幻の2話が存在した!名作SF『タイムトンネル』日本未放送エピソードの謎と真相
『タイムトンネル』日本未放送エピソードの概要
1967年にNHKで放送され、日本中の子供たちを熱狂させたアーウィン・アレン製作のSFドラマ『タイムトンネル』。
しかし、全30話のうち、当時の日本では放送されなかった「幻の2つのエピソード」が存在することをご存知でしょうか。
本記事では、なぜその2話が放送されなかったのか、その衝撃的な内容と背景、そして現在視聴する方法について詳しく解説します。
『タイムトンネル』日本未放送エピソードの詳細
伝説のSFドラマ『タイムトンネル』とは
『タイムトンネル(The Time Tunnel)』は、1966年から1967年にかけてアメリカで制作されたSFテレビドラマです。
アリゾナ州の砂漠の地下深くに建設された極秘の科学基地。そこで開発された時間航行装置「タイムトンネル」に入り込んだ二人の科学者、トニーとダグが、過去や未来の歴史的瞬間に迷い込み、危機を乗り越えながら現代への帰還を目指す物語です。
タイタニック号の沈没、トロイの木馬、リンカーン暗殺など、教科書で見た歴史的事件を目の当たりにするワクワク感は、当時の日本の視聴者、特に少年たちに強烈なインパクトを与えました。
日本で放送されなかった「幻の2話」
NHKでの本放送時、アメリカで制作された全30話のうち、以下の2つのエピソードが放送リストから外されました。これらは長らく日本のアニメ・特撮ファンや海外ドラマファンの間で「幻のエピソード」として語り継がれてきました。
1. 第4話「The Day The Sky Fell In(真珠湾攻撃の前夜)」
【あらすじ】
主人公の一人、トニー・ニューマンが転送されたのは、1941年12月6日のハワイ・ホノルル。まさに日本軍による真珠湾攻撃の前日でした。
実はトニーはこの時、少年時代にハワイに住んでおり、父親はこの攻撃で行方不明になっていました。「父を助けたい」という個人的な感情と、「歴史を変えてはいけない」という科学者としての理性の間で葛藤するトニー。彼は日本領事館の諜報活動を阻止しようと奔走しますが、運命の朝は刻一刻と近づいてきます。
【放送されなかった理由】
最大の理由は、そのテーマが「真珠湾攻撃」そのものであったためです。
放送当時の1967年は、終戦からまだ22年しか経っていません。アメリカ視点で描かれた「卑劣な奇襲攻撃」という描写や、ステレオタイプな日本軍人の描写は、当時の日本の視聴者(特にNHKの視聴者層)には刺激が強すぎると判断されました。また、被災した日本人視聴者への配慮もあったと考えられます。
2. 第17話「Kill Two by Two(生死をかけたゲーム / 南硫黄島)」
【あらすじ】
トニーとダグが転送されたのは、1945年2月の太平洋上の孤島、南硫黄島。そこは日本軍とアメリカ軍が激しい戦闘を繰り広げている戦場でした。
二人は、米軍の攻撃で部隊を全滅させられ、たった一人で生き残った日本兵と遭遇します。この日本兵は、アメリカ人に強い憎しみを抱き、二人に対して執拗な「狩り(人間狩り)」を仕掛けてきます。敗戦濃厚な状況下で、武士道や玉砕精神を歪んだ形で信奉する日本兵との、極限状態での心理戦とサバイバルが描かれます。
【放送されなかった理由】
このエピソードも第4話と同様、「日本兵の描かれ方」がネックとなりました。
ここでの日本兵は、カミカゼ精神を盲信する狂信的な敵役として描かれており、アメリカのドラマ特有の「奇妙な日本人像」や、偏見を含んだ描写が目立ちました。これをそのまま公共放送であるNHKで流すことは不適切であると判断され、カットされたと言われています。
放送コードと時代の変化
これら2つのエピソードが「お蔵入り」になった背景には、当時の日本の放送コードと、日米関係への配慮がありました。
『タイムトンネル』はあくまで娯楽作品ですが、戦争の傷跡がまだ生々しい時代において、かつての敵国であるアメリカが制作した「日本軍が悪役として登場するストーリー」を放送することは、非常にデリケートな問題でした。
しかし、これら未放送回があることで、逆にファンの間では「どんな内容なのか観てみたい」という渇望感が生まれ、都市伝説のように語られることになったのです。
現在はどうやって観られる?
長らく幻とされてきたこれら2つのエピソードですが、現在は視聴可能です。
2014年に発売されたDVDコレクターズBOXには、日本で放送された28話に加え、未放送だったこの2話も完全収録されています。
日本語吹き替えに関しては、当時のオリジナルキャスト(トニー役の田中信夫氏、ダグ役の小林修氏など)による新録音が存在しないため、基本的には英語音声+日本語字幕、あるいは一部代役による追加収録などの形式で補完されています。
『タイムトンネル』の参考動画
まとめ
『タイムトンネル』の未放送エピソードは、単なる欠番ではなく、当時の日本の社会情勢や歴史認識を映し出す鏡のような存在です。
今改めてこれらのエピソードを視聴すると、当時のアメリカが日本をどう見ていたのか、そして戦争というテーマがいかにエンターテインメントの中で扱われてきたのかを知る貴重な資料とも言えるでしょう。
関連トピック
アーウィン・アレン: 『タイムトンネル』をはじめ、『宇宙家族ロビンソン』『巨人の惑星』などを手掛け、「パニック映画の巨匠」と呼ばれたプロデューサー。
田中信夫: 主人公トニー・ニューマンの日本語吹き替えを担当した声優。「コンバット!」のサンダース軍曹役などでも知られる名優。
放送禁止用語・欠番: テレビ放送において、政治的、倫理的理由から再放送されなくなったり、ソフト化の際にカットされたりするエピソードの問題。
関連資料
DVD『タイムトンネル コレクターズBOX Vol.1 & Vol.2』: 日本未放送の2話を含む全30話を収録した完全版DVDボックス。
書籍『アーウィン・アレンの世界』: 60年代SFドラマ黄金期を築いたプロデューサーの功績と作品解説をまとめた研究本。

