントラCD『Gattaca: Original Motion Picture Soundtrack』(マイケル・ナイマンによる珠玉のスコアを収録)

