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『新スタートレック』屈指の神回「亡霊戦艦エンタープライズC」!歴史改変が生んだ戦慄のパラレルワールドとターシャ・ヤーの帰還

SF
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『新スタートレック』屈指の神回「亡霊戦艦エンタープライズC」!歴史改変が生んだ戦慄のパラレルワールドとターシャ・ヤーの帰還

「亡霊戦艦エンタープライズC(Yesterday’s Enterprise)」の概要

1990年に放送された『新スタートレック(TNG)』第3シーズン第15話「亡霊戦艦エンタープライズC(原題:Yesterday’s Enterprise)」は、「両界の狭間で」や「超時空惑星カターン」と並び、ファンの間で常にベストエピソードの上位にランクインする伝説的な作品です。

物語の舞台は、時間の裂け目(時空の歪み)によって歴史が書き換えられてしまった「もう一つの世界(パラレルワールド)」。

そこでは、惑星連邦とクリンゴン帝国との間で20年にも及ぶ泥沼の戦争が続いており、平和の探求者であるはずのエンタープライズ号は、敗色濃厚な戦場を駆ける「軍艦」へと変貌しています。

そして、この改変された世界には、第1シーズンで殉職したはずの保安主任ターシャ・ヤーが生きて存在していました。

なぜ歴史は狂ってしまったのか? そして、正しい歴史を取り戻すためにクルーたちが強いられる「究極の自己犠牲」とは?

本記事では、タイムトラベルものの傑作として名高い本エピソードのあらすじと、その悲劇的かつ英雄的な結末について徹底解説します。

「亡霊戦艦エンタープライズC」の詳細

NCC-1701C

一変した世界:平和な探査船から「戦艦」へ

物語は、いつものようにラウンジでくつろぐガイナンとウォーフのシーンから始まります。しかし、エンタープライズ号が時空の歪みから現れた一隻の古い宇宙船を救助した瞬間、世界は一変します。

ブリッジの照明は薄暗くなり、クルーの制服はより戦闘的なデザインに変わり、艦長の席には「戦時日誌」を記録する疲弊したピカードの姿が。

そして、戦術ステーションには、かつて死んだはずのターシャ・ヤーが立っていました。

現れた宇宙船は、22年前に消息を絶った「U.S.S.エンタープライズC(C型艦)」でした。

彼らはナレンドラ3号星でロミュランの攻撃を受けている最中に、時空の歪みに飲み込まれ、22年後の未来(TNGの現在)へタイムスリップしてしまったのです。

本来の歴史では、エンタープライズC型はナレンドラ3号星を守るために玉砕し、その自己犠牲的な行動に感銘を受けたクリンゴン帝国が連邦との和平条約を結ぶはずでした。

しかし、彼らが未来へ逃げてしまったため、「連邦はクリンゴンを見捨てた」と見なされ、両国の関係は悪化し、破滅的な戦争へと突入してしまったのです。

ガイナンの直感とピカードの苦渋の決断

この異常事態に唯一気づいたのが、種族特有の鋭い感覚を持つガイナンでした。

彼女はピカードに対し、「ここは本来あるべき世界ではない」「あの船を過去に戻さなければならない」と訴えます。

しかし、それはエンタープライズC型のクルー125名に「過去に戻って確実に死ね」と命じることに等しい残酷な提案です。

C型艦のレイチェル・ギャレット艦長とクルーたちは、現代の技術で修理を受ければ生き延びることができますが、それではこの悲惨な戦争は終わりません。

論理的証拠がないままガイナンの「直感」を信じるべきか、ピカードは苦悩しますが、戦況が悪化し連邦の敗北が決定的となる中、彼は「400億人の命を救うため」に、歴史を修正する賭けに出ます。

ターシャ・ヤーの「無意味な死」と「有意義な死」

このエピソードの真の主役は、デニーズ・クロスビー演じるターシャ・ヤーです。

彼女はこの世界では生きていますが、ガイナンから「本来の歴史では、あなたは無意味な死に方をした(第1シーズンでの突然の殉職を指す)」と告げられます。

「ここでは戦争で負けて死ぬか、本来の歴史では無意味に死ぬか」

自身の存在意義を問われたターシャは、C型艦と共に過去へ戻り、正しい歴史を作るために戦って死ぬことを選びます。

彼女はエンタープライズC型への転属を志願し、ギャレット艦長の代わりに戦術士官として過去の激戦地へと旅立ちます。

「私が死ぬとしても、その死には意味を持たせたいのです」

この彼女の決断こそが、第1シーズンでの彼女の退場に納得できなかったファンへの救済であり、ターシャというキャラクターへの最大のリスペクトとなりました。

壮絶なクライマックスと余韻

過去へ戻ろうとするエンタープライズC型を援護するため、ピカード率いるエンタープライズD型は、圧倒的戦力を持つクリンゴン戦艦3隻に特攻を仕掛けます。

「全エネルギーを武器へ! エンタープライズCを守り抜け!」

ブリッジが火花を散らし、主要キャラクターたちが次々と倒れていく中、ライカー副長も戦死し、ピカード自らがフェイザー砲を操作して最後の抵抗を試みます。

C型艦が時空の裂け目に消えた瞬間、歴史は修正され、元の平和なエンタープライズ号のラウンジへと戻ります。

誰もあの激闘を覚えていません。しかし、ガイナンだけは微かな違和感を覚え、何も知らないターシャ・ヤー(この時点ではまだ生まれていないため、席にはいない)の代わりに、ウォーフに頼んで飲み物を注文します。

「Geordie, tell me about Tasha Yar.(ジョーディ、ターシャ・ヤーについて話してくれない?)」

彼女のこの一言で物語は静かに幕を閉じます。

一隻の船の犠牲が平和をもたらしたこと、そしてターシャの魂が救われたことを知る者はガイナンしかいないという、切なくも美しいラストです。

「亡霊戦艦エンタープライズC」の参考動画

まとめ

「亡霊戦艦エンタープライズC」は、SFドラマとしての完成度が極めて高いエピソードです。

「たった一隻の船が歴史を変える」という壮大なテーマ、パラレルワールドのディストピア的な描写、そしてターシャ・ヤーのヒロイズム。

わずか45分の中に映画一本分に匹敵するドラマが凝縮されています。

また、このエピソードで過去に戻ったターシャの一部始終は、後のエピソードに登場するロミュラン人の司令官「セーラ」の出生の秘密へと繋がり、シリーズ全体の伏線としても機能しています。

TNGの持つ「歴史の重み」と「平和の尊さ」を同時に味わえる、必見の傑作です。

関連トピック

ターシャ・ヤー: エンタープライズ号の初代保安主任。第1シーズンで殉職したが、本エピソードで一時的な復活を遂げ、ファンを感涙させた。

エンタープライズC (NCC-1701-C): アンバサダー級の宇宙艦。歴史上あまり語られていなかった「A型、B型とD型の間」を埋める重要な艦。

ナレンドラ3号星の戦い: エンタープライズCがロミュラン艦隊と交戦した歴史的事件。この自己犠牲がクリンゴンとの同盟の礎となった。

ガイナン: エル・オーリアン人。時空の変化を感知できる能力を持ち、本エピソードのキーパーソンとなる。

セーラ: 後のシーズンに登場するロミュラン軍の将校。過去に戻ったターシャ・ヤーとロミュラン人の間に生まれた娘であり、ピカードたちを苦しめる。

関連資料

Blu-ray『新スタートレック シーズン3』: 本エピソードを高画質で収録。暗い照明演出のディテールや、戦闘シーンの迫力が増している。

書籍『スタートレック エンタープライズの歴史』: 歴代エンタープライズ号のスペックや歴史を解説した資料集。C型艦の詳細も記載。

プラモデル『U.S.S.エンタープライズ NCC-1701-C』: アンバサダー級の特徴的なフォルムを再現した模型。

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